March 27, 2020 / 11:44 PM / 2 months ago

コラム:変わるリーダー像、新型コロナとの戦いで能力明らかに

[チューリヒ 26日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米国の第12代大統領ザカリー・テイラーについて、多くを知る人は少ない。1850年の米独立記念日にサクランボを食べた後、胃腸炎で死去し、任期は16カ月。政治家でなかった人物が米大統領に就いたのはテイラーが初めてだった。

新型コロナウイルスとの戦いで、リーダーシップの定義が再び見直しを迫られている。新型コロナという「引き潮」によって、だれが無能なのかが露呈しつつある。写真は主要7カ国(G7)の首脳。2019年8月、フランスのビアリッツで撮影(2020年 代表撮影)

テイラーは米・メキシコ戦争の英雄として頭角を現し、ホイッグ党から大統領選に立候補して当選した。

米国では、大統領職にほとんど、もしくは全く関心を持っていなかった戦時のリーダーが、政治的な混乱の中で最高司令官たる大統領になった例が多く、テイラーもその1人だ。

初代大統領のジョージ・ワシントンがこの例に当てはまり、18代のユリシーズ・グラントや34代のドワイト・アイゼンハワーもそうだ。7代のアンドリュー・ジャクソンと26代のセオドア・ルーズベルトは政治家出身だが、戦場で殊勲を立てたことで、国民の間で人気が高まった。

重要なのは、新しいリーダー、多くは想定外の指導者が、戦争状態の中から現れる傾向があるということだ。

そこで思い浮かぶのは、現在進んでいる新型コロナウイルスとの戦いだ。リーダーシップの定義が、再び見直しを迫られている。新型コロナという「引き潮」によって、だれが無能なのかが露呈しつつある。

一方で、引き潮は誰が勇敢なのかも浮き彫りにする。私たちのコミュニティーで、企業で、病院で、学校で、中央銀行で、教会で、そしてもちろん政界で、思いやり、実行力、道義的な目的意識を持って、コロナ危機と戦っている人々がいる。ことほどさように、米大統領だけでなくあらゆる分野で、職務の定義が刻々と書き換えられている。

歴史上の事例と同様、素晴らしい新たな選択肢も生まれている。最も明白な例が米国の大統領だ。事実上のロックダウン(都市封鎖)からわずか1週間で、トランプ大統領がコロナ危機に対して冷静に対処できないことが明らかになった。

これは民主党の指名候補を争うバイデン前副大統領の存在感が増したからではない。バイデン氏は自宅から、いかにも政治家らしい演説を読み上げたが、今回の危機への対応としては不十分で、ニューヨーク州のクオモ知事やカリフォルニア州のニューサム知事にお株を奪われた。

同じような動きは、政治以外の世界でも起きている。企業では自宅待機となった従業員が次回の給与支払いや退職後の蓄えを心配し、レイオフの手掛かりがないかと企業の発するメッセージの解読に努めている。この危機に拙速に対応する誘惑に打ち勝ち、従業員の平静さを保って生産を続けた肝の据わった経営トップは名を残すだろう。

しかし、トップの多くは、新型コロナによる経済的ショックがもたらす新たな困難に耐えられそうにない。

安易な借り入れや右肩上がりの株価を使ってライバル企業を買収することに慣れきった拡張主義のCEO(最高経営責任者)は、もはや適任ではない。資金を借りて自社株買いを行うよう、厳しい口調で取締役会に迫るようなアクティビスト投資家は、コロナ危機が去った後で逆風下に身を置いていることを知るだろう。

何よりも、収入が減った従業員がコロナから立ち直り、愛する人を悼むときにCEOに必要とされるのは思いやりの心だ。

イタリア北部ベルガモの病院のように、すでに新しいリーダーたちが現れた病院がある。医師や看護師が感染のリスクを負いながら、24時間体制で働いている様子が伝えられている。医師たちは、どの命を救うべきかという、厳しい選択を常に迫られている。これ以上に決断力と度胸が試される状況があるだろうか。

学校でもインターネット会議システムや電子メールに不慣れな教員が、新たな技術の習得を迫られるだろう。講堂を歩き回ることに慣れた校長は、やり方を変えなければならないだろう。対応できない人もいれば、頭角を現して次の校長になる人もいるだろう。

米国の大統領に話を戻そう。トランプ氏は政権内でも別の閣僚に人気をさらわれた。トランプ氏の発言に比べれば、ペンス副大統領の方が落ち着いていた。国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長や、コロナ対策本部のコーディネーターのバークス氏は率直な物言いで名を上げた。

1つはっきりしていることがある。首都封鎖やレイオフ、財産の急減から数週間、もしくは数カ月後、望ましいリーダーについての米国民の見方は、今と同じではないだろう。

トランプ氏はすでに、今の状況下では場違いなリーダーに映る。バイデン氏は思いやりがあるようなイメージを醸し出しているが、次期大統領に必要な要件を備えていないかもしれない。新型コロナの主な犠牲者が60歳以上となっている中、70歳代の人物が大統領職を担うのが適切なのか、数カ月後に問題視されていないと言い切れるだろうか。

新型コロナ危機が峠を越えれば、米大統領から企業、学校、病院、地方自治まで市民生活のすべての局面で、リーダーシップが見直されるだろう。これまで不可欠だった経歴は時代遅れと見なされるだろう。

願わくは、一緒にビールを飲んで最も楽しい人物、などというリーダーの基準は笑いぐさになってほしい。誰が大統領予備選で最も多くの代議員を獲得できたかは、結果として付いてくるものだ。重要なのは唯一、誰が新型コロナに立ち向かい、勝利するかだ。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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