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訂正-コラム:岸田政権批判「3点セット」、物価高加わり支持率低下に拍車か

(31日に送信したコラムの10段落目で、今年1─8月にコアコアCPIが前年比1.6%上昇という部分の前年比を削除します。)

 岸田文雄首相は31日に会見し、自民党総裁選に出馬を決意した「原点に立ち戻り」、信頼と共感の政治を進めていくと述べた。写真は東京都で2020年5月撮影(2022年 ロイター/Issei Kato)

[東京 31日 ロイター] - 岸田文雄首相は31日に会見し、自民党総裁選に出馬を決意した「原点に立ち戻り」、信頼と共感の政治を進めていくと述べた。これは旧統一教会問題や安倍晋三元首相の国葬など政権批判の「3点セット」に対し、真摯(しんし)に立ち向かう姿勢を示したと解釈できる。

しかし、足元で進んでいる物価高は、国民生活を直撃して消費下振れを誘発しそうだ。物価高が加わって批判の「4点セット」となった場合、急低下している内閣支持率が危険水域の30%前半以下に落ち込むリスクが高まる。今日の会見で言及がなかった「物価高」で目立った対応がない場合、岸田首相の政権基盤が揺らぐ展開も予想される。

<会見で見えなかった具体的な対応策>

足元で政権を動揺させているのは、1)旧統一教会と閣僚や党幹部、その他の自民党議員との関係、2)安倍氏の国葬、3)新型コロナウイルスの感染拡大──の3点だと言われている。岸田首相もその点を十分に意識してか、この3点に対する説明が会見の多くを占めた。

そのうち、旧統一教会問題では「関係を絶つ」ことを自民党の基本方針にすると表明した。ただ、具体的な対応策については言及がなかった。その他の問題についても、すでに言及したり、国内メディアがすでに報道している内容を改めて表明した点がほとんどで、目新しい対応策の披歴はなかった。

「原点に立ち戻る」という危機感の表明はあったものの、具体策を打ち出せずに終わったことで、内閣支持率が反転上昇する機運の醸成には失敗したのではないかと筆者には映った。

<実は加速している物価高>

こうした中で、岸田首相が会見で言及しなかった「ある重要な経済現象」が、内閣支持率を圧迫しかねないと指摘したい。それは足元で顕著になってきた物価上昇だ。

入手できる最も新しい物価統計である8月東京都区部の消費者物価指数(CPI)によると、総合は前年比プラス2.9%、生鮮食品を除いた総合(コア)は同2.6%と上昇ペースが加速している。

コアの前月比はプラス0.4%と5月の同0.1%から大幅に加速し、瞬間的には年率プラス4.8%となっている。生活実感に最も近く、消費や賃金の実質値を算出する際に使用される持ち家の帰属家賃を除く総合は、8月に前年比プラス3.5%まで上がった。

また、物価上昇の構成要素をみると、政府・日銀がこれまで強調してきたエネルギーが1.22%ポイントであるのに対し、食料は1.20%ポイントとエネルギーに匹敵するような上昇ぶりとなっている。

日銀は展望リポートの中で、食料とエネルギーを除くコアコアCPIが2022年度は1.3%の上昇と予測しているが、東京都区部のベースでは今年1─8月にコアコアCPIが1.6%上昇(訂正)している。足元では日銀の想定を超えて物価上昇が進んでいる可能性が高いと言えるのではないか。

<23年度にCPI上昇率は鈍化するのか>

日銀は22年度のコアCPIが前年比プラス2.3%となり、23年度は同1.4%に減速するとの予測を出している。しかし、その通りに展開するかどうかかなり不透明感が強くなっている。筆者は3つの要因が、日本の物価上昇を長期化させるとみている。

1つ目は、ウクライナ戦争の長期化による原油などのエネルギー価格が高水準で推移しそうな展開になっていることだ。WTIは世界景気の後退懸念で一時、1バレル=80ドル台に下落したが、直近は90ドル台に戻している。実際、フランスのマクロン大統領はエネルギー価格高について、ウクライナ戦争が激化しているため、今後数カ月厳しい状況になるとの見方を示している。

2つ目は、日本の物価の上流部分を占める企業物価に騰勢沈静化の兆しが見えないことだ。7月の国内企業物価は前年比プラス8.6%とCPIの上昇率を大幅に上回っている。この押し上げの原動力となっている輸入物価は、円ベースで同48.0%と前月よりも上げ幅を拡大した。

企業が原材料価格の上昇を販売価格に転嫁する場合、商品競争力のある企業は短期間に実行できるが、過当競争の業界ではどうしても他社見合いとなって値上げまでのタイムラグは長くなりやすい。最終商品の値上げは2023年になっても広範囲で継続する可能性が高い。

3つ目は、輸入物価押し上げの要因の1つである円安がさらに進行しそうだという点だ。昨年6月の輸入物価における円ベースと契約通貨ベースとの上昇率の差は2.6%ポイントだった。ところが、今年7月には22.6%ポイントに広がった。この差が円安による価格押し上げ効果と言える。

ドル/円は足元で米連邦準備理事会(FRB)のタカ派姿勢が継続するとみて一時、139円台に乗せている。9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向けて140円を突破するとの声が大きくなっており、一部の欧州勢は145円のドルコールオプションを大量に購入しているという。

ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は30日、高インフレに対処するため、米連邦準備理事会(FRB)は政策金利を3.5%を幾分上回る水準に引き上げる必要がある公算が大きく、2023年に利下げが実施される可能性は低いという認識を示した。

こうしたFRB幹部の発言を見ていると、円安基調はしばらく継続する可能性があり、この点からも日本の物価は簡単に上昇幅を圧縮せずに当面は上昇を継続するだろうと予想している。

<コアCPIが3%なら、内閣支持率はさらに下落も>

日本国内のエコノミストの中では、2022年中にコアCPIが前年比3%に到達すると予想する声が次第に多くなっている。その際に帰属家賃を除く総合は3%後半ないし4%になっている可能性すらあるのではないか。

手取り額が物価上昇に追いつかない年金受給者からの不満が、岸田政権に集中することになるのは容易に想像できる。また、年収が400万円以下の階層では食料品を中心にした物価高で生活がより圧迫される事態になることも避けられないだろう。

こうした情勢変化に対し、岸田政権は今年10月からの小麦の政府売り渡し価格を4月分と同額にすると決めたが、それだけでは大きな「痛み止め」とはならない。このままでは「物価は上がり支持率は下がる」という構図に転落しそうだ。

岸田首相が「原点に立ち戻って」、何をするのか──。年末の予算編成までに起死回生策を打ち出せないと、政権運営はいよいよ厳しさを増すことになりかねない。

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