December 28, 2017 / 7:44 AM / a year ago

コラム:次のユーロ圏銀行再編の波、けん引役は

[ロンドン 27日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 欧州における次の銀行再編の波は、株主たちよりも規制当局に大きな喜びをもたらすだろう。ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)(RBS.L)などの連合がABNアムロ(ABNd.AS)を買収してから10年を経て、欧州の金融機関が再び国境を越える合併・買収(M&A)を巡る思惑の中心的存在となっている。

 12月27日、欧州における次の銀行再編の波は、株主たちよりも規制当局に大きな喜びをもたらすだろう。写真はユーロ記号。フランクフルトのECB本部で2011年4月撮影(2017年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

しかし今回の主導役は経営陣ではなく、規制当局だ。

2008年の金融危機から長い間、欧州の銀行が違う国の銀行を買収するという考え方は禁忌(タブー)視されてきた。主な原因は、ABNアムロにまつわる痛恨の記憶にある。ABNアムロと同行を取得した銀行連合3行のうち2行は、07年の買収手続き完了から1年以内に相次いで国有化された。英政府はようやく今になって、RBSの持ち分71%の売却を準備しているところだ。これに懲りた当局は、銀行の規模をより小さく、組織構造をより簡素にする取り組みに専念した。

ただ銀行同盟がそうしたムードを変えた。ユーロ圏のソブリン債危機は、銀行とその銀行が拠点を置く国の政府のしがらみが生み出す危険性を白日の下にさらけ出した。アイルランドとスペインはいずれも、自国の銀行を救うために他国に金融支援を仰がざるを得なくなったのだ。この悪しき関係を断ちきるため、ユーロ圏の銀行監督権は欧州中央銀行(ECB)に新設された銀行監督委員会に委ねられた。そして銀行監督委員会が、再編の旗振り役になっている。ダニエル・ヌイ銀行監督委員長は9月に「銀行同盟が越境合併への道を開いた」と宣言するとともに、それなのにせっかくの機会を利用して新たな領域を勝ち取ろうと積極的に打って出る勇敢な銀行がいないと嘆いた。

銀行の越境合併を正当化する根拠はほぼ4点に集約される。最初に言えるのは、なお市場規模に比べて数が多過ぎて細分化したままの業界のスリム化をM&Aは促進する。ユーロ圏の銀行数は金融危機以降におよそ20%減って5000行となったとはいえ、資産額は域内総生産(GDP)の280%にも達する。米銀資産の対GDP比はその3分の1程度しかない。もっともそれは米国の方が資本市場や政府保証の住宅ローン市場が活発なことが主たる理由ではあるが。

次に、越境合併は自国の経済的ショックを乗り切る多様な事業形態を生み出せる。また3番目の理由は再編が経営効率を高めることだ。そして最後に、より大きくなった欧州の銀行は、米州やアジアのライバルに対する競争力を強化できるメリットが挙げられる。

多くの銀行幹部は引き続き越境合併には懐疑的だ。1つには、銀行同盟は完成から程遠い状況だという事情がある。域内の複数の国に子会社を持つ銀行は、国境を越えて現金を動かすことで制約を受ける。例えばドイツのリテール部門で集めた預金を、フランスで中小企業向け融資に使うことは今も不可能だ。税制や規制、消費者保護の法制度は国ごとに異なる。預金保険制度をユーロ圏で一元化する提案については、細かい内容を巡って政治家の論争が続いている。

このような域内の規制の枠組みの差によって、銀行は越境合併に動いても経費節減効果は限られてしまう。実際、大手金融機関が地域金融機関に比べて経営効率が高いという証拠はほとんど見当たらない。UBSのアナリスト陣が最近まとめた調査を見ると、大手リテール銀行は地銀よりも有形自己資本利益率や貸出利ざやが低く、より幅広い商品の販売に苦戦している。グローバルなシステム上重要な機関とみなされた銀行には規制当局が資本バッファーの上乗せを要求することも、合併による巨大化の試みを一層阻む材料と言える。

とはいえ再編の期待は高まりつつある。イタリアのウニクレディト(CRDI.MI)とフランスのBNPパリバ(BNPP.PA)の双方は、ドイツのコメルツ銀行(CBKG.DE)の買い手候補とみなされている。ドイツ銀行(DBKGn.DE)のジョン・クライアン最高経営責任者(CEO)や、クレディ・スイス(CSGN.S)のウルス・ローナー会長といった銀行業界幹部らは、越境合併の利点を公然と論じるようになった。

10年前は、銀行幹部の熱気と短期的な投資家が結合してABNアムロの破局を引き起こした。今回は、規制当局が事態をけん引している。本当に越境合併を実現するなら、関係する銀行はどちらの陣営が経営を指揮し、本店を維持するのか決める必要が出てくる。政治家や労組は支店閉鎖や人員削減に反対し、逆に株主は厳しさの見えないなれ合いの統合の気配を警戒するだろう。

それでもこれらの障害を克服できる銀行幹部にとって、少なくともフランクフルトの銀行監督当局から合併を歓迎されるのは間違いない。

●背景となるニュース

*ECB銀行監督委員会のダニエル・ヌイ委員長は9月27日の講演で、欧州銀行同盟は越境合併に向けた環境を整備したと発言。「候補となる数多くのパートナーに機会が提供されたが、それを利用して新たな領域を勝ち取ろうとする勇敢な銀行の存在が欠けている」と述べた。

*2008年以降、ユーロ圏の銀行数は20%減って5000行になった。従業員数は30万人減の190万人。

*ECBが今年5月に公表した統計によると、昨年のユーロ圏の銀行合併は件数と金額の両方で2000年以来の低水準にとどまった。

*足元で銀行再編の台風の目として注目されているのはコメルツ銀行で、ウニクレディトとBNPパリバが買い手候補になっている、と9月にロイターと独週刊誌ビルツシャフツ・ボッヒェが伝えた。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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