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コラム

コラム:日本にもCPIショック、電気代値上げで来年も上昇持続か

[東京 1日 ロイター] - 今月23日に発表される11月全国消費者物価指数(CPI)は、日本版のCPIショックを引き起こす公算が大きくなっている。総合が4%上昇となる可能性があるだけなく、消費や賃金の実質値を弾き出す「持ち家の帰属家賃を除く総合」(帰属家賃除く総合)が5%に接近しそうだからだ。さらに来年4月からは電気料金の大幅値上げが控え、政府の電気代支援額を飲み込んでCPIを一段と押し上げかねない情勢だ。

 今月23日に発表される11月全国消費者物価指数(CPI)は、日本版のCPIショックを引き起こす公算が大きくなっている。写真は2020年12月、都内で撮影(2022年 ロイター/Issei Kato)

総合経済対策をまとめ2022年度第2次補正予算案の参院審議に臨んでいる政府・与党にとって、この電気料金値上げ問題は想定外の物価上昇と消費下押しを招きかねない「爆弾」となりそうだ。日銀にとっても2023年度の物価上昇率鈍化シナリオが、とん挫するかもしれない事態となりつつある。

<11月全国CPI、総合が4%の可能性>

11月全国CPIに先行して11月25日に公表された東京の11月の数字は、マーケットが反応しなかったものの、この先のCPIショックを予見させる内容だった。総合が3.8%、コア(除く生鮮食品)が3.6%の上昇となった。さらに消費者が実感する物価上昇に近いと言われる帰属家賃除く総合は、前月の4.3%から4.7%に跳ね上がっていた。

東京都CPIのデータに占めるサービスの割合は全体の56%と全国よりも高く、財の割合が多い全国CPIの総合は4%に乗せる可能性がかなりありそうだ。帰属家賃除く総合は5%に接近しているだろう。

一部の民間エコノミストは、12月全国CPIの総合が4%上昇となる可能性を予想しているが、足元における食料品値上げの勢いをみても、11月の段階で4%に乗せていても驚かない状況だ。

日銀が物価目標にしている2%の2倍の高さの上昇になることを今年初めの段階で、政府・日銀が予見していたかといえば、たぶん「ノー」だろう。企業の値上げラッシュが想定を超えていたことが大きな要因だと筆者は考える。

<4月からの電気料金値上げ、政府・日銀の思惑粉砕か>

4%上昇が現実になった場合、政府と日銀はどのような反応を示すだろうか。政府は総合経済対策の中に盛り込んだ電気代の支援策などの結果、物価を1.2%押し下げるのでCPI上昇率は年明けから下がると説明するだろう。

日銀も輸入物価押し上げの主因だったエネルギーや原材料価格の上昇が次第に減衰するので、23年度の物価上昇率は予想通りに1.6%程度に低下すると説明するに違いない。

ところが、電力各社による来年4月からの値上げ申請における上昇幅が、政府の想定をはるかに上回っていて、状況を急変させている。

政府が総合経済対策に盛り込んだ電気料金支援は、20%分を政府が負担するという内容だった。しかし、11月30日に申請した北陸電力の来年4月からの値上げ幅が45%、その前に申請した沖縄電力が39%、東北電力が32%、四国電力が28%と政府の支援策を上回る値上げを求めている。

東京電力はまだ申請していないが、持ち株会社の東京電力ホールディングスは22年9月中間決算で1433億円の最終損失となった。決算会見で値上げ検討の意思を示している。

政府支援の20%を大幅に超える値上げが来年4月以降に実施されると、物価や日本経済に与える影響はどうなるのか。

まず、1.2%の物価押し下げ効果は来年4月以降、値上げに飲み込まれてなくなり、物価押し上げの効果が継続することになるだろう。

特に問題なのは、電気料金の引き上げが、個人の光熱費を押し上げるだけでなく、企業のコストも広範に上昇させる効果があることだ。

日銀が想定していた原材料価格の上昇力の低下による物価上昇率の鈍化は、電気料金の引き上げによるコスト増の波の中に消え、最終製品の値上げが波状的に起きる展開が予想される。

さらに来年4月以降、JR各社や私鉄などの運賃値上げも予定され、これまで物価の優等生だった(デフレ的心理を残してきた)サービス価格にも上昇の動きが波及することがこれまでとの違いだ。

総合とコアのCPIが3%台で高止まりすれば、春闘における大手企業の賃上げ率が3%台に乗せても、中小を含めた全体の賃上げ率が2%台にとどまることが予想され、実質賃金のマイナス化による個人消費への下押し圧力の顕在化に直面することになる。

<怖い統一地方選とインフレへの反応>

政府・与党にとっては、4月の統一地方選でインフレのマイナス面を野党から攻撃され、防戦一方の展開になるという「悪いシナリオ」の実現性が高まることになると予想できる。

日銀にとっても、3%台のCPI上昇が23年半ばになっても継続していれば、市場が先々の政策修正を先読みして10年超の金利が上昇幅を拡大させ、イールドカーブが大きくゆがむというリスクシナリオも浮上するだろう。

このように電気料金の大幅引き上げは、政府・日銀にとって「不都合な未来」を招きやすい「爆弾」だ。その威力を軽減するため、政府が値上げ幅を大幅に圧縮するという「伝家の宝刀」を抜くという選択肢もある。

ただ、電力各社は一部を除いて22年9月中間期に大幅な赤字決算となっており、無理強いもできない環境になっている。

世界的に見て周回遅れの日本のインフレ本格化は、来年のマクロ政策運営にとって大きな制約要因として意識されそうだ。

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