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コラム

コラム:欧米金融不安、危機につながる4つの現象 首相の解散判断に影響も

[東京 29日 ロイター] - 米欧金融不安が世界的な金融危機に発展するのかどうか、新年度入りを前に不透明感が払しょくできていない。米連邦準備理事会(FRB)が5月に一段の利上げに踏み切る可能性があり、債券価格の下落が見込まれるだけでなく、主要国の金融セクターにどの程度の不良債権があるのかはっきりしないためだ。

 米欧金融不安が世界的な金融危機に発展するのかどうか、新年度入りを前に不透明感が払しょくできていない。写真は岸田首相。都内の首相官邸で16日代表撮影(2023年 ロイター)

もし、新たな金融不安がどこかで勃発した場合、連鎖するリスクが高まっており、最悪の場合は日本が議長国を務める主要7カ国首脳会議(広島サミット)でのメーンテーマが「金融危機回避」になる可能性すら否定できない。サミット後の衆院解散を狙っているとの観測が浮上している岸田文雄首相にとって、金融危機への発展が現実になれば、政治的に大きな逆風となりそうだ。

<米中小金融機関、1190億ドルの預金流出>

今回の米欧金融不安には、いくつかの特徴的な現象が発生している。

1つ目は、米中小金融機関から大規模な資金シフトが発生したことだ。FRBが24日に公表した週次統計によると、シリコンバレー銀行(SVB)の破綻後を含む9─15日の1週間に米国の中小銀行から過去最大となる1190億ドルの預金が流出した。

22日のCOLUMNで指摘したように、SNSを経由した情報拡散の速さとネットバンキングによる瞬時の預金引き出しは「デジタル・バンクラン」と呼ぶべき現象を生み出し、いったん引き出しが激化すると、それを止めることは政府・中銀にとって至難の業となる。

<不明なままのクレディ・スイスの損失額>

2つ目は、UBSが30億スイスフラン(約32億3000万ドル)で買収することになったクレディ・スイスの問題だ。CSの損失がどの金融取引によって発生したのか、損失の総額、債務超過だったのかどうかなどに「ふたをした」ままで、他の欧州大手銀への懸念を逆に呼び起こしたことが挙げられる。

20カ国・地域(G20)の金融当局でつくる金融安定理事会(FSB)が28日、米・スイスなどの当局が最近実施した経営不振の銀行に対する救済措置から得た教訓を検証すると発表。声明の中で「引き続き警戒を怠らず、世界の金融システムの耐性を維持する政策措置を講じる用意がある」などと表明したのも、CS問題が他に波及するリスクが高いことを世界の当局が強く意識した結果だと指摘したい。

<米欧の急激な利上げ、大手銀も含み損発生>

3つ目は、長期間に及んだ世界的な超低金利政策の後の急激な利上げによって、中小金融機関から米欧日の大手銀行に至るまで、マネーを安全な「場所」にシフトさせることが難しかったという構造的な問題があるということだ。

世界的なパンデミックの発生を挟んで長期化した世界的超緩和策の結果、グローバルに「債券バブル」が発生し、低格付け商品にもマネーが流入して少しでも高い利回りを享受しようという行動が常態化していた。

そこに急激な利上げが実施されると、無傷でいられる金融機関は事実上、皆無ということになったのではないか。FRBは合計で475bpの利上げを実施しており、米国債から低格付けの社債にいたるまで保有債券の含み損は急激に膨張していたはずだ。

米金融システムの周辺部に位置するSVBが、最初に含み損を実現損にすることを強いられ、過小資本となったことが知られて経営破綻に陥ったが、債券バブルが崩壊し、含み損が膨張している構図は、大手銀といえども大同小異のはずだ。

<貸し渋りから不良債権急増、危機へのトリガーに>

4つ目は、3つ目の項目で指摘した現象が、金融機関の貸し渋りにつながり、融資先の信用格付けが悪化し、金融機関の不良債権が急増するステップに入るリスクが増大することだ。

FRBのジェファーソン理事は27日、中小銀行から大手銀への預金流出は、地域金融機関や地銀への依存度が高い中小企業にとりわけ大きな影響を与える可能性があるとの見方を表明。4つ目の段階に入るリスクを公式に認めたかたちだ。

このフェーズに入ると、2つの現象が新たに発生すると予想される。1つは、実体経済の悪化であり、もう1つはローン担保証券(CLO)の劣化に飛び火するという事態だ。

日本にとっては、対米輸出の減少とCLOを保有する邦銀の財務悪化を招くという大きな懸念材料となって跳ね返ってくる。

4つ目の段階に入りそうだと分かった段階で、「リーマンショック」の再来ではないかとの観測が、グローバルマーケットを駆け巡ることになると予想される。

<急速な円高なら、危機の予兆>

東京市場では、米市場におけるCLOの劣化の兆しや、欧州におけるCSの次に「危ない銀行」探しの実態について、どうしても情報の伝ぱが遅れがちになるというのが、リーマンショックやその他の金融不安で経験してきたことだ。

筆者は今回、米欧での危機の進展を迅速にキャッチする方法があると考える。ドル/円の動向だ。足元では130─131円台での推移だが、原因がはっきりしないまま120円台半ばから120円割れを試す展開になった局面では、米欧金融不安が危機へと歩を進めそうな「何か」が一部の参加者に探知されたとみた方がよいと考える。

<広島サミットと金融不安の行方>

今のところ、その気配は感じられないが、もし、金融危機へとつながる新たな局面が4月以降のどこかで到来した場合、5月の広島サミットはウクライナ問題だけでなく、世界的金融不安が主要テーマになる可能性も浮上しそうだ。

このケースは、大幅な賃上げをバックに景気回復を図ろうとしている日本経済にとって大きな打撃となるが、政治的にも岸田首相の目算が外れることになると指摘したい。

岸田首相は28日、与党内で浮上する早期衆院解散論に関し「統一地方選と衆参補欠選挙、それと合わせて先送りできない課題に取り組む。今はそれしか考えていない」と述べた。ただ、国内報道各社は、与党内に広島サミット終了後の6月に衆院を解散し、総選挙を実施するシナリオの実現性が足元で高まっていると伝えている。

サミットでの実績をバックに衆院を解散すれば、選挙準備の遅れている野党の対応も手伝って与党が勝利できるとの思惑が早期解散論の裏にありそうだ。

だが、米欧金融不安がこれまで指摘したような要因によって顕在化し、金融危機に発展しそうになれば「政局よりも危機対応優先」の声が国民から巻き起こり、解散権が当面、封印される展開になるのではないか。

岸田首相の行く手を遮る存在があるとすれが、それは世界的な金融危機のリスクであると指摘したい。

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