July 31, 2020 / 6:53 AM / 14 days ago

コラム:感染防止と経済両立に危機、無制限PCR検査が「切り札」

[東京 31日 ロイター] - 新型コロナウイルスの新規感染者が30日に全国で1300人を超え、過去最多を更新した。政府はコロナ感染の拡大防止と経済再開の両立を掲げているが、国民のコロナへの警戒感は高まりを見せており、このままでは消費の「天王山」である7、8月の夏場に感染拡大と経済失速という「共倒れ」になりかねない。

 7月31日、日本政府はコロナ感染の拡大防止と経済再開の両立を掲げているが、国民のコロナへの警戒感は高まりを見せており、このままでは消費の「天王山」である7、8月の夏場に感染拡大と経済失速という「共倒れ」になりかねない。写真は東京都内で行われたドライブスルー方式のPCR検査のシミュレーション。4月22日撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

そこで全国民を対象にしたPCR検査を提案したい。その検査データをキャッシュカードのようなものに入力し、いつでもどこでもチェック可能なシステムを構築すれば、陰性の人々が何の制限も受けずに自由に行動できるようになる。この「安心感」の醸成こそが、経済再活性化への「近道」である。

<急増する感染>

東京都の小池百合子知事は、都内での感染者拡大に歯止めがかからないことを受け、8月3日から31日まで酒類を提供する飲食店などに対し、営業時間を午後10時までに短縮するよう要請した。協力する店舗には20万円を支払う。

居酒屋などの飲食店は、売り上げの落ち込みに警戒感を隠さない。20万円では数日分の売り上げにも満たず、経営が圧迫されるとの声が早くも飲食業界から浮上している。

その一方、東京都医師会の尾崎治夫会長が30日の会見で「コロナに夏休みはない」と述べ、政府と国会が早急に強制力のある対応ができるよう法改正すべきだとの見解を示した。医師会側には、このままでは感染者が全国的に拡大し、数カ月もしないうちに病床不足による対応不能状態が来るとの危機感があるようだ。

他方、政府は4月に緊急事態宣言を出した時とは状況が違うとし、「Go To キャンペーン」の取りやめや東京都だけでなく除外地域をさらに加えることも考えていないとの立場を繰り返し表明している。言い換えると、現状のまま「国民の任意の対応に委ねる」との立場だ。

<Go To でも増えない観光需要>

だが、政府が重視している感染防止と経済再開の両立は、このままでは実現が相当に危ぶまれる状況になってきた。

22日から「Go To キャンペーン」を開始したものの、共同通信などによると、JR東日本(9020.T)の4連休中の土曜、日曜だった25日と26日の新幹線と在来線特急の利用者は、前年同期比70%減と落ち込んだままだった。その前の土曜、日曜だった18、19日は同76%減で、そこからの大きな伸びもなかった。

また、JAL(9201.T)は30日、需要低迷が想定を超えたとして8月1日から17日までの間に921便を追加で減便すると発表した。これまでに公表している分を合わせると減便は2511便と全体の17%に上る。

旅行代理店などからも「Go To キャンペーン」の効果は出ていないとの声が広がっており、経済再開との両立の目玉である「旅行シフト」は、空回りを続けている。

クレジットカードなどのビッグデータなどで消費全般の動向を見ても、4月後半を底に6月後半まで回復基調をたどっているが、1月後半の水準から10%前後下回った水準にとどまっている。

<夏場の消費に暗い影>

7月末にかけて感染者の増加テンポが加速し始め、31日の東京都の新規感染者は初めて1日当たり400人を超えそうである。消費者心理が夏場の盛りに抑え込まれると、国内総生産(GDP)の6割強を占める個人消費が低調になる。

大きな減少を予想されている4─6月期に続き、7─9月期も低迷を余儀なくされる可能性が出てくる。31日の日経平均.N225が大きく下げているのも、マーケットがコロナ再拡大の影響をようやく織り込みだしたとも言える。

このまま感染拡大を政府が放置すれば、感染拡大防止と経済再開は両立ではなく、「共倒れ」の公算が大きくなってしまう。

<中途半端な政府の対応>

コロナ対応に関しては、スウェーデンのように都市封鎖せず集団免疫を獲得することを目指す手法と、各種の接触規制をしつつ大量のPCR検査や陽性者の補足で感染者をコントロールする米ニューヨーク州の対応が両極にある。日本は世界的にみてPCR検査の実施数が少なく、それでも濃厚接触者の追跡を主体に6月初めまでは感染者を抑制できていた。

だが、こに来て共倒れのリスクが急増してきたからこそ、大量のPCR検査を実施する方向にカジを切るべきだ。政府も「積極果敢に」検査すると言っているが、1日に7万件も実施しているニューヨーク州に対し、日本では7月下旬に全国累計で2万件になった後、足元では減少している。

政府や経済界の中には、海外渡航が必要なビジネスマンに対し、陰性証明書を出すべきであるとの意見が多く、政府もそうしたニーズを優先的に満たす方向で検討しているもようだ。

しかし、その手法では国内経済は疲弊したまま、放置されることになる。最も重要なのは国民の安心感であり、安心感さえ行き渡れば、政府や経済界が期待する来年に向けた経済の急速な回復も可能になる。

ところが、現状は正反対である。多くの人は「平熱」であることを頼りに「陰性」と信じているものの、無症状感染者の増加を報道するニュースも増え、いつ、どこで感染するか分からないとの「不安感」が広がり、経済活動が今年1月の水準に戻る気配は全く見えない。

<全国民対象、いつでも何回でもPCR検査>

そこで提案したいのは、全国民を対象にしたPCR検査の実施だ。東京都世田谷区では「いつでも、だれでも、何回でも」をキャッチフレーズにPCR検査の回数を増やす「世田谷モデル」をスタートさせた。ただ、ここでも「発熱など症状のある人」に対象を絞っている。予算上の制約があるためと思われる。

一方、政府には10兆円の予備費という潤沢な備えがある。安倍晋三首相が決断し、どこでも、だれでも、何回でも「無料」でPCR検査が実施できるよう検査体制を充実させ、費用は10兆円の予備費から臨時交付金として地方に回し、地方の裁量で誰でも「陰性」を証明できるようなシステムを構築すべきだ。

その際、新型コロナウイルスの次に来る新たな感染症への備えも意識して、PCR検査の結果をカードに入力できるようにし、カードリーダーのある場所では、いつでもデータを取り出せる仕組みを構築すれば、新たな感染症の発症時にも役立てることができる。

陰性者はカードを提示するだけで証明でき、どんな大きなイベントも安心して開催できるようになる。

安心感の提示こそが、経済再開への最も早い近道である。

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編集:内田慎一

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