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コラム:市場が想定していない英国の「EU離脱」リスク
2016年2月22日 / 06:37 / 2年前

コラム:市場が想定していない英国の「EU離脱」リスク

Hugo Dixon

 2月21日、英国のEU残留に向けた改革案をめぐり、キャメロン英首相はEUと合意にこぎつけた。今度は、英国民が6月23日に行われる国民投票で、EUに残留するか離脱するかの意思を示す番である。写真は英国旗(左)とEU旗。ロンドンで17日撮影(2016年 ロイター/Toby Melville)

[ロンドン 21日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 英国の欧州連合(EU)残留に向けた改革案をめぐり、キャメロン英首相はEUと合意にこぎつけた。今度は、英国民が6月23日に行われる国民投票で、EUに残留するか離脱するかの意思を示す番である。

英国のEU離脱(ブレグジット)の可能性は50%を下回っているが、もし有権者が離脱することを選択するなら、その経済的影響は深刻なものになり得る。

複数の世論調査が離脱リスクの高いことを示している。NatCenソーシャル・リサーチの世論調査では「離脱」は48%で、「残留」の52%とそう大差ない。

だが実際にそこまで接戦というほどではないだろう。とりわけ、キャメロン首相のみならず、残留17対離脱5で割れている彼の内閣も、EU残留に向けたキャンペーンをほとんどまだ始めていない。

一方、ロンドンのボリス・ジョンソン市長は21日、離脱を支持すると表明。人気のある同市長による離脱支持表明は、離脱派にとって非常に強力なカンフル剤となる。

離脱後のビジョンについて異なる見方をする2つのグループに分かれる離脱派の代表格としては、右派の英独立党(UKIP)のナイジェル・ファラージ党首がこれまで最も有名だった。ファラージ氏の場合は、人を引きつけるよりも、離れていく人の方が多かった。

しかしさらに問題なのは、多くのことが残留派にとって不利に働く可能性があることだ。この春に、もし中東や北アフリカから新たに大量の難民・移民が欧州に押し寄せた場合(実際に起こりそうなことだが)、英国民はEU離脱が最善と考えるかもしれない。英国に入ってくる難民・移民がほとんどいなくても、また、離脱することで逆に難民危機にさらされる可能性があったとしても、離脱派はそれとは反対のことを主張している。

有権者はまた、政治エリート層が自分たちの利益を主張しているとして、彼らの言うことを容易に無視するかもしれない。過去に他のEU加盟国の国民投票で実際にそれが起きたことがある。例を挙げれば、フランスの有権者は2005年、提案されていた欧州憲法条約を国民投票で否決した。

ブレグジットが起きる可能性をはかるうえで世論調査よりも優れた尺度は、ブックメーカー(賭け屋)のオッズかもしれない。ラドブロークスによると、ロンドン市長の離脱支持表明は反映されていないものの、20日時点での離脱する可能性は28%だった。

このような賭けで分からないのは、ブレグジットによって被るダメージだ。しかしながら、為替市場はその兆しを示している。英国がEUを離脱する可能性が高まると、ポンドはユーロに対し、過去3カ月で9%下落した。実際に離脱することになれば、さらに下落するだろう。

経済的影響を分析するには、離脱後の新たな常態と、それに至る過程を区別するのが有益だろう。

新たな常態は現在と比べてそれほど都合良くはいかないだろう。なぜなら、英国はEUの単一市場へ十分に参入する機会を得るのに苦しむことが予想されるからだ。そのような機会が十分に得られなければ、英国の長期的な成長見通しは引き下げられることになる。

理論上、EU加盟国でなくても市場に参加しているノルウェーのような道を歩むことは可能だが、英国がそのようなモデルを目指す可能性は低いように見える。結局のところ、人の自由な移動だけでなく、投票することなしにEU市場のルールを適用せざるを得なくなる。そのようなことを離脱を選んだ有権者に売り込むことは困難だろう。

離脱後の常態が現状よりも魅力的でないとしたら、それに至る移行の過程ではさらなる痛手を受ける恐れがある。

第一に、英国とEU加盟国双方の国民からそれぞれ譲歩しないようプレッシャーを受けることから、EUとの「離婚」は辛辣(しんらつ)なものとなり得る。対EU貿易が英国の貿易全体の半分近くを占めているのに対し、EUの対英貿易はわずか14%であることを考えると、英国の方が失うものが大きいだろう。

さらに重要なのは、EU離脱の決定が英国で政治的混乱の引き金となる可能性があることだ。キャメロン首相はたとえ離脱することになっても首相にとどまるとしているが、辞任を求める圧力は計り知れないほど高まるだろう。ロンドンのジョンソン市長がその後任として最有力となるかもしれない。

国民投票後に経済が大きく低迷し、与党保守党で激しい内部争いが起きて分裂するなら、現在はあまり真剣に受け止められてはいないシナリオだが、2020年の総選挙で野党労働党のジェレミー・コービン党首が首相となる可能性すら出てくる。コービン氏の時代錯誤な社会主義的経済政策を考えれば、市場の反応は悪いだろう。

故に、EU離脱によって、カーニー英中銀総裁が先月に警告したように、投資家は英国の資産にリスクプレミアムを乗せるようになりかねない。カーニー総裁は、英国の経常赤字を考えれば、ブレグジットは「他人の親切心」を試すことになると述べている。欧州委員会(EC)によれば、英国の経常赤字は昨年の国内総生産(GDP)の5%に達する見込みだという。

この数カ月のポンド下落にもかかわらず、市場はそのようなテールリスクを想定していないように思える。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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