Reuters logo
コラム:緊迫するウクライナ情勢、プーチン氏の狙いは何か
2016年8月17日 / 02:32 / 1年後

コラム:緊迫するウクライナ情勢、プーチン氏の狙いは何か

[12日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領が、近いうちにウクライナとの緊張を高めるつもりなのかどうかは分からない。しかしプーチン氏の思惑がどのようなものであろうと、あたかもその気があるように見せているのは確かだ。

 8月12日、ロシアのプーチン大統領(中央)が、近いうちにウクライナとの緊張を高めるつもりなのかどうかは分からない。しかしプーチン氏の思惑がどのようなものであろうと、あたかもその気があるように見せているのは確かだ。クリミア半島セバストポリで2014年5月撮影(2016年 ロイター/Maxim Shemetov/File Photo)

ウクライナが旧ソ連からの独立25周年を祝う8月24日が迫るなか、ロシアは、ウクライナの主権が存在するのはロシアがそれを許しているからだとする立場を鮮明にしている。

ロシアによる威嚇は、その近隣国にとどまらない。いつもの通り、プーチン大統領のメッセージは、毅然と西側にも向けられている。

ジョージ・W・ブッシュ政権後期の2008年に勃発したロシア・グルジア(現ジョージア)戦争時のように、ロシアは自国の国境沿いでは比較的危なげなく行動でき、米国がそれを阻止するためにできることはほとんどない、ということをプーチン大統領は主張したいのだ。(当時は現在のように、世界の注目は五輪に向けられていた。)

ロシアが2014年、ウクライナのクリミア半島を不意打ちに併合して以降、西側諸国はロシアに対抗すべく、より多くのリソースを投入し、厳重な注意を怠らないでいる。だがその大半は、北大西洋条約機構(NATO)の防衛、特にエストニア、ラトビア、リトアニアのバルト諸国周辺の防衛を支えることに重点が置かれている。

ウクライナはNATO加盟国ではないため、同国の防衛において拘束力のある条約義務はない。ウクライナの軍事能力を構築するため、米国と欧州諸国は、訓練などできることを行っているが、ウクライナの同盟諸国は差し当たり、たとえ同国が攻撃されたとしても、軍事防衛を行う可能性はかなり低い。もし事態が悪化しそうなら、米国の任期わずかなオバマ政権は非常に難しい立場に立たされる。

最大限に曖昧さを維持するため、デマと否定できる勢力を駆使したロシアの「ハイブリッド戦」に対抗する能力と戦術を構築すべく、西側諸国とウクライナはできる限り努力している。しかし、ウクライナでロシアは、最先端の西側的な戦術さえ破ろうと、無人機(ドローン)や強力な迫撃砲、ロケット発射装置と共に、より重装備の武器を使うこともためらわない。その結果、ますますこう着状態に陥っている。とはいえ、もしロシアが望むなら、同国は恐らく国境付近でウクライナ軍を制圧することは可能だろう。

それでも、事態のさらなるエスカレートは、ロシアにリスクをもたらす。ロシアにはウクライナ軍を倒す能力があるかもしれないが、戦争は常に予測不可能だ。もし予想以上にウクライナ軍が強かった場合、プーチン大統領は面目丸つぶれとなり、政治的ダメージを受けかねない。軍事アナリストの大半は、ロシアがウクライナで、ロシア系住民の住む国境付近地域を越えた広大な領域を抑え込む意図も能力もないと考えている。

ウクライナに対する大規模な軍事行動によって、ロシアが追加的金融制裁を科される可能性もある。また、米国とその同盟諸国に対し、さらなる軍事支援、恐らく殺傷兵器を含む支援をウクライナに提供するよう促す結果になるかもしれない。さらには、東欧にNATO軍を展開する機運が高まるだろう。これはロシアが目にしたいことではない。

このような緊張は、米大統領選にも直接影響を与えかねない。とりわけ、民主党全国委員会の電子メールがハッキングされたことにロシアの情報機関が関与しているとの疑惑が浮上してから、プーチン大統領が共和党候補のドナルド・トランプ氏の勝利を望んでいるとの憶測が広がっている。ロシアとの目立った新たな危機は、失言癖のあるトランプ氏の外交政策経験のなさを浮き彫りにし、民主党候補のヒラリー・クリントン氏の追い風となるかもしれない。これはプーチン大統領が望むこととはまさに正反対であろう。

その一方で、オバマ政権が任期終了間近であるまさに今行動に出ることは、11月に決まる米国の新大統領が誰であろうと、関係改善を図るための柔軟性が得られると、プーチン大統領は考えているのかもしれない。

ウクライナの情報機関がクリミアで「テロ」攻撃を共謀したとロシアが非難する以前から、2年に及ぶこの紛争が再び激化しそうな兆候はすでにあった。

ロシア系住民の住むウクライナ東部ドンバス地方、特にドネツクとマリウポリ周辺では最近、暴力が著しくエスカレートしている。同地域ではとりわけ、2014年にロシアがクリミアを併合してから戦闘が激化。それ以降、地域特有のものとなっている。

ウクライナは11日、過去24時間だけでも、ロシアの支援を受ける分離派によるものとみられる攻撃や事件が67件発生したとしている。それよりも恐らく重要なのは、国境付近にロシアの部隊が集結しているとの報告だろう。

ロシアの警告は、ウクライナをかく乱しようとする単なる威嚇である可能性はある。

今のところ、ウクライナの特殊部隊がクリミア半島に潜入しようとしたとするロシアの主張の真偽を確かめることは不可能だ。しかし米国は、ロシアの主張を信じないとする立場を明確にしている。そのような事件をでっち上げることは、軍事国家の主な手段としてプロパガンダを使用するロシアの伝統に当てはまるものだ。

ウクライナは、独立25周年が同国への国際的支援を示す機会となると期待していた。だがプーチン大統領はむしろ、ロシアが得意とするスポーツは、リオデジャネイロ五輪の一部ではなく、隣国との勝ち戦であるということを示すために、その記念日を利用するかもしれない。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」
0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below