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コラム

コラム:今年の米中経済は想定を上振れか、日銀新体制に追い風

[東京 3日 ロイター] - パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言を見ていると、3月か5月に利上げを停止する可能性が高まっているようにみえる。マーケットはすでにFRBによる今年2回の利下げを織り込んでいるが、年内に動く可能性は低いと筆者は予想する。ゼロコロナ政策を撤廃した中国のペントアップ効果が大きく、世界経済や米経済の後退リスクが低下しているからだ。

 2月3日、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言を見ていると、3月か5月に利上げを停止する可能性が高まっているようにみえる。マーケットはすでにFRBによる今年2回の利下げを織り込んでいるが、年内に動く可能性は低いと筆者は予想する。写真は東京都内の日銀本店前。1月17日撮影(2023年 ロイター/Issei Kato)

4月に退任する黒田東彦総裁を引き継ぐ新総裁下の日銀にとって、政策の熟慮により長い時間をかけることが可能になり、選択の幅も広がることを意味する。今の情勢がこのまま続けば、日銀新体制にとっては追い風となりそうだ。

<ディスインフレに複数回言及したパウエル議長>

1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後のパウエル議長会見で注目されたのは、インフレ率低下を意味する「ディスインフレ」という単語を何回も使ったことだ。「ディスインフレのプロセスが始まったと初めて言うことができる」と述べただけでなく「インフレがわれわれの予想以上に速いペースで鈍化すれば、政策決定に反映される」とも指摘した。

確かに「われわれはさらに数回の利上げ巡り討議」と述べているが、3月のFOMCまでに出る指標で物価上昇率の鈍化が確認できれば、3月会合で示される経済見通しを下方修正した上で、3月での利上げ打ち止めを打ち出す可能性がありそうだ。

<IMF、世界と米の成長率見通し引き上げ>

フェデラルファンド(FF)レート先物をみると、マーケットは年内に2回の利下げがあることを織り込んでいる。米長期金利も3.3%台に低下しており、米景気後退が現実になると見込んでいる。

だが、筆者は別の見方をしている。まず、国際通貨基金(IMF)が1月30日に公表した世界経済見通しのデータを見てみたい。2023年の世界経済の成長率見通しを昨年10月時点の見通しの2.7%から2.9%に引き上げ、米国についても1.0%から1.4%に上方修正した。また、中国は4.4%から5.2%へと大幅に引き上げた。ゼロコロナ政策の撤廃が大きな経済押し上げ要因になるとIMFはみている。

特に昨年12月に中国がゼロコロナ政策を撤廃し、経済活動の規制を取り払ったことの効果は、中国経済だけでなく米欧日の先進各国を含めた世界経済を持ち上げる力がありそうだ。

日本をはじめ米欧の専門家の中には、死者数の急増で経済のプラス効果は大きくならないとの見方が少なくないが、集団免疫の獲得を目指す「フルコロナ政策」とも言うべき中国の政策転換は、3年間抑え込まれてきた個人消費のペントアップ効果を引き金にして、広範かつ大規模なプラス効果をもたらすと予想する。今年後半には、中国需要の増加で資源価格の上昇が目立ち始め、その効果がだれの目にも明らかになっているだろう。

<米利下げは24年か、日銀の政策選択に幅>

そうなると、米利下げの時期は24年に持ち越される可能性が高まる。23年中の米政策金利が横ばい推移となれば「米景気後退が鮮明な時に日銀が超緩和政策を修正するのは困難」という見方とは、別のシナリオの実現可能性が高まるのではないか。

日銀にとって最も避けたい展開は、超緩和政策の修正に伴って急速な円高となったり、米景気後退時の引き締め方向の政策変更に対して「嵐なのに窓を開ける行為」との批判を受けることだろう。

もし、23年中に米利下げがないのであれば、米経済の後退の程度も小さく、日銀が何らかの政策修正に動いても、実体経済に対するマイナス効果が増幅される事態は避けられるだろう。

何より、政策対応の効果と副作用を比較衡量する時間をより長く取ることができるというメリットが生じる。

現時点で予見できないようなショックが年内に発生しないのであれば、日銀の政策対応の許容度を上げることになるだろう。そのケースは「追い風」を受けて日銀新体制がスタートすることを意味する。

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