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コラム:年初に顕在化した3つの変化、日銀の変容は日本株に重荷=藤戸則弘氏

[東京 19日] - 年明け早々にマーケットで「3つの変化」が顕在化している。「第1の変化」は、中国経済の先行き回復を評価する動きだ。

 年明け早々にマーケットで「3つの変化」が顕在化している。藤戸則弘氏のコラム。写真は2013年6月、都内で株価ボードを見る人(2023年 ロイター/Issei Kato)

短期的には、コロナ規制解除によって、中国経済には下振れ圧力がかかっている。中国当局の公式発表では、昨年12月8日から今年1月12日の間に、コロナ感染による死亡者は5万9938人と急増。北京大学は「1月11日時点で中国全土の感染者は約9億人」との推計値を発表した。

コロナ感染の急拡大を受けて、国家統計局発表の12月PMI(購買担当者景気指数)は製造業が47.0、非製造業が41.6、総合が42.6と、景況判断の分岐点である50を大きく下回っている。

<集団免疫後の中国経済、市場は急回復期待>

しかし、欧米や東南アジアの例を見ても、新型コロナウィルス感染は、急速な拡大の後に「集団免疫」を獲得し、やがてピークアウトから鎮静化の経緯をたどることが確認されている。

株式市場は先行性を有するだけに、むしろ相場的には感染まん延後の経済ノーマル化を織り込み始めている。上海総合指数は昨年10月安値2855ポイントから、足元では1月16日高値3251ポイントまで12.7%切り返す局面があった。

また、特に顕著なのは非鉄金属相場の反騰である。ロンドン金属取引所(LME)の銅先物価格は、中国経済の減速を背景に、昨年3月の史上最高値1メトリックトン=1万0845ドルから同7月安値6955ドルまで35.9%下落する局面があった。その後は安値もみ合いが続いたが、コロナ規制解除後に反発に転じ、今年1月18日には一時、高値9550.5ドルまで37.3%切り返している。

アルミ先物等も同様な動きであり、非鉄金属の世界需要の約半分は中国が握っているだけに、先行きでの回復を買う動きが顕著だ。

鉄鉱石・原料炭や中国鋼材価格も全く同様である。豪州鉄鉱石の中国向け輸出スポット価格は、昨年11月1日安値1メトリックトン=80.5ドルから今年1月13日高値127.5ドルまで58.4%の上昇となった。

中国ホットコイル(熱延鋼板)価格も復調気配で、こうした動きは世界の素材株にも波及しており、非鉄金属、鉄鋼、鉱山メジャーといった代表的な関連株は、軒並み急反発となっている。

また、中国の個人消費関連としての性格が強い米コーヒー・チェーン店、靴、高級化粧品や、フランスの高級ブランド品関連株も軒並み反発している。

つまり、経済協力開発機構(OECⅮ)、国際通貨基金(IMF)、世界銀行などが、いずれも厳しい景気減速・後退に懸念を表明しているにもかかわらず、典型的な景気敏感株、それも中国関連の色彩が濃い銘柄が軒並み反発傾向にある。

<米長期金利急低下の波及効果>

「第2の変化」は、米長期金利の低下傾向である。12月米連邦公開市場委員会(FOMC)で、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が利上げ継続を強く示唆したこともあり、米10年国債利回りは昨年12月30日に3.903%と、再び4.0%の大台をうかがう動きを見せた。

しかし、12月米雇用統計、12月米消費者物価指数(CPI)という2つの重要なイベントを通過した後に、今年1月18日には一時、3.366%と再び低下傾向をたどっている。

まず、12月米雇用統計だが、非農業部門雇用者数は前月比22.3万人増、失業率も3.5%に低下し、依然としてタイトな雇用を裏付ける強い内容だった。ところが、市場が注目する平均時給は、前年比4.6%の伸びで、11月米雇用統計の速報値が5.1%(その後に4.8%へ下方修正)だったこともあり、予想外の低下との見方が強まった。投資家が懸念していた「賃金インフレ」の様相が、徐々に緩和し始めたことを示唆している。

12月CPIは前年比で総合が6.5%、コアが5.7%の伸びとなり、ほぼ市場の事前予測通りだった。内訳を見ると、やはりガソリンをはじめとするエネルギー価格の下落が大きく、中古車価格の下落や食品の上昇鈍化も、インフレ率を軟化させた要因である。

コア指数が前月比0.3%の伸びで、明瞭な鈍化とは言い難い点に注意を要するが、CPI総合のピークは昨年6月の前年比9.1%であり、12月の6.5%は「鈍化傾向を確認した」との評価も可能と思われる。

パウエル議長以下の米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーは、鈍化傾向を示した10月と11月のCPI発表後も「好ましい傾向ではあるが、依然としてインフレの水準が高過ぎる。さらなるインフレ鈍化の証拠が必要だ」と慎重姿勢を繰り返して来た。

しかし、12月米雇用統計における平均時給の軟化、12月CPIの鈍化傾向継続と、「かなりの証拠」が集まってきたと言える状況だ。

これを受けて、FOMCメンバーの発言も「この先は0.25%の利上げが適切だ」、「今後はより慎重に利上げのかじを切るのが理にかなう」、「利上げの停止水準に近づいている」というように、引き締め策軟化の兆候が見え始めている。

フェデラルファンド・レート(短期の政策金利)先物は「2月0.25%利上げは確実、0.5%利上げの確率はわずか7.2%」、「3月0.25%利上げ確率は71.3%」と読んでいる。

市場は、FRBの利上げが「0.25%X2回」で打ち止めと見始めており、インプライド翌日物金利のピークも6月4.861%と、「利上げ停止」を示唆している(1月18日時点)。つまり、「利上げ幅縮小」から「利上げ停止」への移行だ。

米長期金利低下で最も恩恵を受けたのが、昨年来厳しい調整が続いていたハイテク株である。市場は、景気減速・後退懸念からIT設備投資やデジタル広告の急減を見込み、バリュエーションに割高感がある半導体、ソフトウェア、ハイテク機器、SNS、Eコマース等、ハイテク株は大きく売り込まれてきた。しかし、年明けから時ならぬ反発を見せている。

<OISが織り込む日銀の利上げ>

「第3の変化」は、日銀超緩和策の変容である。昨年12月のイールドカーブ・コントロール政策(YCC)における変動幅拡大が皮切りとなって、日銀は「金融政策のノーマル化」へかじを切ったとの見方が市場でも徐々に増加していた。日本の新発10年国債利回りは、1月13日に一時0.545%まで上昇する局面があった。

しかし、1月決定会合では、物価・成長率見通しを若干修正し、共通担保資金供給オペの拡充はあったものの、金融政策の大枠は現状維持であった。ヘッジファンド等の外国人投資家の中には、YCCの変動幅再拡大やYCCの大枠自体を撤廃するとの見方もあっただけに、1月会合後には長期金利が急低下し、為替相場も円安方向に振れ、日経平均も大幅高となった。投機的な長期債売り・ドル売り・日経平均売りの思惑的なポジションが巻き戻された可能性が濃厚である。

ただし、オーバーナイト・インデックス・スワップのインプライド翌日物金利は、依然として利上げ(0.1%幅)確率について、新総裁による4月の初会合で40.6%、6月会合で42.9%と読んでいる。2023年末12月会合時のインプライド翌日物金利は0.246%で、合計約2.6回の利上げを織り込んでいる(1月18日時点)。

最も価格変動の激しいスワップであることを留意する必要はあるが、先物・オプション・スワップを多用する海外ヘッジファンドは、依然としてYCCの撤廃はもちろんだが、短期政策金利のマイナス金利脱却を視野に置いている。

為替相場にしても、円高傾向が終了したと見るのは時期尚早と思われる。FRBが、「利上げ幅縮小」から「利上げ停止」も視野に入る一方で、日銀が緩慢ながらも「金融政策のノーマル化」に向かうと見れば、ドル/円相場に円高バイアスが残る可能性は想定し得る。

1月13日には1ドル=127.46円まで円高が進行した。1月日銀会合後には131円台まで急速に戻す局面があったが、円安方向へのブレは一時的で、その後再び128円台に反転している。

今後も、上下に振幅の大きな展開が想定されるが、日銀による昨年12月の政策変更が、過去10年間にわたる非伝統的超緩和策是正の第一歩と見れば、まだ道程は長いようだ。

「第1の変化」、「第2の変化」が、欧米や新興国全般の株価上昇の動機づけとなることは、年初来の株式相場が端的に物語っている。

一方、「第3の変化」は、昨年の日本株が欧米株をアウトパフォームした日銀超緩和策の墨守という最大要因が、本質的に変容することを示唆している。それに連動して円安傾向のはく落となれば、輸出関連やグローバル企業の業績下方修正がリスクとして意識される展開となろう。

今年の景気や物価動向、FRB・日銀の金融政策、長期金利推移、為替動向にしても、依然として不確実性が極めて高い。新年早々に顕在化した「3つの変化」が単なる一時的な現象で終わるのか、あるいは中長期的なトレンド転換となるのかは、今後時間をかけて検証する必要があろう。しかし、今年の相場も、昨年同様にボラタイルな展開は避けられそうもないと想定している。

編集:田巻一彦

*本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載された内容です。筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*藤戸則弘氏は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券 参与・チーフ投資ストラテジスト。1979年早稲田大学卒業。1999年に国際証券入社。その後、三菱証券、三菱UFJ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券で投資情報部に在籍。2018年7月から現職。国際証券入社前、約20年にわたって生命保険会社で資産運用業務に従事し、ファンド・マネージャー、年金資金のポートフォリオ・マネ ージャー、企画担当を経験。バイ・サイドの視点による説得力のある分析には定評がある。

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