for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up
コラム

コラム:止まらぬ日本の物価上昇、日銀次期体制に重い宿題

[東京 20日 ロイター] - 昨年から上がり続ける日本の物価は、20日発表の2022年12月の全国消費者物価指数が前年比4.0%上昇(生鮮食品を除くコアCPI)と41年ぶりの高い伸びとなった。今後も日銀想定より上振れして高止まりすれば、黒田東彦総裁を引き継ぐ次期体制はイールドカーブ・コントロール(YCC)の枠組み撤廃だけでなく、緩和政策をいつまで継続するのかという問題に直面しかねない。今年は物価上昇が金融政策を左右する大きな要素として浮上しそうだ。

 今後も日銀想定より上振れして高止まりすれば、黒田東彦総裁を引き継ぐ次期体制はイールドカーブ・コントロール(YCC)の枠組み撤廃だけでなく、緩和政策をいつまで継続するのかという問題に直面しかねない。今年は物価上昇が金融政策を左右する大きな要素として浮上しそうだ。写真は円紙幣。2013年2月撮影(2023年 ロイター/Shohei Miyano)

19─20日に金融政策決定会合で、日銀が政策維持を決めた大きな理由は、物価目標の2%達成を安定的・持続的に見通せないということが大きなポイントだった。23年度のコアCPI上昇率は1.6%で据え置かれ、24年度は1.8%と2%を下回った。

もし、この大前提に大きな変化があると「金融緩和で日本経済を下支えする」という構図にひびが入ることになる。

<CPIに高止まりリスク、4つの要因>

筆者は、日銀の1.6%という想定は結果的に上振れする可能性が高いとみている。理由は、以下の4つ。1つ目は、国内企業物価指数がCPIよりも相当に高く、企業の中に「値上げのマグマ」が蓄積されていることだ。昨年12月の国内企業物価指数は前年比10.2%とコアCPIの4%とは6%ポイントの開きがある。

物価上昇ペースが鈍化してきた米国では、12月の生産者物価指数が前年比6.2%上昇、CPI(総合)が同6.5%上昇とほぼ同じ水準に収れんしてきている。日本の場合、川上である国内企業物価指数の水位が大幅に高く、CPIへの波及が進むのは相当先になりそうだ。

2つ目の理由は、企業の値上げに対する抵抗感の大幅な低下だ。帝国データバンクによると、2023年1─4月に値上げ予定の食料品は7390品目と前年同期比58%増となっている。同業他社の値上げに追随するケースも多く、今年4月から一部地域で予定されている電気料金の大幅引き上げを受けて、年後半に一段の価格見直しが実施される可能性もある。複数の国内メディアは、東京電力ホールディングスが近く家庭向け規制料金を3割程度引き上げ申請する方針を固めたと伝えている。

3つ目の理由は、大企業を中心に今年の春闘で大幅な賃上げが予定されていることだ。政府や経団連が企業にベースアップの実施を求めているが、企業の本音は人手不足を背景にした優秀な人材の奪い合いで負けたくないというところにありそうだ。

日銀の黒田東彦総裁は20日の会見で、賃上げペースが高まりそうな背景として、人手不足の実態を指摘していた。人件費のアップは、製品価格の引き上げにつながりやすく、デフレ下では経験してこなかった賃上げと値上げの連動が起きそうな情勢であると指摘したい。

4つ目は、国際通貨基金(IMF)や世界銀行などの世界景気減速予想が外れる可能性が出てきた点だ。その大きな要因として中国のゼロコロナ政策の大転換がある。中国は新たに集団免疫の獲得を目指し「フルコロナ政策」とも呼べる規制緩和策を実施し、落ち込んでいる経済がV字回復する可能性が出てきた。

すでに銅先物などは中国需要の急増を見越して反転しており、23年のどこかで原油や国際商品市況の急上昇が確認され、日本にとっても足元で急減している対中輸出が急回復する可能性がある。また、中国からの観光客による「爆買い」の復活で、国内における様々な需給が急速に引き締まるシナリオも現実味を帯びてくるとみている。

<緩和政策修正の要件は何か>

このような物価押し上げ効果が相次いで顕在化してくると、政府による電気代などの支援策でCPIが最大で1.2%ポイント押し下げられても、2%台ないし3%台で推移する展開があり得ると予想する。

この情勢の下では、YCCを維持した上での長期金利の上限引き上げや、マイナス金利の撤廃(短期誘導目標のゼロ%への引き上げ)などに対する市場の期待感が強まるのは間違いないだろう。

問題は、2%を上回るCPIの推移が長期化しそうな兆候が出てきた場合、緩和的な金融政策を修正することになるのかどうか、という点だ。

日銀は黒田総裁がいわゆる「出口戦略」の検討に対し、繰り返し「時期尚早」と説明して2%の目標達成まで緩和政策を継続するとの方針を強調してきた。したがって2%を上回る物価の長期化の可能性に関しては、「安定的・持続的」というのはどの程度の期間なのかということも含め、市場に対して具体的な情報発信をしてきていない。

民間エコノミストも含めて、2%を上回る物価上昇が継続すると予想している向きは少数派で、どのような物価情勢になると緩和政策を修正ていくことになるのか、というシナリオ提示もほとんど見られていない。

だが、今月26日発表の1月東京都区部CPIは、コアの市場予想中央値が前年比4.2%上昇で、物価上昇圧力が一段と高まっていることをうかがわせている。

ちょうど1年前の22年1月27日、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は「物価上昇は一時的」とのスタンスを微妙に修正しようと「FOMC(連邦公開市場委員会)は利上げは間近との見方で一致」と発言していた。しかし、その段階でFRBがその後、大幅な連続利上げに踏み切ると予想していた市場参加者はほとんどいなかったのではないか。

「周回遅れ」の日本の物価上昇の勢いを過小評価すると、後にやけどするのではないかと指摘しておきたい。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up