December 15, 2018 / 12:25 AM / 3 months ago

コラム:原油と株の急落、市場は何を叫んでいるのか

[ロンドン 12日 ロイター] - 騒々しい電車の中では、声を張り上げなければ相手に届かない。こうした事実は、最近の原油価格の急落と、株式市場で1日のうちに生じる大きな変動を理解する助けとなる。

 12月12日、実質的に、原油価格のボラティリティーは、実際の価格とは違う形で原油市場に規律を与えている。写真は石油ポンプ。パリ近郊で11月撮影(2018年 ロイター/Christian Hartmann)

少なくとも2014年ごろには石油市場は驚くほど安定していた。

2010年12月23日の米国産標準油種(WTI)原油先物は、2008年の金融危機以来となる1バレル=90ドルを上回り、その水準を維持した。WTI価格がこの水準を再び下回ったのは、2014年10月7日である。その間の954営業日にわたり、原油価格は終値で平均1バレル=96ドルだった。この平均から20%以上の変動を見せたのは1日だけである。

価格をこれだけ安定させるには、供給側に規律が求められる。価格上昇が始まったら蛇口を開き、在庫が増え始めたら蛇口を絞る。2010年代の初め、サウジアラビアとその同盟国にはこうした規律を維持するだけの影響力があり、市場が小声でささやくだけでバランスが保たれていた。

だが昨今では、石油市場はメガフォンを使って叫んでいるようだ。わずか2カ月の間で31%も急落したのは、その最も極端な例にすぎない。先ほどと同じく直近の954営業日という期間で、最近のWTI価格を見ると平均1バレル=52ドルであり、これはほぼ現在の水準と同じだ。だが、その間の価格は大きく変動した。この平均から20%以上の乖離(かいり)を示した日数はほぼ3分の1に及んでいる。

何が起きているのかを理解するための第一歩は、コモディティー価格に関する従来の経済理論を忘れることだ。ボラティリティーの増大も、最近の価格急落も、供給コストの変化への反応ではない。そうした変化はあまりにも緩慢なので、日次の、それどころか月次の大きな価格変動を生み出すにさえ、とうてい至らないのである。

また価格の乱高下は、供給・需要の量的な変動に対する合理的な反応とはとうてい言いがたい。どちらも相対的にゆっくり変化している。過去5年間、供給・需要のいずれを見ても、年間の変化は平均2%以下である。さらに、石油の在庫には十分な柔軟性があり、何か想定外の要素があっても吸収できる。

同じ過去5年間に年間の平均価格が22%も変動したとすれば、何か別の理由があるはずだ。投機や金融コストといったテクニカルな要因も作用している。

だが、最も頼りになるのは地政学的な説明だ。世界全体、そして主要産油諸国であまりにも多くの混乱が生じているせいで、わずかな減産を促すためにも大幅な価格下落が必要になっている。

混乱のすべてを数え上げることは難しい。イランとベネズエラの生産量が政治的混乱と制裁によって抑制されているとはいえ、サウジ、ロシア、イラクといった原油輸出への依存度の高い産油国の大半では、国内からのプレッシャーに直面する独裁的な国家指導者が、減産よりも増産の誘惑に駆られている。彼らは市場からのメッセージを聞きたがらない。

主要産油国の中で最も市場への反応が鈍いのが米国だ。キャッシュフローがプラスになっている限り、市場が悲鳴を上げ始めても、米国の生産者は基本的に耳をふさいだままだ。したがって、2018年1─8月の米生産量は前年同期比で16%増だった。今や世界全体の生産量の14%を占める十分に大規模な産油国である米国が、それなりに大きなプレッシャーを加えたことで、他国は減産を強いられた。

最近の価格急落は、3歳児が注意をひくために泣き叫ぶのと同じである。ウンザリした親たちが思い知らされているように、こうした幼児の戦略はたいていの場合うまくいく。ロシアのプーチン大統領とサウジのムハンマド皇太子は小幅の減産に合意した。

実質的に、原油価格のボラティリティーは、実際の価格とは違う形で原油市場に規律を与えている。原油価格が現在の1バレル=53ドルより大幅に低い水準に落ち着いてからも、キャッシュフローがマイナスになることでグローバルな生産量が大きく削減されるまでには、非常に長い時間を要することになるだろう。方向は逆ではあるが、金融危機以前にも事情は同じだった。原油価格が1バレル=140ドルだったころ、価格を下落させるほど需要が落ち込むには時間がかかったのである。

その後、金融危機により原油市場の力学は変わった。価格が急落した後、生産量は若干減少した。そして今、価格変動そのものが需給の調整を司るようになった。産油国の財政に与えるショックの急激さが、諸国の関心を集中させている。

価格水準よりも価格変動の方が重要になっているのは原油市場だけではない。

たとえば株式市場においても、実際の株価はほとんど経済的な影響を及ぼさない。上場企業が新株発行によって調達する資金の額は、資本投資のうちわずかな部分しか占めないからだ。だが株価の変動は、それも急速で大幅な場合は特に、投資家心理の揺れを示すかなり正確な指標となっている。

産油量を維持しようと懸命になる石油生産者と同様に、中央銀行、金融機関、政治家たちが市場からのメッセージを聞きたがるとは限らない。非常に多くの国の現状に見るように、政治が特に不透明である場合、指導者らは騒音に負けないように号令をかけようとする傾向を強める。

ここ数週間の株価急落から推測すると、金融システムがひどく大きな叫び声を上げようとしているのかもしれない。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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