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コラム:定年70歳へ法改正を、「一石三鳥」の活性化策
2017年6月2日 / 10:01 / 6ヶ月後

コラム:定年70歳へ法改正を、「一石三鳥」の活性化策

[東京 2日 ロイター] - 日本の社会全体や経済を活性化させるために、ある提案をしたい。それは定年を現行の60歳から70歳に、希望する人に雇用継続を認める年齢を65歳から75歳に引き上げ、高齢者と労働の関係を抜本的に改めることだ。

 6月2日、日本の社会全体や経済を活性化させるために、ある提案をしたい。それは定年を現行の60歳から70歳に、希望する人に雇用継続を認める年齢を65歳から75歳に引き上げ、高齢者と労働の関係を抜本的に改めることだ。写真は日銀本店周辺を掃除する高齢者。2011年10月撮影(2017年 ロイター/Yuriko Nakao)

同時に高齢者の賃金カットを抑制する法的保護を設け、「長生きリスク」を軽減する。結果として年金や保険の支出を削減できるだけでなく、人手不足の緩和にもつながると考える。

高齢化で最先端を行く日本は、今後、急速に高齢化していく他の先進国や中国などアジア諸国の「先行指標」になる。「日本での実験」がうまく行けば、高齢者の生きがいが社会を変えるケースとして、大きな影響を広範囲に与えうる。  

<長生きリスクと消費低迷>

足元の日本経済では、不思議なことが起きている。輸出・生産は好調で、賃上げも小幅ながら実施され、日経平均.N225も2015年12月以来の2万円台回復となっているのに、個人消費がさえない。

賃上げ幅が小さく、消費拡大につながっていないとの声や、年金制度の先行きなど将来不安が大きく、節約志向が広がっているなど、さまざまな要因が専門家から指摘されている。

私は、年金で生活している高齢者の割合が増加し、その階層の消費性向が勤労者よりも低いため、消費全体の勢いを阻害しているという「仮説」を提示したい。

今年4月の家計調査によると、勤労者世帯の消費性向は、実質で87.1%。これに対し、無職世帯(年金世帯)は69.2%と17.9ポイントも低い。

さらにエンゲル係数は、実質で勤労者世帯が21.4%なのに対し、無職世帯は28.7%。年金世帯は必要な食費以外は、かなりの節約で対応していることが、このデータから垣間見える。

一方、65歳以上の高齢者の割合は、2015年10月時点で26.7%と過去最高。2025年には30.1%に上昇すると推計されており、マクロ的にも無視できない「存在感」を示している。

このまま年金世帯の割合が増加する一方なら、サラリーマンの賃金が小幅上昇する今のトレンドが継続したとしても、消費全体のパワーは、年々、減衰していくことが予見できる。

<目指せ理想の高齢者ライフ>

この閉塞した状況を打破する方策として、60歳定年、希望者は65歳まで働けるという現在の法的枠組みを修正し、70歳定年、75歳まで希望者は働けるというシステムに移行することを提案する。

現在の「高年齢者雇用安定法」では、企業が定年を設定する場合、60歳を下回ることができないと明記されているが、これを70歳に引き上げ。65歳までの希望者全員の雇用継続を義務付けている部分を75歳までに修正する──という内容。

継続勤務を希望する人への年金支給開始は、勤務終了時と年金関連法を修正すれば、多くの若年層が懸念する年金制度の持続性を高めることにも役立つ。

会社で働く年数が長くなれば、生活設計をより組みやすくなり、年金だけで生活する時よりも、消費に回せるお金が増えることも容易に想像できる。

さらに継続勤務で「やりがい」が実感できるなら、健康な生活を長期間継続する「理想の高齢者ライフ」に近づく可能性が高まるだろう。

<欧州と比べ大幅な高齢者の賃金カット率>

そのためには、もう1つの制度変更が必要になると考える。それは現在の企業で実施されている一定年齢に達した際の給与カットを大幅に緩和することだ。

労働政策研究・研修機構の天瀬光二氏の調査(2014年3月)によると、日本は欧州各国と比べ、60歳以降の年収の減り方が極めて顕著になっている。

29歳以下の生産労働者の年収を100とした場合、日本では50歳から59歳の年収は130。これが60歳以上になると92に急低下する。

一方、ドイツでは50歳から59歳が146、60歳以上が134と低下カーブが緩やかで、同様にイタリアが124から117、スウェーデンが111から108と低下幅は日本と比べると小さい。

また、米国では40歳以上の労働者について、年齢を理由にした就職差別を連邦法が禁じている。

「同一労働・同一賃金」は、日本政府も主張する政策となっているが、念頭にあるのは正規社員と非正規社員の格差是正。ここで視野を広げ、60歳以上の社員への大幅な賃金カットを抑制する法的な枠組みの設定も考えるべきだ。

<利益剰余金375兆円の意味>

企業からは労働コストの大幅増になり、経営を圧迫するという「ステレオタイプ」の批判は出てくると予想する。

しかし、375兆円の利益剰余金を抱え、支払い余力はある。設備投資にも消極的であり、他に有効な使い道があるなら、自ら積極的に行動するべきだ。

また、直近の人手不足の中で、特にIT関連の技術者は確保が難しく、66歳になったから継続雇用しないというのは、合理的な選択と言えないのではないか。

日本の企業は、横並び意識が強い。大幅な制度改革は政府が音頭を取った方が、円滑に進む「国柄」のようなので、政府はぜひ、定年延長等の法改正の具体的な検討に入ってほしい。

同時に人口減への対策をもっと大胆に打ち出してほしい。出生率の引き上げは、短期間ではできない。だからこそ、その間に高齢者の潜在力を引き出して、「右肩下がり」のトレンドを何とか横ばいから小幅でも上向きにする努力をするべきだと考える。

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