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コラム:「大きすぎてつぶせない」銀行の問題は解決済みか
April 24, 2017 / 4:43 AM / in 8 months

コラム:「大きすぎてつぶせない」銀行の問題は解決済みか

Neil Unmack

 4月21日、巨大銀行が経営危機に陥ると、公的資金による救済を迫られるという「大きすぎてつぶせない」問題は解決済みか否か。NY証券取引所前で昨年12月撮影(2017年 ロイター/Andrew Kelly)

[ロンドン 21日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 巨大銀行が経営危機に陥ると、公的資金による救済を迫られるという「大きすぎてつぶせない」問題は解決済みか否か──。JPモルガン(JPM.N)のダイモン最高経営責任者(CEO)の答えは「解決済み」だ。

これに対し、ミネアポリス連邦準備銀行のカシュカリ総裁は、損失吸収型の債券を利用する仕組みは機能しないとして異を唱えている。市場動向を見る限りでは、ダイモン氏の方が正解に近いようだ。

ダイモン氏は、銀行は破綻処理に十分な準備金と資本を備えているので、公的資金による救済は必要ないと主張している。しかしカシュカリ氏は、損失を吸収する「ベイルイン」債が存在しても、当局はいずれにせよその利用を断行できないと見る。

カシュカリ氏の猜疑心にも一理ある。リーマン・ブラザーズが支払い不能に陥ったことは金融市場に衝撃波を広げ、そのために政府は他の銀行を救済せざるを得なくなった。破綻処理に債券を使えば衝撃を増幅しかねない、というカシュカリ氏の言い分は正しい。

しかし今後は、リーマン型の危機の伝播が減ると期待できる理由もある。銀行は現在、ベイルイン債を銀行本体から切り離したり、別法人から発行することによって破綻処理が主力事業を不安定化させるのを防ごうとしている。銀行同士がベイルイン債を保有し合うことも、規制によって禁じられている。

銀行の資本も強化された。金融安定理事会(FSB)によると、2008─09年の金融危機では、損失と資本増強コストがリスク性資産の6─15%に相当した。この水準になれば、普通株式は吹き飛ぶだろうが、ベイルイン債は小幅な損失にとどまるだろう。

市場は規制当局をある程度信頼している。米銀のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を見ると、事業会社に比べて銀行が政府の救済を受ける確率が大幅に高いことは想定されていない。米大手6行の10年物CDSスプレッドは110ベーシスポイント(bp)前後で、事業会社とほぼ同水準だ。

一方、銀行のベイルイン債は、ベイルイン型ではない銀行債に比べて利回りプレミアムがついている。つまり、かつては政府が行っていた救済のコストを、投資家が銀行に課しているわけだ。そうしたプレミアムはサンタンデールで約50bp、バンク・オブ・アメリカで約30bp。イングランド銀行(英中央銀行)の試算によると、「大きすぎてつぶせない」銀行に対する政府の補助は歴史的に25─80bpといった水準だった。

ダイモン氏が間違っている可能性は残る。銀行はまだ十分な規模のベイルイン債を発行していない。極端なケースでは、損失吸収可能な準備金を上回る損失を出した銀行もある。国際展開している銀行の場合なら、損失を巡って各国当局同士がもめて破綻処理が難航するかもしれない。しかし債券投資家は、当局が慌てて助け舟を出すことをあてにしなくなっているようだ。

●背景となるニュース

*ミネアポリス連邦準備銀行のカシュカリ総裁は6日付の小論文で、現在の規制では銀行の破綻処理に使われる債券に欠陥があるため、危機の際には政府が救済を迫られるとの見解を示した。

    *これはJPモルガンのダイモンCEOが公表した株主宛ての書簡に反応したもの。ダイモン氏はこの中で、「大きすぎてつぶせない」問題は「解決済みだ」と述べている。

    *カシュカリ総裁は、ベイルイン債は一見「理想的な解決策」に見えるが、「問題は現実世界でほとんど機能しないことだ」と指摘した。

    *総裁の主張は以下の通り。

    「政府が金融危機の際に大きすぎてつぶせない銀行の債権者に損失を負わせるのを渋ったのは、影響が伝染するリスクゆえだ。他の大きすぎてつぶせない銀行の債権者は、同様の損失を負わされると恐れて、手当たり次第に資金を引き揚げようと試みるか、少なくとも債券が償還を迎えた時に再投資を拒むだろう」

    *「このため、政府は状況の良い時には何とでも約束するが、危機が来れば債券保有者に損失を負わせない。これが真実であることは歴史が繰り返し証明しており、われわれは最善を望むことはできるが、次の危機の時に同じ事が起きないと信じるに足る理由はない。真の資本のみが危機時に損失を吸収できると考えるべきだ」

    *筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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