November 11, 2019 / 4:30 AM / 24 days ago

コラム:米の同盟離れに危機感、マクロン氏「脳死」発言の真意

[ロンドン 8日 ロイター] - トランプ氏が米大統領に就任した2017年以来、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議はしばしば収集のつかない外交イベントに終わっている。中でも今年12月にロンドンで開かれる首脳会議は、最も波乱に満ちたものとなるかもしれない。英国と米国で結果の予想がつかない選挙が控えているからだけではない。マクロン・フランス大統領がNATOの将来に疑問を投げ掛けたのだ。

11月8日、トランプ氏が米大統領に就任した2017年以来、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議はしばしば収集のつかない外交イベントに終わっている。写真は8月、仏ビアリッツでトランプ米大統領(左)と共に記者会見するマクロン仏大統領(2019年 ロイター/Carlos Barria)

マクロン氏は7日発行の英エコノミスト誌のインタビューで、米国が戦略に関与しないためNATOは「脳死」に陥ったとし、米軍のシリア撤収は、米政府が同盟国および世界への関心を失った兆候だとも指摘した。欧州諸国は「NATOの現実を再評価」すべきだとマクロン氏は言う。

発言の真意は、明快とはほど遠い。14年にロシアがクリミアを併合して以来、NATOは特に東欧において、演習や多国籍軍の動員を劇的に増やし、多くの意味で新たな活力を得た。

しかし、明白なのは、フランス、そして程度は劣るがドイツが、欧州の防衛計画をもっと自らの手中に収めたいと望んでいること、そして、その有効な手段が必ずしもNATOによる対応ではない、と考えていることだ。

これは英国や米国の大半の安全保障当局者、一部小国の懸念を誘うだろう。彼らはいくら米政府の関与が減っても、NATOを欧州防衛の基本的枠組みとして維持する方がずっと良いと考えているからだ。しかし、トランプやブレグジット(英国の欧州連合離脱)の時代にあって、これら諸国の発言力は低下しているのかもしれない。

<紛れもない事実>

紛れもない事実は、来年の米大統領選でだれが勝つにせよ、米共和・民主両党で米軍のプレゼンスの大幅な縮小を望む層が増えていること、そして、そうした層は同盟国への感情的・知的な愛着がずっと薄まっていることだ。彼ら、彼女らがNATO第5条の規定する集団防衛を尊重するかどうかは推し量りかねるため、欧州の最強諸国が自国に最も有利な組織の構築を検討するのも無理はない。

フランスとドイツは今年1月、軍事協力条約の最新版(アーヘン条約)に調印した。相互防衛を担保しているだけなく、さらなる軍事協力にも踏み込み、実質的な合同軍につながる内容だ。これに対してトランプ氏は怒りのツイートをしたが、それは独仏に米軍抜きのシンプルな組織の必要性をさらに確信させたようだ。

カレンバウアー・ドイツ国防相は7日にミュンヘンで、フランス、ドイツ、英国の3カ国が正式に「E3」グループを結成すべきだと述べた。E3は、3カ国がトランプ政権と意見が真っ向から対立する問題について、声明を発表したいときに用いてきた形態だ。

最初に活用されたのは03年の対イラン協議で、直近ではサウジアラビアの石油施設が9月にドローン攻撃され、イランによる攻撃が疑われた際に、E3として自制を呼び掛ける声明が出された。

英独仏の外交資源を結束するのは、理にかなっている。3カ国はいずれも単独の力は米国や中国に及ばないが、手を組めばはるかに強大な勢力となる。ただ、3カ国の間に将来、意見の大きな相違が生じることになるかもしれない。ポピュリズムが台頭し、22年のフランス大統領選で極右候補が勝つ可能性が、低いにせよ現実としてあるという時代情勢を踏まえれば、なおさらだ。

<共通認識>

EUやNATOのような多国籍で官僚的な組織を運営するより、E3諸国間で共通認識を形成する方が簡単な場合が多いのは明らかだ。しかし、そうなれば、EUとNATOに属し、意見を聞いてもらえる体制を評価している欧州の小国は、警戒するかもしれない。

NATOは相互防衛や、欧州と域外の紛争において、多国籍の軍隊を円滑に展開できるように設計され、運営されてきた。

最近のNATO加盟国・トルコによるシリア侵攻と、モスクワとの関係強化に見られる通り、こうした多国籍集団の枠組みを健全に保つのは容易ではない。

しかし、現実としてロシアによる東欧での領土獲得の動きに対処する上で、NATOは唯一の指揮統制機構だ。ロシアは中でもバルト諸国に狙いを定めているようだが、NATOはこの地域で防衛協力を行っている。

現代の戦争、特にロシアが関与する戦争がハイブリッド化し、予想不能になっていることを踏まえると、このことはとりわけ重要性を帯びる。米陸軍訓練教義コマンド・マッドシー・ネットワークが今月公表したシナリオでは、ロシア政府は人工知能(AI)を駆使した偽動画「ディープフェイク」を用い、バルト諸国のロシア語系住民の対立をあおり、兵器を使うことなく同盟を弱体化させて領土を支配する手法が指摘されている。

既存のNATO組織だけでこうした事態を防げるかは不明だが、マクロン氏が訴えているのは、同盟が既にかなり打撃を受けており、これに代わる枠組みが既に必要不可欠だ、ということのようだ。

12月のNATO首脳会議に臨むにあたり、こうした挑発的な姿勢が最善かどうかは疑問が残る。しかしながら、米国がNATOへの責任を放棄する可能性も見据え、NATOをきちんと機能させていく方法について、他の欧州諸国にも真剣に考えさせることは必要だ。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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