[ワシントン 15日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 韓国は、敵対姿勢を強める北朝鮮に対する対応が甘いとトランプ米大統領の不興を買っており、大統領の「問題児リスト」に加えられる公算が高まっている。
韓国の北朝鮮対応に不満を抱くトランプ大統領は、貿易など他の分野で韓国に圧力を掛けている。米国は為替操作問題や通商障壁などの面で韓国に厳しい視線を注いでいる。韓国は中国からも経済的な締め付けを受け、苦しい立場に置かれている。
韓国の文在寅大統領は15日、米軍が朝鮮半島で行動する場合には事前に韓国政府の同意が必要だと発言。北朝鮮との対話も呼び掛けた。「炎と怒り」の警告を発したトランプ氏とは対照的だ。
事情に詳しい筋がBreakingviewsに語ったところによると、トランプ氏の目には韓国は同盟国として弱腰ではないかと映り、通商など他の問題で対応を厳しくするよう側近に指示しているという。
問題となっているのは280億ドルに上る米国の対韓貿易赤字で、赤字の80%を自動車が占める。トランプ氏は2012年に発効した米韓自由貿易協定の再交渉を望んでおり、韓国で販売可能な米安全基準適合車の上限を1社当たり2万5000台としている規制の見直しも交渉の課題としたい考えだ。
韓国は為替についても米政府から操作国の烙印を押される可能性が残っている。米財務省の4月の報告では、韓国は為替操作国認定の3条件のうち2つを満たし、外貨購入に関する残る1つの条件もあと一歩で満たしてしまう。国際通貨基金(IMF)は7月、韓国ウォンは最大15%過小評価されていると指摘。同月の韓国の外貨準備高は過去最大を記録した。
米迎撃ミサイルシステムの韓国配備に中国が反発しているため、韓国は経済面でも打撃を被っている。中国人観光客の韓国へのツアーはキャンセルが相次ぎ、中国当局は防火安全基準の不備を理由に国内のロッテ百貨店74店舗に閉鎖を命じた。
韓国は米国に対してある程度譲歩することで事態を切り抜けられるかもしれない。韓国では消費者の間で国内製やドイツ製の車の人気が高く、米国製の販売は規制上限に達していない。販売上限を引き上げても影響は小さいだろう。為替についても、管理を向上させて操作国認定を回避することは可能だ。文大統領は国内の反トランプ感情に留意する必要はあるが、経済面の逆風を考えると譲歩が理に適っている。
●背景となるニュース
*韓国の文在寅大統領は15日の演説で「誰も韓国の同意なく軍事行動を決定することはできない」と述べ、朝鮮半島での軍事行動には韓国政府の同意が必要との考えを示した。トランプ米大統領は11日に「北朝鮮が浅はかな行動をとるなら、(米国は)軍事的解決に向けた準備が完全に整っている」と述べていた。
*北朝鮮国営の朝鮮中央通信社(KCNA)15日の報道によると、金正恩朝鮮労働党委員長はグアムへのミサイル発射計画について、決定を下す前にもう少し米国の行動を注視する姿勢を示した。ただ、米国が朝鮮半島で極めて危険で向こう見ずな行動を続けた場合、こうした方針を見直すだろうとした。
*米国は7月、韓国に対して、2012年に発効した米韓自由貿易協定の再交渉を望んでいると伝えた。米通商代表部(USTR)のロバート・ライトハイザー代表は両国政府による会合を8月に開くよう提案した。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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