December 2, 2019 / 12:09 AM / 9 days ago

コラム:トランプ時代の安全保障、NATOが迫られる戦略再構築

[ロンドン 28日 ロイター] - トランプ政権発足からまもなく3年が経過する米国について、同盟関係にある欧州各国はどのように感じているのだろうか。

 11月28日、外交政策を巡る欧州各国の国民の意見の食い違いは、歩み寄るのがおそらく不可能なほどまで拡大していると、ロイターのコラムニスト、Peter Appsは指摘する。写真は11月26日、米フロリダ州サンライズで撮影(2019年 ロイター/Yuri Gripas)

米国の核抑止力に依存することについて、このほどドイツ国民に聞いた調査が1つ参考になる。このほかにも、実情がより鮮明に分かるデータがいくつかある。

<中国やロシアは懸念だが>

ドイツのケーバー財団が公表した世論調査によると、米国による「核の傘」に引き続き頼ることに賛成した人は22%にとどまった。40%は英国、または、より可能性が大きいフランスから新たな核の傘を提供してもらう取り決めを結ぶべきだと答えた。

ドイツが安全保障を核兵器に依存するのをきっぱりやめるべきだとしたのが31%。残る7%は、つい最近まで考えられもしなかった選択肢、つまり独自の核武装を唱えた。

この結果からうかがえるのは、外交政策を巡る欧州各国の国民の意見の食い違いが、歩み寄るのがおそらく不可能なほどまで拡大しているということだ。

全体として、ドイツ人も他の欧州の人々も、中国の台頭やロシアのプーチン政権との摩擦を含め、足元の世界の動きを好ましく思っていないのは明らかだ。基本的には、欧州は外交政策でより一致して行動することが望まれている。

だが、現在の各国指導者らがそれを実現するという期待は、人々の間にほとんど見受けられない。外交政策における優先順位付けという面でも、一般的な人々の間のコンセンサスは、あったとしても至極ぼんやりしたものであることが多い。

フォンデアライエン次期欧州委員長は11月27日、欧州が世界秩序形成に関与できるよう積極的に行動すると約束した。とはいえ、大国の指導者、特にドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領は、この積極的行動の意味合いを巡って「同床異夢」の関係にある。

欧州市民は温暖化と移民問題を最大の懸案とみており、各国政府や欧州連合(EU)に取り組んでほしいと願っているものの、具体的な方法を巡る見解の相違は非常に大きい。

フォンデアライエン氏自身、恐らく記憶にある限りで最も両極化している欧州議会に直面し、その議会の承認を獲得するため、せっかく選んだ欧州委員候補3人を差し替えざるを得なくなった。

<米国に負けない孤立主義>

ブリュッセルに拠点を置くシンクタンク、欧州外交評議会(ECFR)が9月に発表した世論調査では、EUが解体した場合の損失について、米国や中国のほか、新たに台頭しつつある地域大国に対抗する力を持つ「欧州ブロック」を生み出す機会が失われる、との声が多く挙がった。

その一方で、EU加盟国では40%以上が今後10─20年のうちにEUがばらばらになる可能性があると回答。およそ3分の1は、現加盟国間で抜き差しならない対立が起きてもおかしくない、とみている。

ケーバー財団の調査でも、ECFRの調査でも、欧州の安定にとって、もはや米国が最大の保証人として信頼されていないことが分かる。混乱して多極化が進む今の世界において、とりわけ通商問題で欧州の利益を代弁してくれるのは、各国政府ではなく欧州委員会およびEUだと、人々はみなしている。もっとも、イタリアなどでは自国政府とEU、双方の政策担当者への強い不信感を示す結果となった。

欧州諸国と米国の関係については、ドイツ人の87%が、トランプ氏が再選すれば独米関係に「かなり」もしくは「非常に」マイナスだと答えた。それでもある面では、欧州の政治情勢は、トランプ氏に負けないぐらいの孤立主義に親近感を示している。

ECFRが調査したポーランド以外の全ての欧州大陸の国々では、米国とロシアもしくは中国の対立の際には、中立を維持するべきだとの意見が圧倒的多数、もしくは多数を占めた。

<欧州だけで協力模索>

こうした姿勢は、北大西洋条約機構(NATO)を根本から揺さぶることになる。NATOを巡っては、大統領再選を目指すトランプ氏が米国の負担に不満を表明し、フランスのマクロン氏は「脳死」の様相が強まっていると警鐘を鳴らす。

その中でNATOは12月、会議を開く。特にフランスは、NATOの枠組み外で欧州がより緊密に防衛協力するべきとの主張を展開している。だが、ドイツからは消極的な支持しか得られていない。

ドイツが軍事費をNATO目標である国内総生産(GDP)の2%に引き上げるには、国民の理解が必要になるが、ECFRの調査では、「国防費拡大」に対する賛成は40%にとどまった。

ロシアへの金融制裁強化には相当な支持があったが、プーチン大統領を抑制したり封じ込めたりするため、軍事行動を取るべきだとの声はずっと少ない。イランの抑止政策についても、金融制裁と外交的な取り組みに幅広い支持が集まった。

米国でトランプ大統領が再選されるか、孤立主義の色合いがもっと強い民主党政権が誕生するか、いずれにしても、追い詰められた欧州は、否が応でも世界をどうしていきたいのかを巡って合意形成しなければならなくなる。

失敗すれば、せっかくのチャンスを逃すことになる。

(筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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