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コラム

コラム:日銀の点検、大きな柱はETF購入方法の柔軟化か

[東京 22日 ロイター] - 日銀は17、18日の金融政策決定会合で、より効果的で持続可能な金融緩和を実施するための点検を行うとし、来年3月の会合をめどにその結果を公表すると発表した。具体的な中身に言及はなかったが、メインは上場投資信託(ETF)の購入方法になるだろう。日経平均が2万7000円に迫る中、12兆円を上限にETFを買い進めば、緩和の長期化が予想される中で「持続可能性」に揺らぎが出るためだ。

 日銀は17、18日の金融政策決定会合で、より効果的で持続可能な金融緩和を実施するための点検を行うとし、来年3月の会合をめどにその結果を公表すると発表した。写真は東京都の日銀本店。5月22日撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

政府・与党内にも日銀のETF購入が過剰に膨らめば、市場をゆがめることになると警戒する声もあり、日銀が市場動向を踏まえて購入量を減らすことを容認する声が出ている。

<ETF柔軟化に3つの要因>

黒田東彦総裁は18日の会見で、ETFについて「2%の物価目標の達成に向けて、より効果的で持続可能な買い入れ方式等、点検・分析し、改善すべきところがあれば改善を考える」と述べた。

黒田総裁は、ETFが点検内容の「主戦場」になるとは言及しなかったが、筆者は点検内容の大きな柱になるとみている。その背景には、複数の要因がある。

1つ目は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による米欧日中銀の大胆な金融緩和の結果、日欧はマイナス金利、米国はゼロ金利政策を採用し、同時に資産買い入れを大幅に拡大。世界のマネーは債券市場から株式市場に大量流入し、世界的な株高現象となったことだ。

日銀がETF購入に踏み切った大きな理由は、株式市場の下落が企業と個人のマインドを冷え込ませ、そこを起点に投資や消費が落ち込めば、デフレ再来のリスクが高まると懸念したからだ。

だが、2021年は流動性を背景にした株高を予想する参加者が急増しており、国内大手証券の中には日経平均3万2000円台回復の可能性に言及するところもある。株価発の景気腰折れリスクは大きく後退している。

2つ目は、コロナ感染が加わって金融緩和の期間が一段と長期化しそうになっていることだ。日銀が来年1月に示す展望リポートでは、新たに2023年の見通しが加わるが、23年の物価見通しは2%を下回って出てくるだろう。

今は副作用が少ないと言っても、長期化することによって市場の価格形成を大幅にゆがめることもありうる。一部の民間機関の試算では、11月末時点で日銀のETF残高が

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)を上回ったとみられている。このまま残高が急増し続けると「下げ幅がいつも小さいゆがんだマーケットになる」(国内証券関係者)との懸念もある。

また、米系の投資家などからも、日銀が買うことで日経平均の下方硬直性が顕在化し「安値で買えない」との不満も広がっていた。実際、日銀が購入していない東証マザーズにおける海外勢の今年の買い越し額は増加している。

3つ目は、日米欧で共通する政策金利の活用余地の小ささだ。日銀の場合、マイナス金利の深掘りで地域金融機関が経営悪化に直面すれば、金融システム不安を高めるだけでなく、与党議員の強い反発も招きかねない。とすれば、ETFによる緩和強化は有力なツールであり、12兆円の上限は「緊急時」だけにする柔軟対応で「切り札」を温存させたいという思惑もある。

政府・与党内には、日銀がETF購入量を柔軟化させるのは、足元の世界や日本経済をみれば、ごく順当だと容認する声がある。

<指摘されていた金融緩和の持続力>

実際、日銀内では少し前から、緩和政策に対する効果と持続性について議論が出てきていたようだ。政井貴子審議委員は11月16日の講演で「ETF買い入れの柔軟性向上や市場育成といった点を含め、政策の持続性を担保しつつ、緩和効果を維持する観点からの議論が、今後ますます重要になる」と述べていた。

また、鈴木人司審議委員も12月3日の講演で「資産価格のリスク・プレミアムへの適切な働きかけが真に必要なタイミングでの買い入れが困難になることのないよう、政策の持続力・柔軟性を高める工夫の余地を探っていく必要がある」と指摘していた。

3月会合までかなりの時間があるので、点検による修正の内容は曲折する可能性もあるが、現在は12兆円を上限としつつ、年間6兆円のペースで残高が増加するように買い入れるという構造になっている。市場動向を見つつ、6兆円をかなり下回っても日銀の判断で対応できるような枠組みに変更するのではないかと予想している。

ただ、問題は2021年の市場動向と国内の経済情勢だ。ドル/円がじりじりと円高に傾いており、100円割れの事態になれば、市場が追加緩和を催促する可能性もあり、ETF増額もカードの1つになるのではないか。

また、コロナの影響で日本企業の収益構造は悪化が目立っている。春闘での賃上げに期待できないだけでなく、操業度の引き下げやテレワークの普及などで時間外手当の支給が大幅に減っており、消費者の財布のひもは固くなる可能性がある。その先には物価下落の拡大があるかもしれない。そこでもETF増額は有力なカードの1つになるだろう。

市場と景気動向次第では、日銀の「点検」を飲み込んでしまう展開もゼロではない。

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編集:石田仁志

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