April 25, 2018 / 7:56 AM / 3 months ago

コラム:北朝鮮の核問題、米韓首脳の「落としどころ」

[24日 ロイター] - 過去数十年の大半において、韓国側国境付近の拡声器は、北朝鮮の市民に向けて、歌謡曲から富める自国の自動車数に関するニュースに至るまで、あらゆるプロパガンダを大音量で流してきた。

 4月24日、ゆっくりではあるが忍耐強く交渉を続ける中で、全ての当事国が不可避になりつつあると恐れていた戦争を回避する取り決めを米朝韓は描きつつある。写真中央は、北朝鮮の指導者、金正恩氏。平壌で撮影。KCNAが2月提供(2018年 ロイター)

だが韓国は23日、それを停止した。いちかばちかの「外交ダンス」に向けた最新の措置である。

北朝鮮の指導者、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長とトランプ米大統領の米朝首脳会談を方向づけることになる27日の南北首脳会談を控え、この措置には単なる象徴以上の意味がある。ゆっくりではあるが忍耐強く交渉を続ける中で、全ての当事国が不可避になりつつあると恐れていた戦争を回避する取り決めを米朝韓は描きつつある。

こうした努力が成功するか、金氏が本当に核を放棄するかは依然として不明だ。

北朝鮮政府は外部の世界に激しい被害妄想を抱いており、外部の危険から身を守るには核兵器を含む軍事力しかないとずっと考えてきた。最近の同国核開発の進歩に米国が大いに警戒感を高め、軍事行動のリスクが生じた。外交を生かし続けてきたのは韓国の巧妙な力技だけだったが、今それが、実を結びつつあるのかもしれない。

北朝鮮は21日、自国の核兵器開発の目標を達成したため、もはや核実験や大陸間弾道ミサイル発射実験は必要ないと表明した。北朝鮮は米国本土を確実に攻撃可能な能力をまだ有しておらず、米国による軍事行動の可能性が北朝鮮から譲歩を引き出したと、米当局者や専門家はみている。北朝鮮はすでに隣国を破壊するのに十分な能力を備えている。それで十分だと考えているのかもしれない。あるいは、ただ時間を稼いでいるだけかもしれない。

エスカレートする状況を一時止めただけでも外交的な勝利と言えるだろう。北朝鮮がミサイル実験やサイバー攻撃を行い、平昌冬季五輪を利用して緊張を高めるかもしれないという憶測が広がったのは、ついこの1月のことだった。核・ミサイル実験を複数回実施し、異母兄の金正男(キム・ジョンナム)氏暗殺疑惑が浮上した昨年は、緊張がエスカレートする一方に見えた。

しかし今年1月以降、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は、まずは五輪を利用し、それから南北間で協議を行うという約束を行い、単調ながらも継続的な対話の環境を醸成してきた。以降、北朝鮮は一度も実験を実施していない。

非武装地帯で27日に行われる南北首脳会談は、モンゴルやスイスなどさまざまな場所が開催地候補に挙がっている米朝首脳会談に先駆けて行われる。金正恩氏と文在寅氏が会うのはこれが初めてであり、1953年に朝鮮戦争が休戦となって以降、南北首脳による会談が行われるのは今回でたったの3度目である。

一時的な休戦状態から脱却し正式な平和条約を結ぶことは、文政権の長期目標の1つである。金王朝の転覆をはかろうとする短期的あるいは長期的な野望を米韓のどちらも抱いてはいないということを、文政権は北朝鮮に納得させる必要がある。それこそがまさに、宣伝放送(北朝鮮兵士に脱北することをあからさまに奨励していた)をやめることの意義の1つである。

多くの人が葛藤や違和感を覚えたとしても、自身の残虐な独裁政体が安全であると金氏に思わせることが、結局は、平和をもたらす一助となるかもしれない。とはいえ、韓国の駐留米軍撤退といった一部の問題が、議論の対象となりえないことはほぼ間違いない。

 4月24日、ゆっくりではあるが忍耐強く交渉を続ける中で、全ての当事国が不可避になりつつあると恐れていた戦争を回避する取り決めを米朝韓は描きつつある。写真は北朝鮮の指導者、金正恩氏(左)とトランプ米大統領。写真左は平壌で撮影。同右は米フロリダ州で撮影(2018年 ロイター/KCNA handout via Reuters & Kevin Lamarque)

全ての当事国が非常に異なる思惑を抱いている。

トランプ米大統領は昨年の韓国訪問で、北朝鮮の態度を軟化させる手段として南北を統一するという野心を捨てるよう韓国側に示唆したと伝えられている。差し当たり、北朝鮮も韓国も統一の目標を下ろしていないが、相いれない政治体制を1つにするために必要な妥協を両国が検討すると考える向きは少ない。

北朝鮮の唯一の同盟国であり、朝鮮半島問題で中心的役割を担う中国にとっても、「1つのコリア」は受け入れがたい。

裏の外交ルートが今、目に見えるようになっている。

トランプ米大統領は先週、中央情報局(CIA)長官で次期国務長官のポンペオ氏が、今月に平壌を訪れ、米朝首脳会談の地ならしを行っていたことを明らかにした。米当局者によると、同訪問は、韓国国家情報院の徐薫(ソ・フン)院長と北朝鮮・朝鮮労働党中央委員会の金英哲(キム・ヨンチョル)副委員長がお膳立てしたもので、その目的は非核化について金正恩氏が真剣に協議する用意があるかを見極めることだったという。

非核化の可能性は依然低いと、米専門家の大半は考えている。自発的に核開発や他の大量破壊兵器を放棄した国は、南アフリカやイラク、リビアやソ連崩壊後のウクライナなど、ごくわずかだ。ウクライナは、英米の仲介で、自国に残された核兵器をロシアに移送するのと引き換えに自国の主権や安全を保障する覚書に署名した。イラクとリビアは米軍主導による政権交代を経験し、ウクライナはロシアからの一層の脅しと攻撃にさらされている。

対北朝鮮制裁の大幅な緩和には核施設の大規模破壊が必要だと、米当局者は言う。とはいえ、実験や兵器開発を終結させ、米本土への脅威を回避するということで米国政府が妥協する可能性も残されている。

通常兵器で十分に攻撃される範囲にあり、数時間のうちに何万人もの犠牲者が出かねないと米専門家が指摘する韓国も、米国と足並みをそろえる可能性が高い。同じく攻撃範囲内にある日本はより慎重であり、先週の日米首脳会談ではこのことが主な議題となった。日本政府は、米韓による外交努力に反対できないと認識している。それ故、日本は現在、北朝鮮と直接対話する方向で動いている。

関係国は互いに信頼し合っているとは言いがたい。予定されている一連の首脳会談は前向きな一歩であり、直ちに戦争が起きる可能性を大きく引き下げるものだ。だがうまくいかなければ(その可能性は全くあるのだが)、待ち受けるのは悲惨な結末かもしれない。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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 4月24日、ゆっくりではあるが忍耐強く交渉を続ける中で、全ての当事国が不可避になりつつあると恐れていた戦争を回避する取り決めを米朝韓は描きつつある。写真は、北朝鮮の指導者、金正恩氏。KCNAが昨年9月提供(2018年 ロイター)

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