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コラム

コラム:賃金カット起点にデフレ再来が現実味、賃上げ企業に減税を

[東京 4日 ロイター] - 新型コロナウイルスの影響が、日本の雇用・所得環境を着実にむしばんでいる。直近の法人企業統計では従業員が前年同期比で98万人減少し、給与総額は2.8%落ち込んだ。このままでは、所得減を起点に消費が低迷し、企業業績が落ち込み、設備投資が減る負のスパイラルが動き出し、デフレに後戻りしかねない。政府は賃上げ企業への法人税減税など前例のない思い切った賃金支援策を直ちに展開する必要がある。

 新型コロナウイルスの影響が、日本の雇用・所得環境を着実にむしばんでいる。写真は2013年4月、都内で撮影(2020年 ロイター/Toru Hanai)

<給与は2.8%減少>

日経平均が29年ぶりに2万6000円台を回復するなど、コロナ禍でも金融・資本市場はカネ余りの宴を享受しているが、経済の実態に目をやると楽観論は消し飛ぶ。

今月1日に財務省が発表した今年7─9月期の法人企業統計は、金融機関を除く全産業の設備投資額が 前年同期比10.6%減になったことばかりに注目が集まったが、もっと深刻な実態を示すデータも含まれていた。全産業ベースの従業員数は同98万人減。率にしてマイナス2.8%の3416万に減った。従業員給与は同4.6%減の29兆8801億円に落ち込んだ。

法人企業統計は資本金1000万円以上の企業が調査対象で、零細な企業の実態はさらに深刻化している可能性がある。

<賃金カット・人材流出が招く衰退の教訓>

政府は解雇者を抑制するため、雇用調整助成金の特例を定め、休業手当の積み増しなどを図り、強力に支援してきた。それでも従業員数は98万人も減少。工場稼働率の低下やテレワークの普及などで残業代(時間外手当)が大幅に減り、労働者の懐事情を直撃したことを物語っている。

自動車などの製造業では操業度が上がってきたものの、対面を軸にしたサービス産業の業況は悪化したままで、この先も従業員数と給与総額の減少は、かなりの期間にわたって継続する公算が大きい。

給与が減って消費が打撃を受けるのは、これまでの景気後退期でもしばしば見られた現象だ。現在はコロナの影響で宿泊・飲食に対する打撃が大きいが、いずれ消費全般が悪影響を受けるだろう。消費の減退は企業の売上や利益を直撃し、今でも弱い設備投資はさらに冷え込むことが予想される。このままでは、所得減少を起点にしたデフレ再来の懸念も現実化しかねない。

そこで政府が検討している経済対策の中に、 賃上げを実行した企業に対し、法人税減税やその他の税制上のプラス効果を与える「給与支援策」を盛り込んでほしい。内外の経済情勢が厳しい中での賃上げは「非常識」との強い批判を浴びそうだが、厳しい情勢だからこそ、前例踏襲にこだわらない決断が必要だ。

法人企業統計によると、7─9月期の企業の利益剰余金は前年同期比3.1%減ながら、総額は517兆3000億円と高水準であり、賃上げ可能な厚いバッファーがある。そこに政府の支援策を付加すれば、少なくとも実質的な「賃下げ」は回避でき、マクロ経済上のデフレスパイラルの「起動」を回避できる。

また、過去のバブル崩壊時に人員削減を含む労働コスト低減を最優先にした結果、優秀な人材が海外企業に流出し、世界市場での覇権を手放した業界があることを振り返れば、このコロナ危機で再び、賃下げによる人材流出を招く愚策は繰り返すべきでない。

米国の優良IT企業では、単純で画一的な人的コスト削減は回避し、優秀な人材確保に向けて給与などの引き上げ競争が展開され、それはコロナ禍でも継続しているようだ。

日本国内では、トヨタ自動車の労組がベースアップ要求の見送りを8年ぶりに決める可能性があるとの報道が出ていた。この経営環境悪化─賃金抑制という頑なな発想は、放棄するべきだろう。

コロナは世界的に社会構造を変える大きな圧力になっている。「大変化」に対応するには発想の転換が不可欠であり、政府と企業経営者は賃上げで危機を突破する勇気を持ってほしい。

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