December 20, 2018 / 9:44 AM / 3 months ago

コラム:2019年のドル円は最悪シナリオ回避できるか=鈴木健吾氏

[東京 20日 ロイター] - 12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)は、政策金利の誘導目標を0.25%引き上げ、ドットチャートにおける2019年の利上げ予想回数を3回から2回へ下方修正するという、ほぼ想定通りの結果に終わった。

 12月20日、2018年の為替相場はリスクに囲まれた年だったが、来年のドル円は最悪なシナリオは回避できるのか。写真はドルと円の紙幣。シンガポールで昨年6月撮影(2018年 ロイター/Thomas White/Illustration)

ただ、市場の期待がかなりハト派寄りに傾いていたせいか、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長による直近の発言などを受けて、「結果が思ったほどハト派的ではない」として直後の金融市場は米株下落、ドル買いという反応となった。

ドル円は若干反発したものの、FOMC参加者による19年の成長予想が引き下げられるなど米景気減速に対する懸念は強く、S&P500指数も年初来安値を更新して引けるなど予断を許さない状況が続いている。

<リスクに囲まれた年>

振り返れば、18年はリスクに囲まれた年だった。

為替市場でもその傾向は顕著だ。18年のこれまでの通貨騰落率をみると、円が全面高となっている。円とほぼ同じ程度に買われているのがドル、その次に買われているのがスイスフランとなり、売られた通貨には新興国通貨が並ぶ。

買われた上位3通貨、円、ドル、スイスフランといえば為替市場における「安全通貨」の代表格だ。つまり、今年の為替市場は「安全通貨買い・新興国通貨売り」という質への逃避的な構図が浮かび上がり、年を通じた市場のテーマは「リスク」であったことが確認できる。

そのリスクも1つや2つではなかった。少し考えるだけでも「摩擦」「政治」「新興国」「減速」など多くのキーワードが浮かび、それらはまた互いに関連し合っている。

米国が引き起こした通商摩擦は、貿易戦争懸念や米中対立を引き起こし、18年のもっとも大きなリスクの1つとなった。

政治面では特に欧州が注目を集めた。英国では欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を巡る混乱がなお続いており、19年3月29日とされる離脱日が迫る中、緊張が高まっている。

加えて、ドイツでは地方選挙での与党大敗を受けたメルケル首相が現任期限りとする退任表明、フランスではマクロン大統領の財政緊縮策や構造改革に対する反感が「黄色いベスト」と呼ばれる過激デモという形で表面化するなど、欧州の政治リスクもまた金融市場で材料視された。ここにきて、19年の予算を巡るイタリアとEUの対立が解消に向かったのがせめてもの救いだ。

また、米国の中間選挙が注目を集めたほか、ロシア、ブラジル、トルコ、メキシコなどをはじめ、新興国で大統領選挙が多い年だった。

新興国で思い浮かぶのは8月のトルコリラショックだ。一時は他の新興国通貨へ伝播の様相をみせ、新興国通貨危機への警戒感が強まったが、その後は落ち着きを取り戻している。

また、これらリスクが絡み合い、米中経済をはじめ世界経済の減速懸念が強まっていることも相場の雰囲気を悪化させた。FRBの利上げにより一時約7年半ぶりの高水準となる3.25%台を記録した米長期金利は株価急落の要因となり、世界の景気減速懸念は原油価格の急落をもたらした。

<ドルの反応に変化>

このようなリスクが為替市場において円の全面高をもたらしたわけだが、18年はリスクに対するドルの反応に変化がみられたことが特徴的だった。

年序盤、3月にかけては、トランプ米大統領が対中強硬姿勢を強めただけでなく、洗濯機や太陽光パネル、鉄鋼・アルミニウムへの関税を引き上げるなど貿易戦争への懸念が台頭し、加えて米金利の上昇を嫌気して米株が急落するなど、リスク回避ムードが一気に強まった。

この間、為替市場におけるリスク回避通貨は円であり、ドルはその震源地の通貨ということもあり、どちらかといえば売られていた。結果、ドル円は1月の1ドル=113円台から3月の104円台へ急激なドル安円高となった。

しかし、その後も減税措置の影響などから米経済の「1人勝ち」状態が続いたことに加え、米国が仕掛けた貿易摩擦もトランプ政権のアメリカ・ファースト(米国第一主義)によるものだけに、結局は米国有利に事が運ぶのではないかとの観測が強まると、徐々にドルは逃避先の安全通貨として台頭し始めた。

足元でもさまざまなリスクが懸念される状況だが、為替市場ではリスクオフがドル買い・円買いとなることで、ドル円は明確な方向感を持ちづらくなっている。結果として、年初に112円台後半で始まったドル円相場は、20日時点でも112円台半ばを推移している。年間の上下値幅も同時点で10円以下と、変動相場制に移行した1970年代以降で最小となる可能性が高い。

<来年の相場展望>

では、19年の為替市場はどのような展開になるだろうか。

足元の状況などから、来年序盤はリスクが意識されそうだ。特に3月1日までとされる米中貿易交渉や、3月29日に予定されるブレグジット、下落基調を強める原油価格が底値を模索する動きなどは、いずれも1─3月期にピークを迎えるとみられる。

その結果、安全通貨である円とドルは同じ方向に動き、ドル円相場はこう着感の強い展開を想定している。レンジとしては今年の10─12月期同様、111円台─114円台程度の値動きとなるのではないか。

その後の相場については、上記リスク次第という部分がかなり大きい。最悪の場合、英国が合意なき離脱に至り欧州経済が大幅に悪化、米中対立も先鋭化し両国および世界経済への減速懸念が改めて強まるとともに世界の株価や資源価格が急落というシナリオもあり得る。

この場合、FRBは緩和含みの利上げ停止となる反面、日銀の追加緩和余地は小さい。同様に、既にゼロである本邦金利に比べて米金利の低下余地は大きく、ドル円は110円を割り込むドル安円高となるだろう。

しかし筆者はそこまで悲観的にはみていない。英下院は離脱協定案をいったん可決し、アイルランド国境問題の継続協議を選択すると考えている。米中摩擦はハイテクや軍事面での対立が続く一方で、貿易面では景気や株価への配慮もあり、ある程度の合意に達することは可能とみている。

基本的にはこれらリスクがある程度緩和する中で、足元で大きく悲観に傾いている米国のファンダメンタルズが改めて見直され、夏場にかけてドル円は115円を超えていく展開をメインシナリオとしている。

鈴木健吾氏(写真は筆者提供)

*鈴木健吾氏は、みずほ証券・投資情報部のチーフFXストラテジスト。証券会社や銀行で為替関連業務を経験後、約10年におよぶプロップディーラー業務を経て、2012年より現職。

*本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいています。

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編集:伊藤典子

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