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コラム

コラム:猛暑と物価高の夏、日本経済は乱気流に突入

[東京 30日 ロイター] - 6月中に猛暑が到来して「特需」の発生に湧き立ってもいいはずだが、30日の日経平均は一時、前日比400円安となり日本経済の先行きに懸念が示されている。猛暑が行き過ぎて人出が控えられる懸念が出てきたほか、電力不足で製造業の操業を下押しするリスクも浮上。加えて国内の消費者物価(CPI)は年末に向けて上昇幅を拡大しそうで個人消費の抑制につながる公算大と言える。日本経済は乱気流に突入しそうな様相だ。

 6月30日、6月中に猛暑が到来して「特需」の発生に湧き立ってもいいはずだが、30日の日経平均は一時、前日比400円安となり日本経済の先行きに懸念が示されている。写真は東京・浅草の浅草寺で29日撮影(2022年 ロイター/Issei Kato)

<コンビニで氷菓の販売急増>

6月27日に関東甲信、九州南部、東海で梅雨明け宣言が出て、一気に本格的な夏がやってきた。梅雨寒に慣れた身体が、暑さに遭うと欲しくなるのは冷たい食べ物。セブンイレブンによると、氷菓やアイスクリームの売り上げが梅雨明け後に急増し、梅雨明け前と比べ50%増となった。

また、ウイスキーの「オンザロック」などに使うロックアイスは梅雨入り前の2倍の売れ行き。さらにスポーツドリンクや2リットル容器に入ったソフトドリンク、塩味やレモン味のキャンディーも人気商品に躍り出ているという。

大手家電量販店でも、クーラーや扇風機、サーキュレーターが梅雨明け宣言とほぼ同時に「売れ筋」となり、例年より約1カ月早い「夏休み商戦」が展開されている。

小中学生の夏休み期間中の旅行商品の販売も好調で、日本旅行では対前年比3.5倍の予約が入っている。例年なら雨模様の7月上旬のホテル・旅館の予約状況は把握できていないとしつつ、真夏の到来で客足が戻ってきている可能性があると同社ではみている。

<行き過ぎた高温のマイナス>

このように猛暑は特需を生み出すが、今年は6月中に北関東地方で40度超を記録するなど「行き過ぎ」た高温の気配も濃厚となっている。30日には今年初めて東京都に「熱中症警戒アラート」が発令された。このアラートが出ると、不要不急の外出を控えるよう呼びかけられる。仮にこれから9月中旬までにアラートが全国各地で断続的に発令された場合、夏休みの人出が想定を下回る可能性も出てくる。

そこに電気料金の値上げと、猛暑によるクーラーの稼働時間増大による電気料金支払額の急増問題が発生する。東京電力、中部電力など4社が8月から電気料金を引き上げると発表した。東電の場合、使用量が平均的な家庭で7月に比べて247円上がって9118円となる。クーラーの使用時間の増加が加わって電気料金が跳ね上がる「危険性」も出てくる。請求書を見て驚き、その後の消費行動が「節約型」に転換する家庭が少なからず発生すると予想される。

<物価高に拍車をかける円安進展>

また、物価高が実質購買力を弱めることにもなる。5月の全国CPI(総合)は前年比プラス2.5%だった。足元では円安が進み、この3カ月間で22円を超える円安となり、29日には一時、137円台まで円安が進む場面もあった。円安の進行は輸入物価を押し上げ、特に食料品価格の値上げに直結する。一部のエコノミストはCPI(総合)の前年比が同3%に達するとの予想も出している。

個人消費は、新型コロナウイルスの感染拡大時に抑え込まれた対面型サービスがV字回復して全体を押し上げるという「楽観シナリオ」を支持する声が相応にある。他方、日銀が指摘する約50兆円の強制貯蓄の多くを保有する富裕層の消費拡大だけでは、日本の個人消費全体を押し上げるには力不足との「悲観シナリオ」も存在する。

<富裕層は動くのか>

そこに猛暑によるプラスとマイナスの要因が絡み合い、今後の展開は予測が難しい。だが、日本の富裕層の大きな部分は高齢者が占めているとみられ、その高齢者が高温の行き過ぎによって対外活動を抑制方向にシフトさせれば、7─9月期の消費には「陰り」が見えてくるのではないかと筆者は予想する。

また、北米やハワイに旅行する際には、往復で6万円超の燃油サーチャージがかかる。滞在中のホテルやレストランでのコスト、お土産購入時には円安による負担増を実感するだろう。それらを「ものともしない」富裕層の行動が、どれくらい活発になるのかという点が、この夏の個人消費の行方を左右する。

<電力不足、製造業を制約>

一方で、企業活動にも制約がかかり続ける。強制力を伴う電力の「使用制限令」発動の可能性は低いとみられるが、国内の電力不足が夏場いっぱい深刻な状況になると仮定すると、国から企業に電力使用の抑制が「お願い」され、フル稼働の生産ができない可能性もある。

ドイツ高級車メーカー、メルセデス・ベンツのオラ・ケレニウス最高経営責任者(CEO)は29日、世界的な半導体不足が来年に入っても続くとの見解を表明した。半導体と電力という製造業にとって不可欠の要素がともに不足ということであれば、供給制約がかかり続け、日本の鉱工業生産は今年後半にかけても力強い回復は望めないかもしれない。

消費と生産の見通しが「不透明」な日本経済は、主要7カ国(G7)の中で最も成長率の低い国であり続ける可能性が高まっている。すでに潜在成長率は0.5%を下回っているとの試算もある。乱気流に突入した日本経済が、何かの弾みに墜落しないことを願うばかりである。

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