February 3, 2019 / 2:18 AM / 12 days ago

コラム:米国の「老後危機」、70歳定年で解消できるか

[シカゴ 30日 ロイター] - それは、迫りくる米国の老後危機へのシンプルな解決策に見えるかもしれない。70歳まで働いてから退職生活に入ってもらえば、高齢者の85%が十分な退職資金を手にできるだろう、というものだ。

1月30日、それは、迫りくる米国の老後危機へのシンプルな解決策に見えるかもしれない。写真は米アリゾナ州サンシティで2013年1月撮影(2019年 ロイター/Lucy Nicholson)

就労が伸びた期間はより貯蓄に励み、給与を得ている間は既にある貯金に手を付けずに済む。さらに、貯蓄を切り崩して生活費に充てなければならない「退職後」の年数が、より短くなる。ボストン・カレッジ退職研究センターのアリシア・マネル所長はこう指摘する。

社会保障制度や医療保障制度の財源を心配するエコノミストや議員が飛びつきそうな計算ではあるが、実際にはそれほど簡単ではない。

米シンクタンクのブルッキングス研究所が先週開いたフォーラムで、マサチューセッツ工科大学(MIT)のジェームズ・ポターバ経済学教授が問題点を指摘している。

「全員が、より長く働けるわけではない」と、全米経済研究所の所長も務めるポターバ氏は指摘。体力が求められたり、不快感を伴ったりする仕事に就いている人と、快適な研究室で社会保障制度改革について研究を行うエコノミストを対比してみせた。

70代までポストにしがみつく教授が多くいる一方で、多くの人にその選択肢はないことが、研究で明らかになっている。

アーバン研究所の最近の研究によると、50歳以上の人の10%程度が、健康問題が原因で退職を余儀なくされた。同研究所のエコノミストであるリチャード・ジョンソン氏は、連邦政府の委託で行われた米国の健康と退職に関する調査で50歳以上の職歴を研究した。学歴や人種、性別を問わず、年齢差別によりはるかに多くの高齢労働者が職から離れざるを得なくなっていると指摘する。

高齢労働者はまた、新たな職を見つけるのにも苦労している。半数の人の収入が42%超下落し、職を失う前と同水準の給与で再就職できたのは10%程度にとどまる。50歳以上で職を失った人の3分の1が、再び失業を経験している。

「労働市場がタイトになった今でも、年齢差別はまだある」と、ジョンソン氏は訴えた。

<第三の道>

エコノミストは、70歳まで働くのは無理にしても、なるべく長期間働くことを推奨している。スタンフォード大のジョン・ショーブン教授は、62歳ではなく66歳に退職を伸ばすことで、生活水準を3分の1程度上げられると分析する。

高齢労働者をより長く雇用するよう雇用主側を説得し、年金をフルに受け取れる年齢を現在の66歳半または67歳から、70歳に引き上げることも大事だと、前出のマネル氏は話す。

50代の人を雇えば、わずかな確定拠出年金(401k)を積み上げるためにずっと居座られるのではないかと懸念する雇用主もいると、マネル氏は言う。退職年齢が70歳になれば、雇用主側も、50代の人はいずれ自ら退職すると考えて、採用しやすくなるかもしれない。

だが退職年齢の引き上げは、政治的に議論を呼ぶ課題だ。低収入の人や、体力が要求される仕事の人が、70歳より早く年金受給開始の手続きをすれば、受取総額が減るためだ。トランプ米大統領は、社会保障制度改革は行わないと約束している。

ショーブン教授とノースカロライナ州立大のロバート・クラーク教授が提案するのは、62歳以上の従業員について、雇用主と従業員からの社会保険料分の給与税の徴取を取りやめることだ。

現在では、13万2900ドル(約1450万円)までの所得に対しては、雇用主と従業員の双方が6.2%の給与税を負担することになっている。両教授は、高齢になるまで働く人が増えることで所得税の税収が増え、社会保障財源の減収分が補えると主張する。

これに対し、社会保障局の主任保険数理士(アクチュアリー)を務めるスティーブ・ゴス氏は、そうして生まれた雇用主側の余裕が、賃上げの形で労働者に還元されたり、高齢労働者の供給が増えたりすることにはつながらないだろうと予測する。

また、社会保障制度の歳入が減れば、若い世代の税負担が増えて自らの退職に備えた貯蓄が減るかもしれない。結果的に、危機的な退職準備状況の連鎖が起きることになりかねない。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below