January 16, 2015 / 4:22 AM / 4 years ago

コラム:スイス中銀の敗北、ECBとギリシャでの「大波乱」暗示か

[15日 ロイター] - スイス国立銀行(中央銀行、SNB)が市場に屈したことは、22日の欧州中央銀行(ECB)理事会と25日のギリシャ総選挙が大きな波乱をもたらす可能性を示している。

 1月15日、スイス国立銀行(中央銀行、SNB)が市場に屈したことは、22日の欧州中央銀行(ECB)理事会と25日のギリシャ総選挙が大きな波乱をもたらす可能性を示している。写真はチューリヒのスイス国立銀行(2015年 ロイター/Arnd Wiegmann)

SNBは突如としてユーロに対するスイスフランEURCHF=EBSの上限を撤廃した。これは、上記2つのイベントのどちらかが不首尾に終わればSNBが泥沼に引きずり込まれかねないという、血も凍るような恐怖感の表れだ。

今回の行動はまた、中央銀行の力の限界を教えてもいる。デフレと市場、双方との闘いにおける限界だ。国外におけるスイス中銀の信認に悪影響が及ぶかもしれない。

SNBは3年にわたり、フランの対ユーロ相場に1ユーロ=1.2フランの上限を設け、無制限の市場介入を続けてきた。15日にそれを解除したことで、フランは一時30%も急騰し、一日の終わりには約15%高となった。

SNBは今週、ユーロに対するフランのペッグは金融政策の要だと表明したばかりにもかかわらず、突如として手の平を返した。併せて中銀預金金利をマイナス0.25%からマイナス0.75%に引き下げた。

SNBによれば、利下げは「フラン上限の撤廃が金融環境の不当な引き締めにつながるのを防ぐ」のが狙い。人の腹を銃で撃っておいて、ひじに絆創膏を貼って出血を抑えようとするようなものだ。

22日のECB理事会の直前にこうした措置を実施したのは意外ではない。ECBはこの日に量的緩和を発表すると予想されており、それが成功すればユーロは下落する可能性がある。

その3日後にはギリシャ総選挙が控えている。総選挙では、債務問題をめぐり他のユーロ圏諸国と対立しかねない政権が復活する可能性がある。

シティグループの外為ストラテジスト、スティーブン・イングランダー氏はSNBの措置について顧客向けリポートで、これら2つのイベントに絡むスイスへの資金流入を想定したものかもしれない、と指摘している。

「彼らは既に、資金流入が強まる兆しを把握しているのかもしれない。そうでなければ、これらのイベントが心配したほど悪い方向に展開するかどうか、静観しようとするだろうから」とイングランダー氏は記す。

「ECBがSNBにきちんと耳打ちしたとは考えにくい。しかし非公式な会話を通じてSNBが風向きを把握した可能性はある」

<テールリスク>

SNBの行動はECBを助けると見てよさそうだが、事態を見守る必要は残っている。SNBによるユーロ買いはユーロ圏国債を下支えしてきたが、ユーロEUR=安もまた、国債の支援材料だ。それにSNBが裏口からユーロ圏国債を買うより、ECB自体が国債を買い入れた方がずっと強力な効果を発揮するだろう。

肝に銘じるべきは、SNBは過去3年間、世界にユーロからの避難口を提供してきたということだ。避難口を無制限に使いなさい、我々は予め取り交わした最低価格でフランを売ってあげるから、というわけだ。

債券市場の裁定戦略を差して「こつこつと数セントを拾い続けた挙句、ローラー車に一掃される」という表現があるが、SNBの戦略は正にそれだった。SNBそしてスイスはこの戦略で一定の恩恵を受けた。しかし単一通貨ユーロが危機に陥ったり、ECBが量的緩和に踏み切る、あるいはその両方が起こった場合に、SNBは数十億ユーロを買い増した末にペッグが崩壊するという大きなリスクを伴う。

SNBの動きは来週以降のイベントリスクを別にしても、世界にとって長期的に興味深い含意があるのかもしれない。

中央銀行の信認全体が損なわれたのかもしれないが、多くの市場関係者はECBや米連邦準備理事会(FRB)のような巨大中銀と、SNBやイングランド銀行(BOE)との間に一線を画すだろう。SNBが闘いを降りたことで、ユーロ防衛のために「何でもやる」としたドラギECB総裁の約束は価値が薄れるのだろうか。今のところ、そうした証拠はないが、見守る価値はある。

デフレという切り口も興味深い。通貨価値の急上昇はインフレ率を間違いなく押し下げる。これはSNBがフラン上限政策を導入した際、産業や観光の保護と並んで掲げた理屈だった。世界全体で現在、デフレの勢いが増しているようにみえる。

これらを総合すると、各国中銀がますますハト派的な行動を採る可能性が高まっている。ECBは量的緩和に踏み切り、FRBは一段と利上げを遅らせるかもしれない。

今週はテールリスクだらけの一週間になった。今年一年間を見通しても、そうした年になる可能性が潜んでいる。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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