November 19, 2015 / 5:13 AM / 4 years ago

コラム:パリ攻撃、残した手掛りが「イスラム国」の命取りに

[17日 ロイター] - もし筆者が、西欧や似たような地域に潜む戦闘的な原理主義者だったとすれば、13日のパリでの自爆攻撃の成功に大喜びしてはいられないだろう。むしろ、不安に苛まれるべきだ。

 11月17日、もし筆者が、西欧や似たような地域に潜む戦闘的な原理主義者だったとすれば、パリでの自爆攻撃の成功に大喜びしてはいられないだろう。むしろ、不安に苛まれるべきだ。写真は18日、パリ北部サンドニ地区で、急襲した同時攻撃犯の拠点近辺への立ち入りを制限する武装警官(2015年 ロイター/Benoit Tessier)

欧州各国をはじめ、多くの国の諜報機関・治安機関はすでに活動を開始している。彼らの活動は、当初の攻撃そのもので生じたよりも重大な結果をもたらすだろう。なぜなら、彼らはパリで本当のところは何が起きたのかという謎を解明したいと思っているからだ。そして、主な容疑者が身を隠していることがすでに分かっているだけに、一斉手入れの危険は刻一刻と迫っている。

逆に、筆者が普通の市民だったら(とはいってもパリ攻撃の標的はまさにそのような人々だったわけだが)、私は安心してよいだろう。どれほど大規模な捜索が実施されているかを考えれば、その理由は明らかになる。

最初、警察は犯人について何の情報もない状態で捜査に着手したが、状況は急速に変化した。犯人の1人は自爆ベルトの爆発で吹き飛んだ指から採取した指紋で特定され、その兄弟もイスラム主義者であるという情報が得られた。これで容疑者が1人。レンタカーが発見されたことでもう1人の身許が明らかになった。この種の捜査では、身許が特定された個人の近親、親戚、友人はただちに「参考人」にカウントされる。

今日のようなアグリゲーション(情報集積)、メタデータ、データマイニングの時代には、個人相互の人脈、つながりを把握することに非常に大きな関心が注がれる。米連邦政府の国家安全保障局が、監視対象とする電話の所有者の人間関係を2階層、3階層まで追跡しているのも、まさにそのためである。

パリ同時攻撃事件の捜査では、取り調べの一部はこうした人間関係の把握を目的として進められることになろう。

当局が実際の手掛りを固めていく際に、この種の追跡はいっそう重要になっていくだろう。たとえば13日にパリで殺された戦闘員は携帯電話を持っていたかもしれないし、衣服を身につけ、武器を持っていただろう。こうしたものはすべて出処を調べられる。そのなかには携帯電話のように新たな人脈を示してくれるものもある。

たとえば、攻撃で用いられた武器を考えてみよう。「イスラム国」を名乗るイスラム主義グループは、西欧に兵站・補給のネットワークを持っていない。襲撃犯は、武器をどこかで調達しなければならなかった。すると、自動小銃AK47を入手できる彼らにも利用可能な闇市場がどこにあるか、という問いが生じる。ブリュッセル郊外のモレンベークが、そうした場所の1つだ。

8月にブリュッセル─パリ間の列車において3人の米国人の若者によって阻止された襲撃事件、今年初めベルギー警察との銃撃戦、2014年5月に起きたブリュッセルにあるベルギーユダヤ博物館への攻撃など、使用された武器はどれもこのモレンベークが出処だった。犯人もこの地域に住んでいた。パリ攻撃に関与している2人の兄弟も、すでにモレンベーク出身であることが分かっている。

ベルギー警察はモレンベークに部隊を派遣した。これもまた安心できる点の1つだ。いや、法のどちら側に身を置いているかによっては、不安にもなるだろう。治安当局側が何も知らないと思ったら間違いだ。

ベルギーには、「シャリーア・フォー・ベルギー」(Sharia4Belgium)と呼ばれるグループが存在する。シャリーア(イスラム法)を宣伝する組織で、シリアに向かう戦闘員の主要な徴募団体の1つと位置付けられている。

ベルギーという国自体、国民1人あたりで最も多くの新規戦闘員を中東での聖戦(ジハード)に送り出しているという不名誉に甘んじている。2015年初め、ベルギーのある裁判官が「シャリーア・フォー・ベルギー」をテロ組織に指定し、同団体に関与する45人が関連犯罪で有罪判決を受けた。この裁判及び被告全員に関する捜査、そして上述の鉄道攻撃未遂事件及び銃撃事件から得られた証拠を通じて、治安当局はパリ攻撃に関して疑うべき個人の名前を把握している。

同様に、フランス警察、そして特殊治安機関である国土監視局(DST)には、過去に捜査対象となる可能性のあった「参考人」であることを示す「Qファイル」が存在する。すでに、パリ攻撃の犯人のうち、少なくとも1人がQファイル記載者として一時期は監視対象とされていたという報道がある。イギリスでもロンドン警視庁公安部が同様のファイルをまとめている。

仏セーヌ・サンドニ県で暮らすムスリムや、英バーミンガムやタワー・ハムレッツで暮らすムスリムのうち一定数は、パリの事件と結びつける具体的な証拠の有無にかかわらず、尋問を受ける事態になると予想される。フランスだけでも16日中に168カ所の家宅捜索が行われたと報じられている。100名以上が自宅軟禁下に置かれている。

これらは、捜査において具体的な証拠が得られる「前」段階であり、ここからさらに新たな証拠が得られる。容疑者リストであり、不特定の疑惑である。これだけ多くの個人に対する事情聴取、データマイニング、攻撃現場で見つかった微細な破片からの追跡を通じて、捜査官はいずれ、いっそう具体的な手掛りをつかむだろう。さまざまな国の機関相互の調整は必須であろう。

もちろん、スピードは重要だ。1月の「シャルリー・エブド」編集部での銃撃事件と同じように、首謀者と見られるアブデルハミド・アバウドなどの大物はすでに捜査網から逃れた可能性がある。だが、イスラム国に力を与えているのはネットワークであり、この場合は、速度よりも徹底性が優先される。捜査を拡大するなかで、治安機関はより精度を上げ、パリ攻撃そのものではなくても、その他のジハード(聖戦)活動により直接的な関わりを持つ者や要素に焦点を合わせられるだろう。

以上が、「13日に襲撃犯たちがもたらした破壊以上に、パリ同時攻撃は西欧全域においてイスラム主義者たちに打撃を与える」と筆者が考える理由である。米中央情報局(CIA)は、9.11米同時多発攻撃以降の6カ月間で米国とその同盟国は実行犯らと関係のある個人2500人を多くの国の市街から一掃したと発表した。

それと似た状況がここ欧州でも再現されることを期待しよう。

*筆者はワシントンにあるアメリカ国家安全保障アーカイブの上級研究員。そこで米CIAのドキュメンテーション・プロジェクトを担当する。最近の著書に「The US Special Forces: What Everyone Needs to Know(原題)」などがある。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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