December 1, 2018 / 11:00 PM / 10 days ago

コラム:高齢化する米国、世帯資産減少で将来は住宅危機も

[シカゴ 29日 ロイター] - 米国の家庭が、年を重ねつつある。家屋ではなく、そこに住む人間の話だ。ハーバード大学住宅研究共同センター(JCHS)によると、世帯主が50歳以上の米国の世帯数は、2016年は全体の55%にあたる約6500万世帯だった。

11月29日、米国の家庭が、年を重ねつつある。家屋ではなく、そこに住む人間の話だ。フロリダ州中部の退職者コミュニティの航空写真。2015年6月撮影(2018年 ロイター/Carlo Allegri)

同センターが記録を取り始めた1960年以降で最も高い割合であり、おそらく米国史上最大だ。

今後、ベビーブーマーが70歳代や80歳代を迎えるにつれ、米国の世帯像は一層の高齢化が進むことになる。

動作に障害があっても暮らしやすいように設計された住宅を必要とする人も増えるだろう。現在の市場が供給できる量をはるかに上回る需要になる。

同センターの報告書で一番目を引いたのは、現在50歳代の人が最も大きな困難に直面することになるとの指摘だ。現在の高齢者世代よりも、収入や財産が少ない状態で退職を迎えるためだという。この世代の人々は、手が届く家賃や価格で、年齢に適した造りの住宅が不足するため、住宅危機に直面することになるという。

「既存住宅ストックの価格を手が届く範囲に収め、住宅内のアクセシビリティーも改善する必要がある」と報告書を作成したジェニファー・モリンスキー氏は言う。「世帯主が80歳以上の家庭が増えるにつれ、住宅とヘルスケア、そしてその他のサービスとの連携を強めることが大事だ」

米国は、十分な準備をしているだろうか。それにはほど遠いのが実情だ。

報告書によると、80歳以上の世帯数は1990─2016年に71%増え、約750万世帯となった。そして、ベビーブーマーの高齢化で、2037年までにさらに倍以上になる見通しだ。

「このグループは、より多くのサービスや、アクセシビリティーを向上させた設備を必要とする人が多い。アクセシブルな住宅や、居宅で受けられるサービスが十分にあるかというと、率直に言ってない」と、モリンスキー氏は言う。

JCHSの報告書は、米国の高齢者には2つのグループがあることを示している。1つは既に退職しているグループ、もう1つは今後退職するグループだ。

既に退職した人が世帯主の家庭の収入は、近年大きく上昇している。例えば、65─79歳の世帯の収入の中央値は、2011─16年にかけて9.6%上昇し、4万4100ドル(約500万円)となっている。同じ期間に、50歳代と60歳代半ばまでの現役世帯の収入は2.6%上昇し、6万6500ドルになった。これは実質的に、金融危機後に景気が底にあった2010年の数字を下回っている。

<薄い蓄え>

住宅を所有している人の割合も、少し若い世帯の間では金融危機後に急激に減少している。

2017年に自宅を所有している65歳以上の世帯の割合は79%だった。だがそのすぐ下の退職を控えた世代では、持ち家率は04年以降、特に金融危機後に減少を続けている。例えば、50─64歳の世帯では、17年の持ち家率は74%で、07年の79%から大きく減らしている。

この傾向は、いくつかの理由から憂慮されるべきものだ。

まずこれは、一般的に住宅所有との関連で考えられる「蓄財」をしているこの世代の世帯数が減っていることを意味している。そして、長期療養ケアなど大きな出費が必要になった際の最後の手段として住宅担保貸付に頼れる人も減ることになる。さらに、家賃水準のボラティリティーにさらされる人が増えることも意味する。

JCHSの報告書は、収入の3割以上を住宅費に費やす「高負担」の高齢米国人が増えていると指摘する。2016年には、そうした世帯は970万世帯で、収入の5割以上を住宅費に充てる「超高負担」の世帯もこれとは別に490万世帯あった。

ホームレスになる高齢者も増えている。この分野の研究は進んでいないが、住宅都市開発省のデータによると、62歳以上の「シェルターに収容されたホームレス」の数は、2007─17年にかけて48%増えている。また、JCHSの報告書は、ニューヨーク市の65歳以上のホームレスの数は、11─15年で倍近くに増えた。

その間、低所得層向け住宅支援の連邦予算は、ほぼ消滅した。連邦議会は2017年に高齢低所得者向けの住宅支援として500万ドルの予算を計上したが、こうした予算が組まれたのは2011年度以降初めてだった。議会は2018年は1億0500万ドルの予算を計上している。

JCHSの報告書はまた、高齢者の多くが人口密度が低い地域の戸建てに住んでおり、運転しなくなれば孤立する可能性があると指摘している。このことは今後、コミュニティーが新たな住宅や交通手段を提供する必要に迫られることを意味する。

「こうした傾向は分かっていたが、実際の数字は驚くべきものだ。50歳代や60歳代の人は大変な問題に直面している。住宅だけでなく、ヘルスケア費用の捻出にも困る人が出てくるだろう」と、高齢者サービス提供者の協会「リーディングエイジ」のリンダ・コーチ氏は言い、こう付け加えた。「そして、70や80になるのはあっという間だ」

*筆者はロイターのコラムニストで、個人的見解に基づいて書かれています。

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