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コラム:遠のく日銀追加緩和、11月も温存か=河野龍太郎氏
2016年9月21日 / 09:21 / 1年前

コラム:遠のく日銀追加緩和、11月も温存か=河野龍太郎氏

[東京 21日] - 日銀が金融政策の枠組みを変更した。おおむね予想した通りの変更だった。まず、量的ターゲットは事実上棚上げされ、金利ターゲットへと移行した。

金利ターゲットについては、超過準備預金金利(IOER)を対象としたマイナス金利政策に加え、イールドカーブの形状をコントロールすべく長期金利ターゲットが導入された。

長期国債の購入量については、現行の年80兆円が目途とされ、今後は長期金利が誘導目標で推移するように柔軟に調節される。予想した通り長期国債購入ターゲットは柔軟化された。

具体的には、今後、マイナス金利政策の深掘りを行った際、イールドカーブの大幅なブル・フラットニングを回避すべく、10年金利や20年金利に対して誘導目標が設けられ、長期国債の購入量や購入対象年限が調節される。

今回10年金利については、現状のゼロ%程度が目標とされた。もちろん、何らかのショックによって、長期金利に大幅上昇圧力が生じた場合には、それを抑えるべく購入量や購入対象年限が調節される。イールドカーブをコントロールすべく、事実上の長期金利ターゲットが導入されると考えていたが、文字通りの長期金利ターゲットの導入となった。

すでに2015年春の段階から、日銀は事実上のフレキシブル・インフレーション・ターゲットに移行していたと思われるが、今後は明確なフレキシブル・インフレーション・ターゲットでの金融政策運営となる。

つまり、需給ギャップの大幅な悪化や、急激な円高進行がなければ、2%インフレの達成タイミングが先送りされても、直ちにそれだけで、追加緩和が実施されるということはないと見られる。

<量の拡大は「抜かずの宝刀」に>

筆者が予想していた通り、今回の決定会合では、政策の枠組みの変更だけで、追加緩和は実施されなかった。これは、1)マクロ経済が完全雇用にあり、緩やかであるが需給ギャップの改善が続いていること、2)前回7月末の会合で上場投資信託(ETF)購入の倍増に動いた後、マクロ経済は悪化していないこと、3)円高が多少進んでも、ETFの購入倍増で株価が比較的落ち着いていること、などがある。

前述した通り、フレキシブル・インフレーション・ターゲットの枠組みで考えれば、追加緩和はあり得ない。同じロジックで考えれば、次回会合(10月31日―11月1日開催)の追加緩和も予想されない。

需給ギャップの悪化に加えて、引き続き、円高進行が今後の追加緩和の引き金になる可能性は高いが、従来から述べている通り、ETFの購入倍増で株価が下支えされ、為替レートと株価の連動性が低下しているため、今後、1ドル100円を割り込んでも、マイナス金利の深掘りは予想されない。

仮に95円を割り込んでも、90円を割り込むような恐れがないのなら、すぐには日銀は動かないだろう。量的ターゲットが限界に近づき金利ターゲットに移行したとはいえ、マイナス金利の深掘りについても、ハードルは高まっている。政治的に反発が強いだけでなく、深掘りにも限界がある。それゆえ、今のところ、近い将来に追加緩和があるとは予想していない。

将来、1)米国経済の悪化で米連邦準備理事会(FRB)が金融緩和に踏み切り大幅な円高が進む、2)中国人民元が大幅に切り下げられ大幅な円高が進む、3)それらの影響で日本経済が後退局面に入るといった事態に備え、マイナス金利の深掘りは当面、温存されるのではないか。

今回の枠組み変更の背景には、量的ターゲットが事実上限界に近づいていたこと、イールドカーブ・コントロールのためには長期国債の購入量を柔軟化させる必要があること、などがあった。ただ、予想した通り、国債購入量を柔軟化する一方、日銀は、必要とあらば、事実上棚上げしたマネタリーベースの拡大ペースを加速させることが可能であると表明している。

今後、マイナス金利政策が主軸になるが、大きな総需要ショックが訪れた際には、質(ETF購入増)だけでなく、場合によっては、量(長期国債購入額)についても対応することはあり得るということだが、現実には「抜かずの宝刀」になると見られる。

フォワードガイダンスについては、今回、「オーバーシュート型コミットメント」が採用された。安定的に2%インフレが達成されるまで量的質的緩和(QQE)を継続するというのは、不況期のインフレ低下を前提にすれば、好況期には2%超を容認する必要があるため、もともと念頭に置かれていたことである。出口の際には大きな意味を持ってくるが、フォワードガイダンスが大きく変更されたわけではない。

ここで重要なのは、今回の枠組み変更に伴い、マネタリーベース・ターゲットの棚上げで円高が進むことを避けるため、最終目標とリンクさせる形でマネタリーベース・ターゲットを形ばかりではあるが残したことだろう。少なくとも、目標達成までマネタリーベースが縮小されることはないということである。そうした措置は、伝統的なマネタリスト的見解を持つボードメンバーの顔を立てるためにも必要だったと思われる。

*河野龍太郎氏は、BNPパリバ証券の経済調査本部長・チーフエコノミスト。横浜国立大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行し、大和投資顧問(現大和住銀投信投資顧問)や第一生命経済研究所を経て、2000年より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

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