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コラム:南シナ海進出で中国が負う「火傷」
May 19, 2014 / 1:47 AM / 4 years ago

コラム:南シナ海進出で中国が負う「火傷」

Vikram J. Singh

 5月16日、アジアで反中感情が一層高まり、主権争いで貿易経済の促進が阻害されれば、中国も同様に火傷を負うことになる。写真は中国の監視船。南シナ海で14日撮影(2014年 ロイター/Nguyen Minh)

[16日 ロイター] - 中国による南シナ海での石油掘削活動に対してベトナム各地で行われている抗議デモ。工場が放火されるなどして流血の事態にもなっているが、それによって、中国政府から近隣諸国へのメッセージは強められている。つまり、領土問題での抵抗は犠牲が大きく、最終的には無駄だというものだ。

しかし、アジアで反中感情が一層高まり、主権争いで貿易経済の促進が阻害されれば、中国も同様に火傷(やけど)を負うことになる。長期的展望に立てば、国際法に基づいた平和的解決にコミットする方が、現在のやり方より、中国にとってメリットは大きいはずだ。

中国はベトナムも領有権を主張している西沙諸島(英語名:パラセル)に石油掘削装置(リグ)を設置した。中国側は掘削設備の護衛に海軍艇を含む約80隻を派遣するなど周到に準備を進めていた。これにベトナムが反発するのは自明のことであり、現場海域では現在、両国の艦船が放水による応酬を繰り返すなど、一触即発の危険な状態が続いている。

石油掘削装置を設置することで中国政府は、ベトナムがどう転んでも勝ち目がない状況にあることを示すことができる。もしベトナム政府が中国側の動きを静観すれば、中国の法的主張の根拠となり得る「新たな既成事実」を認めることになる。逆に抵抗すれば、ベトナムは自国より強い相手との長期戦に引きずり込まれることになる。そして、ベトナム国内での反中抗議デモの暴徒化が続けば、投資環境や国際的信頼が損なわれるのは、中国ではなく、ベトナムの方だ。

中国は、近隣諸国との武力衝突は求めていない。しかし、領土問題に関しては、ほぼリスクゼロで強硬姿勢を取れると彼らは確信している。自分たちの主張を前進させるにはほんの一押しで十分であり、収拾がつかなくなる前に少し自制すれば、深刻な衝突や戦争は回避できるからだ。同時に中国は、南シナ海での活動に法的拘束力を持たせる「行動規範」策定にも参加を続けている。

中国共産党指導部にとって、今回の石油掘削装置設置のような強硬手段に出る理由は2つある。

1つ目は、ベトナムと似たような東南アジアの海洋国に対し、中国の主張には抵抗するより同意した方が得策だというのを分からせるためだ。要するに、中国は「われわれは楽な方法も厳しい方法も取れる」と脅しているに等しい。

2つ目は、南シナ海のほぼ全域を囲む「九段線」のような中国の主張は、現代国際法上では根拠に乏しいと自分たちで分かっているからに他ならない。だからこそ、強硬策を取ってでも、いざというときに自国に有利に働く既成事実を積み上げようとしているのだ。

しかし、このやり方は賢明とは言えない。中国政府の行動は多大なリスクを伴っている。対立国との緊迫したにらみ合いが続く最前線では、現場の誤算が軍事衝突につながる恐れがある。ベトナムのような国が、中国の圧力に屈するのではなく、戦う道を選ぶ可能性もある。ただそれは最悪のシナリオだろう。1979年の中越戦争では、約6万人が命を落とした。中国がアジアでのこうした紛争で得るものはない。

戦争を回避できたとしても、東南アジア諸国から一致団結した反発を招くほど、中国が強硬な行動を続けることもあるだろう。東南アジア諸国連合(ASEAN)はとても一枚岩とは言えず、こうした結束の伝統もないが、強さを増しているとともに、地域での米国の役割拡大を歓迎している。その一端は、中国の海洋進出が理由だ。

中国指導部は、相手を火傷させるだけと思っているのだろうが、それは間違いだ。

*筆者は、米民主党系シンクタンク「アメリカ進歩センター(CAP)」で国家安全保障・国際政策担当のバイスプレジデントを務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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