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コラム

コラム:米国債利回り上昇、純粋なインフレ懸念と言えない理由

[オーランド(米フロリダ州) 28日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が先週、よりタカ派的な姿勢になって以降の米国債の売りを主導してきた要因を分析してみると、投資家はインフレの高まりというより、大幅な利上げ自体を警戒していることが分かる。

米連邦準備理事会(FRB)が先週、よりタカ派的な姿勢になって以降の米国債の売りを主導してきた要因を分析してみると、投資家はインフレの高まりというより、大幅な利上げ自体を警戒していることが分かる。写真はドル紙幣。2016年11月撮影(2021年 ロイター/Dado Ruvic)

今年に入ってずっと、インフレと投入価格上昇の加速を心配する理由には事欠かなかった。「1970年代の再来」を騒ぐ声が聞こえ、投資家は物価高騰への恐怖に取りつかれた。にもかかわらず、年初にインフレヘッジ目的で米物価連動国債(TIPS)を購入していた人は、今ごろ損失を被っているはずだ。

そうした流れは過去1週間で浮き彫りになった。

22日に終わった連邦公開市場委員会(FOMC)以来の長期債利回り急伸とイールドカーブのスティープ化は、主として「実質」利回りの上昇によってもたらされている。半面、市場の予想物価をより明白に反映するブレークイーブン・インフレ率(BEI)はそこまで劇的に上がらず、依然として春からの幅広いレンジから抜け出していない。

少なくとも今のところ、残存5年から30年ゾーンまでのBEIで見た予想物価は先月に戻った程度で、5月の水準よりずっと低いままだ。さらに、FRBの買い入れに伴う歪みが除かれるという意味でもっとはっきりした予想物価指標であるフォワード・スワップ金利に基づいても、状況は同じ。つまり上昇はしているが、年央の水準には全然届かない。

供給制約に伴う現在の物価高が恒久的な、需要主導のインフレに変容することを債券市場が純粋に恐れているのなら、BEIは名目ベースの利回りより急速ではなくとも、同じスピードでは上昇しているだろう。

とはいえ懸念すべき正当な根拠がなくなったわけではない。北海ブレント油価格は過去3年間で初めて1バレル=80ドルを突破し、この12カ月で2倍になった。コア物価上昇率は最近、約30年ぶりに4%に達し、8月の総合物価上昇率は鈍化したものの、まだ5%を上回っている。

20億ドルの運用に携わるテーブス・アセット・マネジメントのフィリップ・テーブス最高経営責任者(CEO)は、金融市場がインフレを甘く見すぎていると確信している。今後物価上昇率が2桁になる確率は50%あるが「われわれは(現実を)拒絶している」と警鐘を鳴らす。

何が米国債利回りを押し上げているのか明確にすることには大事な意味がある。全般的な物価見通しを投資家がどの程度受け入れているか、あるいは受け入れていないかが分かり、政策担当者の考えをより適切に分析できるからだ。

BEIが抑制されている限り、債券市場は物価見通しに関して比較的安心していて、FRBの政策対応は後手に回っておらず、金利は予定通りに市場の混乱を伴わず上昇するという主張の説得力が強まる。

このことは、ここ数カ月で強まり、先週になって加速した見方に疑問を生じさせる。つまりインフレは制御不能になる恐れが出てきて、FRBは利上げサイクルにおいて予防的に動くどころか受け身に回らざるを得なくなるのではないか、との見方だ。

この説を助長しているのは、新型コロナウイルスのパンデミックに起因する世界的な供給網の制約で、具体的には半導体不足からコンテナ船が港に接岸できない事態までさまざまだ。また一部の指標では、消費者と企業の予想物価も跳ね上がりつつある。

ただFRB当局者はこうした現象に関して、以前の想定より長引く可能性はあるとしながらも、あくまで一時的と言い張っている。

今回のFOMC後に公表されたメンバーの政策金利予想分布(ドットチャート)によると、来年中の利上げ開始を想定したのは全18人のうち9人と、6月時点の7人から増加。政策金利予想の中央値も利上げペースが速まる方向に変わった。物価上昇率は2024年まで目標の2%を上回り続けるとの見通しが示された。

それでも少なくとも今年については、インフレヘッジのためのTIPS購入はリスクの高い取引になっている。10年物と30年物のTIPS価格は年初来でそれぞれ約1.5%と7%下落し、今月22日以降の下落率はおよそ1%と4%だった。

これは「実質」利回りの上昇を意味する。米10年国債の実質利回りは8月序盤に過去最低のマイナス1.2%を付けた後、現在はマイナス0.85%で35ベーシスポイント(bp)上がったことになる。

この間、10年国債の名目ベースの利回りも1.18%から1.53%とほぼ同程度上昇した。BEIの上がり方が鈍かった点を加味すると、投資家は恒久的な物価上振れよりも、FRBの政策対応を改めて織り込んだことがうかがえる。

JPモルガンが先週公表した顧客調査では、全体の54%が供給制約は一過性と答え、持続的な性質になると回答したのは43%だった。たとえこのバランスが逆転したとしても、BEIの動きからは、FRBはよりダメージを与える物価上昇を抑え込めるほどの速さで対応してくれる、という投資家の自信は十分維持されると読み取れる。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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