November 10, 2015 / 2:39 AM / 4 years ago

コラム:経済は米利上げに対応可能、金融市場は大丈夫か

[6日 ロイター] - 経済は利上げに対応できる。だが金融市場はどうだろうか──。6日発表された米雇用統計が好調だったことで、連邦準備理事会(FRB)が12月に利上げに踏み切る可能性が非常に高くなっている。

 11月6日、経済は利上げに対応できる。だが金融市場はどうだろうか──。米雇用統計が好調だったことで、FRBが12月に利上げに踏み切る可能性が非常に高くなっている。写真は9月、ニューヨーク証券取引所(2015年 ロイター/Lucas Jackson)

ここまでは簡単に予想できる。はるかに予想が難しいのは、ゼロ金利が7年間続いたことで蓄積されたリスクと、FRBの資産総額が年間国内総生産(GDP)の25%相当まで増大しているなかで、金融システムがどのような反応を示すかという点だ。

今回の雇用統計は誰にとっても朗報だった。10月の非農業部門雇用者数は27万1000人となり、失業率は5.0%ちょうどまで低下。その一方で、賃金は驚くほどしっかりした兆候を見せている。賃金上昇率は、緩慢な景気回復のあいだは通常2%台であるのに、年率換算で2.5%まで上がっている。

したがって今回の数字は、以前からゼロ金利解除を主張しているタカ派にとって大歓迎であるだけでなく、イエレンFRB議長など中間派が挙げていた疑問のほとんどにも、さらにはハト派が抱く懸念の一部にさえ答えるものである。

金融市場ではさっそく、12月の利上げを期待する声が、5日の58%から70%以上へと増大した。1カ月前にはわずか約5%だった。株価は、急落とまでは言わないが、S&P500指数は6日、約0.3%下落した。一方、2年米債利回りは一時10%近く上昇し、過去5年半に見られなかった水準に達した。

ここ何ヶ月にもわたり、金融市場はFRBによる今後の金利予想、いわゆる「ドット・チャート」を軽視し、それよりもはるかに遅いペースで金利が上昇するという予想のほうが好まれていた。これまでは、そのように予想すべき根拠があった。

シティグループのストラテジスト、スティーブン・イングランダー氏は、「今起きているのは、ここ数ヶ月で初めて、FRBの金利予想に対する独善的な態度を見直しておかないと危険だと投資家たちが考え始めていることだ」と顧客に書き送っている。

「だが、今後も好調なデータが続くようだと、投資家は利上げがもっとハイペースになると想定するだろう。皮肉なことに、市場が思い描くドット・チャートが、FRBのものと重なるようになる」

FRBは確実に、金利上昇を抑える方向に誘導して「慎重な離陸」を確保するために手を尽くすだろう。FRBには、金融市場の動向に振り回され、通常は緩和を進める方向に押しやられてきた過去があるものの、今後数ヶ月間で賃金上昇やインフレ昂進の圧力を示す兆候が増えてきたら、そのような傾向にも歯止めがかかる可能性はある。

もっとも、あと1回雇用統計が発表されるとはいえ、12月15─16日の次回FRB会合までの数週間のうちに、そうした動きがある可能性は高いとはいえない。

<フィリップス曲線の復活か>

潜在的に、雇用統計の持つ最も重要な意義は、恐らく「フィリップス曲線」、つまり雇用とインフレのあいだに従来想定されていた関係が、現実に息を吹き返したのかもしれない、という点だ。

FRB当局者のうち、ラエル・ブレナード理事とダニエル・タルーロ理事は、どちらも最近、そうした効果は今日の状況ではもはや有効ではないという趣旨の主張をしていた。利上げの時期をもっと先送りすることを支持する結論である。

賃金の上昇圧力が続く場合、唯一の問題は、どの程度までFRBが「キャッチアップ」(インフレ率が想定より上がりすぎること)を許容するかということになる。

このシナリオは、その正否はともかく、多くの金融市場関係者にとっては恐怖の的である。現状、非常に利回りの低い商品に投下されている資金、言い換えれば、利回りの低さを頼みにした戦略に投じられている資金が実に膨大であるだけに、なおさらだ。

市場で想定されていたよりも、いや恐らくはFRB自身が予測していたよりも早いペースで金利が上がっていくならば、複数の金融市場にわたって、価格の見直しが相当に必要になるだろう。

対GDP比で見た米国の信用市場負債残高は金融危機以来緩やかに低下しているが、歴史的に見れば331%とまだ極端に高い水準にある。これはゼロ金利というプランの一部である。投資と投機によって成長に活を入れるわけだ。

問題は、負債の利払いに充てるべきキャッシュフローの伸びよりもはるかに早いペースで金利が上昇してしまう見込みが高いように思われることだ。たとえ米国経済がグローバル経済の弱さを振り切って力強く前進していくとしても、やはりこの問題は生じるだろう。

こうした条件のもとで、金融・保険セクターはよくやっている。これらのセクターによる第2・四半期の実質付加価値成長への貢献は12%、つまり実質生産の約4分の1である。名目ベースでは、銀行・保険セクターは2007年当時よりも今の方が大きいのである。

ATMの発明以来、この部門では本当に価値のあるイノベーションはほとんど生じていないという主張を認めるのであれば、こうした成長はどこか不自然なものと見なさざるをえない。

現在その公算が高まっているように、実際に金利が引き上げられれば、保険・金融産業は現実的な姿に戻ることになるだろう。

FRBは急激な市場の下落に対抗する保証人であるという「FRBプット」の概念が試されることになるのかもしれない。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below