August 27, 2019 / 5:45 AM / 22 days ago

コラム:米中貿易摩擦、残された「解決策」は景気後退なのか

[ローンセストン(オーストラリア) 26日 ロイター] - 世界的な景気後退(リセッション)こそが、米中間で激化が続く貿易摩擦を無理やりにでも解決に導く最良の機会なのだろうか。

 8月26日、世界的な景気後退(リセッション)こそが、米中間で激化が続く貿易摩擦を無理やりにでも解決に導く最良の機会なのだろうか。写真は5月20日撮影(2019年 ロイター/Jason Lee)

米中貿易協議の合意の芽は、恐らくトランプ米大統領が先週、いったん摘み取ってしまっただろう。

中国が米国製品750億ドルに追加関税を適用すると発表した後、トランプ氏は対抗措置として中国製品のうち2500億ドル相当への追加関税率を最高30%に、残る3000億ドル相当の税率も15%に、それぞれ引き上げると表明した。

つい最近まで多くの投資家や企業は、米中は最終的に合意するとの見方を信じようとしてきた。双方が自国経済や世界全体にダメージを与え続けるよりも、妥協した方が理にかなっていると考えていたからだ。

ただそうした楽観論は、両国がお互いの意図や動機をひどく読み誤っているように見えた、これまでの対立の道のりを無視している。

米中は関税を課しては協議に入り、合意できずに非難をぶつけ合ってまた関税を引き上げるというプロセスを延々と繰り返し、時折トランプ氏がツイッターで明るい見通しを示したり、中国政府が対立終結の希望を高めるためにメディアをてなずけるといった光景が目にされてきた。

トランプ氏が妥協の概念を理解しておらず、自分が勝つためには相手が負ける必要があると考えているのは明らかだ。

中国の習近平国家主席も、関税を次々と上乗せることも辞さないトランプ氏の意図を読み損ね、その結果、経済的な悪影響が一線を大きく越えて膨らみ、妥協がより合理的な選択肢だった状態とは程遠くなってしまった。

トランプ氏の大言壮語や攻撃的なつぶやきがメディアの注目をより集めている半面、中国政府も知的財産や市場アクセスを巡る米国側のもっともな懸念に頑なに対応しようとしておらず、交渉不調の責任は双方にある。

そして金融市場とコモディティー市場は、貿易戦争は長期化する公算が大きく、事態が今よりもかなり悪化した後でないと好転しないのではないかとの認識にたどり着きつつある。

トランプ氏と習氏が現在使える現実的な選択肢を考えても、厳しい事態にあることが読み取れる。

最善だが一番実現しそうにないのは、両首脳がいわゆる友情をてこに「トップ同士の取引」に動くことだ。実際の合意の中身にかかわらず、鳴り物入りの1対1の会談を通じ、だれもが勝者に見えるような取り決めを結ぶ。

2つ目の選択肢は、米中の経済が完全に「縁を切る」レベルまで関税やその他の障壁を高め合い続けることだ。

トランプ氏はこの路線を進む腹積もりが十分にあるかもしれない。実際には、米国の政治指導層内部にそうした破壊的な道筋を阻止するだけの勢力が生まれるかどうかで展開が変わってくる。

与党・共和党の貿易摩擦激化を巡る腰の引けた対応を見る限り、議会がトランプ氏の行動を抑える役回りを演じることは予想しにくい。

<金以外は全員敗者か>

企業セクターは関税への反対姿勢を強めるだろうが、あえてトランプ氏を怒らせる度胸を持った経営者が十分な人数に達するかは疑問だ。

一方、株価の下落が続き、関税が製造業や農業の雇用喪失を通じて実体経済に悪影響を与え始めれば、トランプ氏が来年の大統領選で勝利する確率が下がると考え、貿易戦争に終止符を打とうとする可能性はある。

また、米国の有権者が貿易摩擦が解消する前にトランプ政権にノーを突きつけ、次期大統領となる別の人物が交渉に臨む事態も想定される。

しかし今のところは、米中の緊張が和らぐ気配は乏しく、両国が受ける経済的な痛みは大きくなりそうだ。

世界の他の地域にとっての問題は、それに伴う巻き添え的な被害になる。

既に価格低迷に苦しんでいる原油輸出企業にとって、貿易摩擦は新たな悪材料だ。リセッションの確率が高まるか、少なくとも世界的に成長の勢いが弱まれば、需要が冷え込むだろう。

同じ理屈は、液化天然ガス(LNG)企業や石炭業者、銅ないし鉄鉱石といった産業用金属の採掘会社にも当てはまる。

金の生産会社だけは、こうした状況が追い風になる公算が大きい。26日には金価格が一時、6年ぶりの高値となるオンス当たり1554.56ドルを付ける場面があった。

いずれにせよ米中摩擦を現実的にとらえると、「この貿易摩擦に勝者はいない」というエコノミストや企業経営者ならだれもが承知していることを、トランプ政権も中国政府もまだ理解していないと言える。

唯一残るのは、自らの頭を固い壁にぶつけ続けるのは得策ではないと両国が気付くまでに、一体どれほど事態が悪化する必要があるのかという疑問だけだ。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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