August 26, 2015 / 4:41 AM / 4 years ago

コラム:北朝鮮が韓国を挑発する本当の目的

[25日 ロイター] - 北朝鮮と韓国は25日未明、緊張緩和に向けた合意に達した。両国の対立は先週、5年ぶりの砲撃戦にまで発展。本格的な軍事衝突の回避に向け、南北高官は夜を徹して異例のマラソン協議を行っていた。

 8月25日、北朝鮮と韓国は緊張緩和に向けた合意に達したが、北朝鮮が韓国を挑発する真の目的は何か。写真は北朝鮮の金正恩第1書記。21日に朝鮮中央通信提供(2015年 ロイター)

しかし、南北高官会談の舞台裏では、さらに重要な出来事が展開していた可能性がある。そこでは、北朝鮮にとって唯一最大の支援国である中国の存在が浮かび上がってくる。

中朝両国の閉鎖性を考えれば、何が起きていたかを正確に知るのは実質的に不可能だ。筆者が両国の間で何かしらの動きがあったと考えるのは、米国務省の仕事で中朝国境近くに3年ほど住み、中国と北朝鮮の物資の行き来を監視していた経験を基にしている。

歴史的に見ると、北朝鮮が韓国を挑発する時というのは、国威発揚もしくは中国の関心を引くことが目的だった。今回も例外ではなさそうだ。中国と北朝鮮の高官は、筆者が2000年代半ばに中朝国境近くに住んでいた時と同様、遼寧省の国境地域などで会談を重ねていたとみられる。その協議の大半は、中国が南北双方に自制を求める内容だっただろう。朝鮮半島有事の際には、北朝鮮から中国に数百万人が逃げ込む可能性が高いため、南北間の平和確保は中国にとって最善の利益でもあるからだ。

しかし、協議の本当の中身は、北朝鮮が中国から何を得たいかだ。北朝鮮は、食料と武器とエネルギーを中国に頼っている。そして中国は、北朝鮮の協力を引き出す時にはムチよりもアメを使う傾向がかなり強い。今回の北朝鮮の挑発行為は、資金と食料の不足がそもそもの原因だったと思われる。もしくは、可能性は低いが、中国政府の同国への冷淡な態度が原因だったかもしれない。今回の問題は南北軍事境界線に近い非武装地帯(DMZ)で起きていたが、実際には、南北関係よりも中朝関係に関係していたとみられる。

北朝鮮で6月に起きた干ばつは、世界食糧計画(WFP)が推測していた以上に同国に打撃を与えただろう。北朝鮮は過去100年で最悪の干ばつだと表現していた。さらに、北朝鮮政府がエボラ出血熱の水際対策として数カ月にわたって実施した国境閉鎖は、同国の観光業に深刻な打撃を与えた。観光業は小さいとはいえ、貴重な外貨獲得源だ。こうしたことに加え、中国の習近平国家主席が北朝鮮の金正恩第1書記に冷たい態度を取ってきたことも、今回の暴発につながったとみていいだろう。資金と食料の不足に中国から愛想を尽かされたとの感情が重なれば、北朝鮮が挑発的行動に出ても驚くには値しない。

国際社会の関心の多くはこれまで、板門店での協議の行方に集まっていた。われわれは今後、中朝貿易最大の物流拠点である遼寧省・丹東市で遠からず動きがあると考えるべきだ。2009年11月に起きた南北艦艇による銃撃戦の後は、食料支援物資(主にトウモロコシ)が鉄橋を渡って北朝鮮側に運ばれた。国境をはさみ、真新しい中国のトラックや重機が突然姿を現したのも目撃された。今回も同様のことが起きる公算が大きい。

報道関係者や専門家の間ではしばしば、世界第2位のトウモロコシ産出国である中国がなぜ、施設の新設が必要なほどのトウモロコシを輸入・備蓄するのか疑問の声が上がる。そうした備蓄トウモロコシが北朝鮮との国境付近に置かれているのは、偶然ではない。米国と韓国が北朝鮮との問題にどう対応するかに注目が集まる一方、北朝鮮の安定の立役者は中国であるという事実にはあまり関心が払われていない。

中国は過去の南北衝突から考えると、今回はどこか違った対応を見せている。中国人民解放軍は過去数日の間に、北朝鮮国境から約30キロ離れた吉林省・延吉に大規模な部隊を集結させたと報じられている。おそらく部隊の動きそのものよりも意義深いのは、中国政府がそうした動きを報道させていることだ。このことは、中国が北朝鮮政権崩壊の可能性に懸念を強めていることの証しかもしれない。はっきりと見えているのは、北朝鮮の安定に外国の軍隊が必要になった場合、真っ先に駆け付けるのは中国であろうことだ。

結局のところ、今回の出来事の大部分は食料と燃料の問題に由来していたと思われる。南北双方の顔が立つ合意に達した以上、中国は北朝鮮がそもそも望んでいたものを何でも提供すると筆者は予想する。

*筆者は、元米空軍将校で外交にも携わっていた。米空軍士官学校では哲学教授を5年間務め、2009─2011年には米太平洋特殊作戦軍(SOCPAC)の上級政務官だった。軍を退役後は、米海軍大学院で中国政策に関する助言も行っている。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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