[ロンドン 3日 ロイター BREAKINGVIEWS] - カタールはサウジアラビアをいら立たせる新たな方法を見つけたようだ。湾岸地域にある人口約260万人のこの小国は昨年6月以降、隣国サウジから経済封鎖を受けているが、比較的平然としていた。だが現在、かつて絶大な権力を握っていた、サウジが事実上のリーダーである石油輸出国機構(OPEC)を同じく平然と脱退しようとしている。
カタールにはそれなりの理由がある。そもそも同国は、脱退してもやっていけるだけの経済力を有している。10月、カタールはOPEC全体の産油量水準である日量3300万バレル(bpd)のうち、60万bpdしか提供しなかった。一方、サウジのそれは1070万bpd。
カタールが自国に眠っている比較的二酸化炭素レベルの低い大量の天然ガスを開発する場合、同国の産出量は、原油換算バレル(boe)で計算すると、480万boeから向こう10年間で650万boeに増加する。OPECに加盟しているからといって、サウジや同じく加盟国のアラブ首長国連邦(UAE)からの経済封鎖がやむわけでもない。
1960年のOPEC設立以降、インドネシアが脱退、ガボン、エクアドルは一時脱退を経験している。だが、61年以来の加盟国カタールは今回、比較的小さな国々が加盟国であることのメリットに疑問をもつ理由が増える中で、脱退を表明した。
余剰生産能力は主にサウジが握っているため、小さな加盟国は不当な扱いを受けがちだ。今夏にOPECは増産を決めたが、それは市場シェア、利益の両方において、サウジを大きく利することとなった。
今週行われるイベントでは、さらに面倒なことになるかもしれない。前週末にアルゼンチンで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議にあわせて、ロシアのプーチン大統領とサウジのムハンマド皇太子は会談し、2016年の協調減産につながったOPECと非加盟産油国の協力協定を継続することで合意した。その詳細については、6日から始まるOPEC会合で検討される予定だが、こうしたことは加盟国だからといって交渉に関与できる保証はないということを強く示している。
OPEC脱退というカタールの決断は、加盟国であることのメリットがますます曖昧となっていることを示唆するものだ。再生可能エネルギーのコスト低下や大規模な米産油量の伸びにより、OPECの影響力低下は不可避だろう。
一方、サウジ人記者が同国の工作員によって殺害された後にトランプ米大統領がムハンマド皇太子への支持を公言したことで、皇太子は原油価格の低下を求める大統領に頭が上がらなくなるだろう。
自分たちよりもロシアや米国の利益が聞き入れられているのを目の当たりにすれば、経済力のある加盟国が離れていっても別に不思議ではない。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。