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コラム

コラム:「GoTo」の恩恵届かぬ非正規、手厚い対策が景気回復に

[東京 8日 ロイター] - 新型コロナウイルスの「毒素」が、経済的な弱者をどんどんとむしばんでいる。今月2日時点でコロナを原因とする解雇、雇い止めは6万3347人となり、うち非正規雇用者は3万1050人に上る。コロナ禍前の2019年の平均給与は、非正規が175万円と正規の503万円との間に328万円の差がついており、コロナの影響でさらに格差は広がりそうだ。

 新型コロナウイルスの「毒素」が、経済的な弱者をどんどんとむしばんでいる。写真は2018年10月、都内で撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

「Go To」キャンペーンでにぎわいを取り戻した観光地の様子を繰り返しテレビのワイドショーは取り上げるが、経済的苦境に直面し、旅行に行けない人々に、政府は手を差し延べるべきだ。短期的には12月末で切れる雇用調整助成金の特別措置を6カ月間は延長するとともに、低所得者には10万円の給付を複数回実施する新たな定額給付金制度を創設。中長期的には「空き家」を再利用した公的な「低家賃住宅」を大量に供給し、低所得者の生活安定を図るべきだ。

<コロナ前の非正規年収は175万円>

日本の労働市場では、コロナの襲来前から正規雇用者と非正規雇用者の所得格差が拡大傾向にあった。国税庁の「2019年民間給与実態統計調査」によると、正規雇用者の年間平均給与は前年比0.0%減の503万円。これに対し、非正規従業員は同2.5%減の175万円にとどまった。このうち男性は同4.4%減の226万円、女性は同1.2%減の152万円だった。

そこにコロナ禍が加わり、他の先進国同様に、低所得者ほど打撃が大きくなる現象が日本でも生じている。厚生労働省によると、コロナを原因とする解雇、雇い止めの雇用者の数は、今月2日時点で8月末と比べ1万3021人増えた。2日時点の非正規雇用者の解雇、雇い止めの数は3万1050人と全体の49%を占める。

総務省の労働力調査によると、2019年の非正規雇用者の全体に占める割合は38.3%。その数字と比べると、直近で解雇されている割合は、正規よりも非正規で多くなっていることがうかがえる。こうした結果を見れば、2020年の年間所得では、正規と非正規の格差が一段と広がることは確実だと予想される。

<9月末から雇調金の申請急増>

一方、労働市場における潜在的な「雇用調整圧力」は弱まるどころか、かえって強くなる兆候を示し出している。政府がコロナ対策として休業中の助成額を上乗せしている雇用調整助成金は、足元で申請件数が急増する勢いを見せている。

当初、給付額や給付期間を上乗せする「特例措置」は9月30日までだったが、コロナ禍による経済情勢の悪化が継続していることから、政府はその期間を12月31日まで延長した。

ところが、その「旧期限」をまたぐ9月26日から10月2日までの1週間の申請件数は、その前の週の約2.5倍に当たる13万1395件に急増。日本経済の先行き不透明感に危機感を募らせている企業経営者が増えていることを示すデータと言える。

<低所得者に複数回の10万円給付>

だが、政府からは今のところ、明確な対応策が示されていない。加藤勝信官房長官は9月24日、状況を「注視する」と述べ「雇用を守っていく」と強調したが、政府から新たな対応策の検討などについて何も発信がない。

そこで、筆者からいくつかの提案をしたい。まず、短期的には雇用調整助成金の特例措置の期限を来年6月末まで6カ月間延長する。もし、休業者が失業者として労働市場に出てきた場合、現状では受け皿となる新規雇用はなく、失業率は急速に10%へと接近してしまうだろう。

次に日本の失業保険制度を修正し、非正規雇用者も全て同制度の下で一定の給付を受けられるようにするべきだ。米国では、失業保険の上乗せ給付の実施で消費が支えられてきた。ところが、日本では失業保険の対象が正規雇用中心で、約40%まで増加した非正規雇用者を全て包み込む制度になっていないため、効果的な給付ができない仕組みになっている。

このため、全国民に1人当たり10万円を支給した「特別給付金制度」を手直しし、年収が200万円未満の低所得者には、今後2年間程度をめどに複数回の10万円給付を実施するべきだ。

さらに低所得者にとって大きな支出になっている家賃を補助する観点から、全国で846万戸に上っている空き家の一部を国と地方自治体が購入。改修して低家賃住宅として低所得者に貸し出す事業を開始するべきだ。

このような低所得者対策を実行していく一方、菅義偉首相が主唱している「デジタルトランスフォーメーション」(DX)事業に予算を付け、企業の生産性上昇に寄与する政策を展開し、新しい雇用の場を作っていくことに傾注する必要がある。

政府が経済財政諮問会議で示した資料によると、2019年の国民一人当たりの国内総生産(GDP)は4万0847ドルで、デンマークやオランダに比べて1万5000ドルから2万ドル近くも低い水準にとどまっている。低所得者対策とDXを起点にした生産性上昇の対応策の2本柱で、10年後にこの差をなくすというような「目標」を掲げてほしい。

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編集:石田仁志

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