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コラム:北朝鮮の核問題、トランプ政権下で最悪の事態も
2017年2月15日 / 02:40 / 9ヶ月後

コラム:北朝鮮の核問題、トランプ政権下で最悪の事態も

[13日 ロイター] - ジョージ・W・ブッシュ元米大統領は、結局は存在しなかった大量破壊兵器を保有しているとしてイラクに侵攻した。オバマ前大統領は、イラクによる原子力爆弾の開発を阻止するため、サイバー兵器と制裁を用いた。

 2月13日、現在、北朝鮮と対峙するトランプ大統領だが、同国の核・ミサイル開発を制止することは無理だと判明するかもしれない。写真中央は、北朝鮮の指導者、金正恩・朝鮮労働党委員長。KCNA提供(2017年 ロイター/Handout via Reuters)

現在、北朝鮮と対峙するトランプ大統領だが、同国の核・ミサイル開発を制止することは無理だと判明するかもしれない。それは同大統領にとって最初の、そして恐らく決定的な国際危機となる可能性がある。

歴代大統領がうまく対処できなかった北朝鮮の核問題は、今やトランプ大統領の手に委ねられた。その間、北朝鮮は、破壊困難あるいは迎撃困難な、かつてないほど危険な兵器システムの開発を続けてきた。

トルーマン大統領の時代から、北朝鮮は米国にとって悩みの種だった。朝鮮戦争では、核対立を招く危機寸前にまで迫った。マッカーサー元帥が中国と北朝鮮の敵軍に対し核兵器を使うことを、ホワイトハウスは阻止したのだった。現指導者である金正恩・朝鮮労働党委員長の下で、北朝鮮はその当時以来、最も危険なポイントに到達している。

ワシントンの外交政策専門家らは、多くの点でトランプ大統領とは意見を異にする。大統領は間違った移民政策を取り、ロシアには手ぬるく、中国に対しては危険なほど強硬姿勢に出ていると、彼らは考えている。一方、北朝鮮に関しては、現実的な解決策がないことから、専門家も大統領も同じ穴のむじなである。

これは、誰もが来ることを予想していた危機だ。日本の安倍晋三首相が、大統領就任前のトランプ氏を訪れるなど、ご機嫌取りに必死なのもそのためだ。北朝鮮が12日に新型の中距離弾道ミサイル発射実験を実施したとき、安倍首相は再びトランプ氏と共に過ごしていた。今回は、フロリダ州にある同氏の別荘「マール・ア・ラーゴ」に滞在し、ゴルフをしながら親睦を深めていた。

また、マティス国防長官が最初の公式訪問先として日本と韓国を選んだことも北朝鮮が理由である。トランプ氏が大統領選で何を言ったとしても、マティス長官の最優先事項は、米国がとりわけ日本と韓国と共にあることを両国に安心させることだった。

北朝鮮が初めて核実験を行ったのは2006年。そこまで到達した唯一のイラク型、あるいはイラン型の「ならず者国家」となった。以来、核爆弾だけでなく、それを搭載するミサイルの開発を続けている。

北朝鮮の最終目標は、米国本土を攻撃する能力を有することだ。トランプ氏はツイッターで「起こらない」と強弁するが、今のところ、それを阻止する計画を誰かが持っている兆候はほとんどない。

自殺行為となるような一方的な攻撃を仕掛けることが北朝鮮の野望ではない。狙いは、イラクやリビアのような「政権交代」を防ぐための抑止力を手に入れることだ。

そのためにはまず、少なくとも日本を射程圏内に収める地上配備型の核弾頭搭載ロケットが複数必要だ。実験はこうした目的の実現性を高める。

やや長期的には、北朝鮮は通常動力型潜水艦の小艦隊にロケットと弾頭を装備する能力獲得を目指すだろう。これらは沖合や山岳地帯の海岸線に配備できるため、追跡したり破壊したりするのが困難である。また、位置の特定が予測不可能であることから、ロケットが発射された場合の迎撃が一段と困難となる。

米国の行動が、そうした野望をひどく妨げたということはない。イラク戦争後、北朝鮮の核開発を減速させようと当時のブッシュ大統領が行った金融支援や、制裁強化による脅しは、ある程度は有効だった。北朝鮮は、寧辺核施設の冷却塔を破壊さえした。

それでも北朝鮮が2006年に実施した核実験を阻むには十分ではなかった。父の金正日総書記が死去し、2011年に金正恩氏が指導者となって以来、同国は核の野望にひたすらまい進している。

 2月13日、現在、北朝鮮と対峙するトランプ大統領だが、同国の核・ミサイル開発を制止することは無理だと判明するかもしれない。写真は、12日に行われた新型の中距離弾道ミサイル発射実験。KCNA提供(2017年 ロイター/Handout via Reuters)

イランの核開発プログラムに対して用いたコンピューターウイルス「スタックスネット」の成功を受け、オバマ前政権は北朝鮮に対し同様の策を試したとみられるが、イランほど成功したとは言えないようだ。そのような秘密工作が続けられている可能性はあるが、十分ではないかもしれない。

1990年代のクリントン大統領に続くこれまでの大統領は、空爆やミサイル攻撃のような直接行動を取る選択肢を提示されてきた。だが、そうした手段がどれくらい成功するかは分からない。米国と韓国の標的を攻撃するのに、とりわけ核を用いない従来のミサイルを使用して応戦する方法に北朝鮮は事欠かない。人口1000万人以上の韓国首都ソウルは、北朝鮮の機関砲の射程距離内にある。

米国が今検討できる選択肢の1つは、今後起こり得る北朝鮮のミサイル発射実験を、同地域に配備する弾道弾迎撃ミサイルの一部で阻止しようとすることだ。12日の発射実験では実現しなかったが、それは今回の実験が北朝鮮の領土のほぼ上空かその付近という比較的短い距離であったことが一因だろう。

長距離ミサイルを迎撃しようとする方が簡単だが、それが成功する保証はまったくない。失敗すれば、基本的に米国は北朝鮮のミサイルを迎撃する能力がないと宣伝する羽目に陥り、地域の不安を高めることになりかねない。

また、いかなる米大統領にとっても、迎撃失敗がもたらす政治的影響は計り知れない。

そうなると、中国を通じて圧力をかけるというような外交的選択肢が残される。

中国の経済支援は北朝鮮の存続に不可欠であり、トランプ大統領と中国の習近平国家主席との初の電話会談で、北朝鮮問題が話し合われた可能性は高い。とはいえ中国は、北朝鮮の崩壊を招き、韓国軍や米軍兵士が自国の国境沿いに配備される事態を生じかねない、どんな行動にも消極的である。

中国はまた、北朝鮮を弱体化させるために同国が何かをすれば、体制の崩壊を早め、核戦力で反撃に出てくる危険をもたらす可能性があるとずっと主張してきた。

米国までは到達できないとしても、北朝鮮にはさまざまな標的となり得る場所がある。そのなかには、韓国だけでなく、グアムにある米軍基地なども含まれる。とりわけ第2次世界大戦での残虐行為に対する怒りが消えていないことから、日本が標的になる可能性が最も高い、と多くの専門家は考えている。

そうした脅威はやがて、日本を独自の核兵器保有へと向かわせるかもしれない。そうなれば中国は反発し、地域が一段と不安定化することはほぼ間違いないだろう。

「取引という芸術」の達人だと自身を捉えている節のあるトランプ大統領は、北朝鮮の指導者と会う可能性を示している。大統領にとって問題なのは、行うべき取引がないかもしれないことだ。このような状況は、危険を増すばかりである。恐らくは、本当に激変するような何かが起きるまでは。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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