August 6, 2014 / 3:17 AM / 5 years ago

コラム:アベノミクスに立ちはだかる2つの「障壁」

[5日 ロイター] - 日本の企業と消費者は一様に、アベノミクスの推進に向けて与えられた役割を演じるのを拒んでいるようだ。日本がデフレと景気低迷から脱却するチャンスは失われつつある。

 8月5日、日本の企業と消費者は一様に、アベノミクスの推進に向けて与えられた役割を演じるのを拒んでいるようだ。写真は安倍首相。都内で6月撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)

円相場の下落にもかかわらず輸出が減少し、消費者物価上昇の勢いが再び弱まるなか、7─8日に金融政策決定会合を開く日本銀行には圧力がかかることになる。

異次元金融緩和と財政刺激策、長期的な構造改革を柱とするアベノミクスはここまで、物価上昇と経済成長の面で一定の成果を収めてきた。しかし、物価上昇に所得の伸びが追いついていない家計は、当初の期待通りには支出を増やしていない。先週発表された6月の小売業販売額(全店ベース)は前年比でマイナスと期待外れになった。

消費が伸びていない要因の大部分は、4月に実施された5%から8%への消費税率引き上げにある。消費増税はより切迫した公的債務問題に対応するためのものだが、失われた10年を経験した日本の消費者が身をすくめてしまうのは無理からぬことだ。

むしろ驚きなのは、そして少し皮肉的でさえあるのは、欧米企業と違って株主価値を最大化させていないと長く批判を受けてきた日本企業が、今度は株主価値を優先することでアベノミクスを頓挫させるような振る舞いを見せていることだ。

アベノミクスを支えてきたのは、為替相場を円安方向に導く日銀の断固たる姿勢だった。円の対ドル相場JPY=は、異次元緩和策の発表前からは約25%安い水準にある。その狙いは、日本企業が世界市場での新たな競争力(円安)を使って生産を拡大させる好循環を生み出すことだった。企業の雇用と新規設備投資が増加することで、日銀が意図的につくり出した物価上昇はうまく吸収され、本物の成長局面につながることが期待された。

しかし、そこにはまだ至っていない。

先に発表された6月貿易収支では、輸出が前年比2.0%減と2カ月連続のマイナスとなった。問題を難しくしているのは、原発稼働停止による燃料輸入の増加などで、輸入は同8.4%増とプラスに転じたことだ。その結果、6月としては過去最大の貿易赤字となり、2014年上半期の貿易赤字は前年同期比で57%増えた。

<規模拡大より利益優先>

これらはすべて、日本の企業文化の変化を示唆しているのかもしれない。人口減少と円高への備えとして生産拠点の海外移転を進めてきた日本企業の多くは、円安を単に思わぬ追い風ととらえている節がある。企業は国内での投資を拡大して攻めに転じるよりも、円安を当たり前のこととは考えず、現在の相場環境が続く間は高い利益率を享受しようとしている。

1970年代や80年代の楽観的な日本の経営者たちなら、円安を利益拡大のためだけでなく、自社の規模拡大にも使ったはずだ。

しかし、20年に及ぶデフレと少子化傾向にくわえ、株主重視文化の輸入もあいまって、今の日本企業は、むしろ欧米企業に近い行動を取るようになっている。つまり、円安による利益は規模拡大のために使うのではなく、ため込む方向にある。

長期的な視点に立てば、そうした行動は資本の配分の最適化を意味するのかもしれない。しかし、短期的には、アベノミクスに不健全な現実を突きつけることになる。

もう1つ確かなのは、企業経営者も消費者も、アベノミクスの第3の矢である構造改革をまだ実感していないことだ。構造改革はいずれは経済のパイ全体を拡大させるだろうが、一部は新たな競争にさらされることになり、それは労働者も感じることになるだろう。

多くの投資家がアベノミクスは脱線しつつあるかもしれないとの感覚を持っているのは、こうした理由からだ。ただ、その考え方も恐らくは早計だろう。

安倍晋三首相の支持率は最近大きく下がったが、首相も日銀も政策に全面的にコミットしており、特に日銀は、景気やマーケットの悪化には、これまでと同じような政策で対応すると考えられている。

7─8日の金融政策決定会合では、2015年中の「物価目標2%」達成に向けて多くの議論が交わされるだろう。少なくとも今回の会合の結果は、政策そのものの変更ではなく、文言の変化にとどまる公算がかなり大きい。ただ、各指標で経済の停滞傾向が示され続ければ、遠からず追加緩和策が打ち出される可能性はある。

そうなれば、金融市場は好ましい方向に動くだろう。しかし、今の企業の動きを考えると、そもそもアベノミクスは、もはや存在していない過去の日本を念頭につくられたのではないかという疑問は残る。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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