February 8, 2018 / 2:24 AM / 11 days ago

コラム:平昌五輪、「2つのコリア」の分岐点か

Andray Abrahamian

[6日 ロイター] - 「世界中にいる全ての朝鮮人は統一を夢見ており、それに向かって努力している」──。3年前に北朝鮮の首都・平壌を訪問した際に会った女性は、党の公式的見解に従い、こう語った。

「本当はこんなこと言いたくはないが」と筆者は慎重に切り出してみた。北朝鮮人が韓国に対して使う言葉を借用し、「私は『下にある村』で過ごしたことがあるが、若者たちは概して統一に関心がない。彼らは朝鮮を分かれた2つの国として見ており、再統一する必要があるとは考えていない」と語った。

思うに、彼女はこの時初めてそのような考えを聞いたのだろう。口ごもり、話題を変えた。

韓国・平昌で9日から開幕する冬季五輪の持続的効果は、北朝鮮にいる彼女の同胞たち、そして韓国の左派たちにそうしたメッセージを伝えるかもしれない。北朝鮮の韓国に対する魅力攻勢は今後も有効かもしれないが、韓国の若者は統一について、さほど気にかけてはいない。

北朝鮮は長い間、米国との同盟を支持する韓国保守派を批判する一方、支援を得る手段として「朝鮮民族社会」の団結を南側に訴えてきた。とりわけ2000年代、「太陽政策」を進める韓国に対し、民族と家族というつながりを持ち出して感情に訴えかけることは、「南側の同胞たちよ、私たちはあなた方と共にある。だが、米国はそれを邪魔している」というメッセージを伝える方法の1つだった。

団結心を呼び起こそうとする最近の訴えは、今年に入って、北朝鮮と韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権を、五輪を中心に数々の交流や融和政策へと向かわせた。その中には、アイスホッケー女子の南北合同チームや、北朝鮮の馬息嶺スキー場で行われる南北合同スキー練習、応援団、北朝鮮のテコンドー演武団や楽団演奏などが含まれている。

こうした準備が行われる中、文大統領の支持率はどう推移したのだろうか。ギャラップ・コリアによると、年初に73%あった支持率は1月半ばに67%へ低下。1月末にはさらに64%にまで下がった。支持率低下は特に若者の間で顕著であり、五輪の南北合同チーム結成で挽回しようとしたが、結果として最大の不名誉が生じる結果となった。

言うまでもなく、支持率低下は壊滅的なものではない。仮想通貨取引の規制強化に動く文氏の取り組みも、原因の一部である。このことはまた、韓国でビットコイントレーダーの最大人口を占める若者が、いかに文氏の主要公約である「クリーンなガバナンスと経済機会」に関心が高いかを示す証左と言える。

とはいえ、少なくとも支持率低下の一因が、五輪に北朝鮮を参加させたいという文大統領の熱意にあることは明らかである。アイスホッケー女子で南北合同チームを結成し、北朝鮮選手12人を加えるという決定に対し、ある世論調査では70%が支持しないと答えた。一方、別の調査では賛否が割れており、反対が44.1%、賛成が42.5%だった。

 2月6日、平昌五輪が、2つのコリアが互いをどう理解するかと言う点で、重要な分岐点となるだろうことは、すでに何となく見えている。写真は、金正恩氏の写真を破る韓国保守系の市民団体メンバー。東海で撮影(2018年 ロイター/Kim Hong-Ji)

これは、韓国若年層が、北朝鮮に対して無関心か、あるいは非常に敵対的であるかのどちらかであるという傾向を示している。韓国のシンクタンク、峨山政策研究院が2015年に発表した研究は、過去5年間において、「若者の北朝鮮離れは、世論調査のデータにおいて恐らく最も重要な繰り返されるテーマだ」と指摘。「このような集団は同性婚のような話題には明らかに進歩的な態度を見せる一方、安全保障問題においては保守的である」としている。

確かに、昨年8月に米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)を導入した際、文氏の高支持率が下がることはなかった。導入について、韓国人の72%が支持すると回答した。

北朝鮮に関する世論調査の信頼性には常に懸念がつきまとうが、こうした結果は他の観察とも一致する。韓国の若い世代は、タカ派的だと推察できる。なぜなら、彼らの北朝鮮に対する見方は、46人が犠牲となった2010年の天安沈没事件や延坪島砲撃事件、エスカレートする北朝鮮の核・ミサイル開発を巡って、韓国が北朝鮮を非難していた時期に形成され、影響を受けている可能性があるからだ。

さらに言えば、グローバル化と困難な経済状況下での競争社会が、世界における自らの認識と位置づけを彼らに思い知らせている。多くの点において、20代の彼らの生活は、親世代が20代の時よりも厳しいことは明白だ。自身の経済的苦難を考えれば、北朝鮮に対する経済支援をのんきに支持することなどできないだろう。若者の多くは、自国選手が苦労して手に入れたアイスホッケー女子の登録枠を、北朝鮮選手に与えることにも賛成していない。

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リベラルで進歩的な価値観も要因である。留学したり海外旅行に行ったりする若者が増えている。外国メディアに触れ、異人種間の結婚も当たり前と見る。血統や純血、アイデンティティーに対する見方は変化している。親世代とは異なり、北朝鮮出身の人を直接知らない。朝鮮半島の分断は政治的だが、個人的なことではない。北朝鮮が「機能不全」であることを考えれば、若者たちが北朝鮮との統一に魅力を感じなくても不思議ではない。

北朝鮮が先月、団結と統一を促進するため「全ての朝鮮人」と呼びかけたが、韓国の若者はそれに応える気はなさそうだ。それでも、北朝鮮人が自国を訪れているのを見れば、気になるだろう。だが、2000年代初めの時のように、心奪われ、希望にあふれることはないだろう。

文氏は、民主的かつ実用主義的な政治家である。もし国民感情の先を行き過ぎたと思うなら、修正するだろう。

北朝鮮がどう反応するかは、また別の問題だ。他国を往来したりインターネットを利用したりできる一部のエリート層は、すでに韓国の若者の傾向を分かっている。だが、一部の、とくに年配の政策決定者たちは恐らく理解していないだろう。過去何十年にもわたって成功してきた外交攻勢による影響力が与えられないと分かった時、北朝鮮は発信するメッセージを修正してくるだろうか。

北朝鮮が南側の同胞に向かって、統一を訴えることをあきらめ、共存のメッセージにシフトすることはあり得る話だ。しかし、北朝鮮がもう存在しない感情に訴えようとして、もはや効果のないプロパガンダに固執することもあり得るだろう。どちらにせよ、北朝鮮が核兵器実験と挑発という悪循環を続ける限り、そのようなアプローチは成功しそうもない。

北朝鮮エリート層の政策決定者の不透明さが、彼らの反応を予想するのを困難にしている。だが、平昌五輪が、2つのコリアが互いをどう理解するかと言う点で、重要な分岐点となるだろうことは、すでに何となく見えている。

*筆者は米パシフィック・フォーラム戦略国際問題研究所(CSIS)のリサーチフェロー。著書に「North Korea and Myanmar: Divergent Paths」がある。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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