April 8, 2018 / 10:51 PM / 3 months ago

コラム:「一帯一路」は失敗か、それともスーパーサイクル到来か

[香港 4日 ロイター] - 中国のシルクロード経済圏構想「一帯一路」は、誰もが耳にしたことはあるが、それをちゃんと理解していると胸を張って言える人が非常に少ない珍しい存在だ。

 4月4日、中国のシルクロード経済圏構想「一帯一路」は、誰もが耳にしたことはあるが、それをちゃんと理解していると胸を張って言える人が非常に少ない珍しい存在だ。写真は、昨年5月の一帯一路フォーラムに出席した中国の習近平国家主席。北京で代表撮影(2018年 ロイター)

これは、香港で3日開催された一帯一路会議(マインズ・アンド・マネー主催)でも顕著だった。会議では、一帯一路がコモディティーの新たなスーパーサイクルの原動力となるといった意見が出る一方、中国政府のイメージと影響力を押し上げることを狙ったマーケティングのスローガンにすぎないという声も聞かれた。

一帯一路を、アジアやアフリカ、そして欧州の「マーシャルプラン(復興計画)」のようなものと捉えている人たちが根拠とするのは、第2次世界大戦後の欧州を復興するため米国が推進したマーシャルプランの規模をかすませるほど印象的な数字の数々だ。

一帯一路の目的は、世界人口の65%、世界経済の約40%を占める少なくとも70カ国で、数多くのインフラ・エネルギー計画を効果的に進めることだ。

また、こうした計画に必要な原材料を供給する炭鉱や石油・ガス田の開発も、習近平国家主席の経済プログラムの中で最も重要な位置を占めている。

一帯一路は、発展途上国の成長を加速させ、貧困から脱却させる手段であると支持者は考えている。

アジア諸国は向こう数年間、インフラ投資に年間1.7兆ドル(約182兆円)投じる必要があると、コンサルティング会社セドラス・グループのラニ・ジャーカス会長は前出の香港での会議で語った。この規模は、現在の投資ペースの2倍以上にあたる。

コモディティー投資家や生産者を沸かせているのは、これら巨大な数字だ。そのような投資規模であれば、ばく大な量の鉄鉱石や石炭、銅や亜鉛などの金属が必要となるからだ。

<一帯一路のトップ5を挙げよ>

しかし、こうした壮大なビジョンの響きはとても良い反面、実際には、多くが期待するほど大きなものではない可能性がある。

一帯一路に関する会議やイベントで、筆者は参加者に、同構想のトップ5に入るプロジェクトについて、何を知っているのか、また、それらプロジェクトのコモディティー需要はどれくらいか、といった質問を投げかけてみた。

ほとんどの人は、ここでつまづいてしまう。だが心に留めておいてほしいのは、このようなイベントの参加者が生産者やトレーダー、バイヤーや投資家など、資源セクターに属する人たちだということだ。

はっきりしているのは、一帯一路が現在、高度な政治戦略となっていることだ。中国は一帯一路を外交手段として利用し、特にアフリカ、中央アジア、南アジア、東南アジアで、その影響力を拡大しようとしている。

 4月4日、中国のシルクロード経済圏構想「一帯一路」は、誰もが耳にしたことはあるが、それをちゃんと理解していると胸を張って言える人が非常に少ない珍しい存在だ。ケニアのボイで2016年3月撮影(2018年 ロイター/Goran Tomasevic)

アジアを通り中国と欧州をつなぐ陸路での輸送回廊の建設、あるいはアフリカでの海洋プロジェクトにおいて、協調戦略があるようには見えない。

見えてきたのは、国有企業も含め大小問わず、中国企業が投資機会を求める際に一帯一路を手段として利用していることだ。

このような機会は、一帯一路がターゲットにしている国々の発展を目指す政策主導の取り組みの一環というよりは、中国企業のニーズに応えることにいまだ重点が置かれているようである。

一帯一路の主力であるアジアインフラ投資銀行(AIIB)は2016年初め、北京でスタートしたばかりだ。したがって、AIIBに一帯一路投資の大きなけん引役を期待するのはいささか非現実的である。

AIIBのウェブサイトに掲載されているデータによれば、同行はこれまでに42億6000万ドルの融資を承認している。それほど小さな額ではないとはいえ、一帯一路の支持者が言う数兆ドル規模の投資からは程遠い。

また、不動産を除く中国のほぼ全ての対外投資は、一帯一路に関連するものとして分類されているもようだ。

そのおかげで、一帯一路は、企業がほとんど、あるいは全く協力せずに別個に実施する非関連のプロジェクト集合体としてではなく、何か意義あるものとして見えるのである。

とはいえ、一帯一路がやや場当たり的なように現在見えているからといって、今後もそうあり続けるとは限らない。

「今世紀の偉大なプロジェクトになるかもしれないし、価値のないものとなるかもしれない。だが何であれ、部外者ではいられない」と、前出の会議に参加したある投資家は一帯一路をこう表現した。

コモディティー生産者にとって重要なのは、中国が資源開発に一段と関心を強めていることだ。国内の、そして一帯一路の需要に必要だと中国は考えている。

そのような資源開発には、銅や鉄鉱石のほか、コバルト、リチウム、ニッケルといった電池に使用される金属も含まれる。

一帯一路は、本当にコモディティーの新たなスーパーサイクルの始まりなのか──。その答えは、中国が、一帯一路を単なるスローガンから、実際に成果を生む協調的な多国間構想へと変貌させることに成功すれば明らかとなるだろう。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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 4月4日、中国のシルクロード経済圏構想「一帯一路」は、誰もが耳にしたことはあるが、それをちゃんと理解していると胸を張って言える人が非常に少ない珍しい存在だ。写真は、昨年5月の一帯一路フォーラムに出席した中国の習近平国家主席。北京で代表撮影(2018年 ロイター)

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