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コラム

コラム:中国の中央アジア戦略、ロシアの怒り買う可能性

[12日 ロイター] - 西側のメディアや政治機関には、中国とロシアをあたかも「反西側陣営」のように表現する傾向がある。両国とも西側諸国に比べ政治体制は独裁的で、開放的な制度や報道の自由については懐疑的である。

 4月12日、西側のメディアなどは、中国とロシアをあたかも「反西側陣営」のように表現する傾向がある。たが、こうした見方はモスクワと北京のあいだの競争と不信感を見落としている。写真は中国の習国家主席(左)と、ロシアのプーチン大統領。モスクワで昨年5月撮影(2016年 ロイター/Sergei Karpukhin)

中国とロシアは、国際的な論争において欧州・米国の利益に反する立場で互いに味方し合うことが多い。たが、こうした見方はモスクワと北京のあいだの競争と不信感を見落としている。

中国が最近提案した中央アジアにおける反テロ協調体制を機に、中ロ両国のライバル関係が再び注目を集めるようになっている。というのも、その体制にはロシアが含まれておらず、中ロの緊張が今後数十年のあいだに高まってくる可能性が増している。

中央アジア地域は、数世紀にわたって、中ロ双方にとって戦略的な懸念の源となってきた。だがそうした懸念は、中央アジアの部族からの侵入を定期的に受ける側だった中国の方が大きい。

18世紀半ばになると、この地域をより確実に統制しようという両帝国の努力が実を結ぶようになった。ロシアはシベリアを支配下に収め、清朝中国は新疆地区に入植地を確立したからだ。これは事実上「新たな国境地帯」が生まれたことを意味する。

こうして恒久的なプレゼンスを確立したことで周縁の部族から受ける脅威は緩和されたが、ユーラシア大陸の2大帝国が中央アジアにおいて競争・対立することになり、それが今日まで続いている。

それ以降、大半の時期においてロシアの方が中国よりも強大であり、ときにはその力の差は非常に大きかった。ロシアは中央アジア地域における勝者としての立場に慣れ、最終的にソ連時代には、中央アジアの各共和国、さらにはモンゴルに対してまで影響力を及ぼすようになった。

だが、いまや形勢は逆転した。再び台頭した中国が強い自己主張を続けており、ロシア政府を憂慮させている。

中国による反テロ協調体制の提案は、こうした「大国外交」の最新バージョンといえる。この協調体制が正式に構築されれば、中国と中央アジア諸国政府のあいだの情報共有、監視および軍事的な取り組みの調整に重点が置かれることになる。

パキスタン、アフガニスタン、タジキスタンは関心を示しており、他の共和国とも早々に交渉を行うことが提案されている。今のところ詳細があまり明らかにされていないのは、合意困難な点が数多く生じ、提案されている取り組み全体が崩壊してしまう可能性があることを示唆している。中国の外交は、あるプロジェクトにおいて格下の国と見なす諸国を相手にするとき、ぎこちなく行き過ぎになる例が見られるだけに、なおさらである。

とはいえ、今回の提案は、中国からアフガニスタンへの7000万ドル(約76億5000万円)規模のテロ対策支援供与、また中央アジア地域における中国の通商外交、特に、中央アジアを経由して陸路で欧州・中国を結ぶことを想定した、習近平国家主席の言う「一帯一路」インフラ構築計画に続くものである。

これら取り組みのいずれにおいても、ロシアは、いわば明示的に上席に招かれてはいない。提案されている協調体制からのロシア外しは、中ロ両国が過去15年間、中央アジアにおける主要な条約機構である上海協力機構に参加しているだけに、いっそう目立っている。

上海協力機構は、少なくとも建前としては、いま中国政府がロシアを排除したまったくの新しい機関において実施しようとしている活動に取り組むことを意図するものである。

中央アジア地域では、地元のイスラム原理主義グループによるテロ活動の可能性が問題となっている。実際、過激派組織「イスラム国」は最近この地域への勢力拡大に努めており、これまで以上に中国政府がイスラム国の攻撃対象になっている。

こうなると、ロシアが「対テロ協調は影響力拡大を狙う中国の策略にすぎない」と主張するのは難しくなる。中央アジア系の民族、特にテュルク人は、中ロいずれにおいても民族的・文化的な多数派を構成していない。中ロ両国には2500万人近いテュルク人がいるが、特に国内社会によく統合されているわけでもなく、不満や対立は少なくない。

新疆地域のウイグル族は、以前中国に対する抵抗運動の組織・扇動を試みており、彼らに対する中国政府の厳しい姿勢を考えれば、同じことが繰り返される可能性はある。新疆地域における中国治安部隊の規模は大幅に増加しており、自治区の一部では戒厳令に近い状態となっている。それだけに、中央アジアに中国の治安部隊が常駐するとしても、単にこうした状況の延長にすぎないとも言える。

だが、中央アジアにおける外交、提携構築という点での中国の取り組みが特に目を引くのは、まさに今、中国がグローバル外交の舞台でその影響力を誇示しようとし始めているからだ。

今年初め、中国は初の海外軍事基地の設立に向けた合意を結んだ。すでに米国、日本などが部隊を駐留させているジブチに海軍の拠点を設ける計画だ。こうした動きに先立って、人民解放軍の大規模な改革が行われた。地上部隊を削減しつつ、軍に対し、自国の防衛だけでなく、世界各地で中国の国益を守るという役割を明確に与えるものである。

ロシア政府もこうした中国の行動パターンを見逃さなかった。ロシア政府は歴史的に、プーチンがよくロシアの「近隣他国」と呼ぶ、ウクライナ、カフカス、中央アジアなどに対する外国の介入を非常に嫌っているからだ。

中央アジアでの中ロ両国の対立において大きな不確定要因となるのが、米国の動向である。米国はアフガニスタンに15年近く軍事介入を続けており、この地域の安全保障について直接的な関心と経験を有しているが、新たな中国の取り組みが実現した場合に、これを支持するとも参加するともまだ決めていない。

米国が中央アジア地域におけるロシアの動きよりも、中国の動きの方に対して疑念を持つとすれば、これを機に米国はロシアと協力する独自の外交手段を手にすることになるかもしれない。

あるいは、その正反対、つまり米中が共同してロシアの圧力に抵抗することもあろう。米国政府が、中央アジア地域における中ロいずれのプレゼンスも望ましくないと判断すれば、いわゆる三すくみの条件が整う可能性もある。

しかし結局のところ、中国主導の対テロ協調体制は現時点では提案でしかない。外交においては、ロシア、中国、米国が相互不信に陥る場合と同様に、お互いを必要とする場合もまた多い。したがって3国とも、中央アジアで真っ向からの対決姿勢はとらないかもしれない。少なくとも当面は。

*筆者は、北東アジア問題と国際政治経済学が専門の国際政治アナリスト。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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