October 12, 2018 / 7:52 AM / 11 hours ago更新

コラム:明白な「トリガー」不在の株価暴落

[ロンドン 11日 ロイター] - 世界金融市場の混乱は、数々の調整要因を踏まえれば驚きではない。それよりも驚きなのは、また恐らく懸念すべきは、10日の株価急落において明白なトリガー(引き金)が存在しないことだ。

 10月11日、世界金融市場の混乱は、数々の調整要因を踏まえれば驚きではない。それよりも驚きなのは、また恐らく懸念すべきは、10日の株価急落において明白なトリガー(引き金)が存在しないことだ。NY証券取引所で撮影(2018年 ロイター/Brendan McDermid)

政策変更や革新的な企業ニュース、政治的な変化球やエネルギー市場の動揺、インフレ率上昇や軍事的脅威など、この24時間に何も見当たらなかった。にもかかわらず、ほぼ全世界の株式市場で株価が急落した。

ここで浮かび上がるのが、主要な上昇局面と下落局面のタイミングをはかる難しさだ。

1987年、2000─01年、そして2007─08年に起きたような株の大暴落は、ファンダメンタルズの悪化や過熱した市場に関する後知恵や大胆な一般論を抜きにしても容易に説明できる。

しかしこうした大暴落には明確なトリガーポイントはなく、むしろ作られたストーリーやネガティブ材料が重なったことに起因していた。

あるポートフォリオマネジャーが11日に語った通り、世界中の投資家は1年中、まるで一貫して買いモメンタムとボラティリティー低下に賭けるショートボラティリティー戦略を維持しているかのように振る舞ってきた。それは過熱した市況をもたらしかねない。

今回の大暴落が、別の大きな調整なのか、あるいは弱気相場が形成される過程なのかまだ分からないが、一段安となる理由や条件は明らかに増えている。

いかに突然反転し得るかを市場が示しているということに、投資家は不安がるに違いない。

S&P総合500種は10日、3%以上下落し、ナスダック総合も2011年以降で最大の下げ幅を記録した。中国株も大幅安でCSI300指数は4.8%の下落となり、1月のピーク時から30%近く下げている。

その他の株式市場も下落し、世界同時株安の様相となった。

<ダンスは続く>

10月は市場で大きな混乱が起きやすいが、そのような季節的かつ歴史的な要因はさておき、なぜ今なのか。8月や9月にも大きな反転はあった。では、なぜ10日だったのか。なぜ過去数週間の他の日ではなかったのか。

米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めやドル高、エスカレートする貿易戦争、減速する中国経済やぜい弱な新興国市場といったことはすべて、当面の間は神経質になって当然の理由となる。

米国債利回りはこの数週間上昇し続けており、今週は3.26%と7年ぶりの高水準を記録した。10日の大暴落は、トランプ米大統領がFRBの利上げペースを「クレイジー」だと批判する以前からすでに進行していた。

米利上げと米国債利回りの上昇が新興市場を圧迫しているのは、今に始まったことではない。ドル高も同様だ。アルゼンチンやトルコの通貨危機も含め、新興市場で広がるぜい弱性は先進国市場に波及するには至らなかった。

世界貿易戦争にも同じことが言える。米国はすでに、2000億ドル(約22兆円)相当の中国からの輸入品に関税をかけ、さらに2670億ドル相当の中国製品に追加関税を課す可能性がある。中国政府は4月以降、自国通貨の人民元を10%切り下げている。7日には、一部市中銀行の預金準備率を引き下げると発表した。緊張は高まってはいるものの、これまた今に始まったことではない。

確かに投資家は、イタリア政府が財政計画を巡り欧州連合(EU)との対立を深め、どつぼにはまることを懸念している。しかしこれもまた、2011年や2012年の状況とは異なる。少なくとも今のところは。

米国株式市場はこの数週間で最高値を更新し続けていたため、投資家は、高水準の株価や割高なバリュエーションに対する懸念に不意打ちを食らうことは考えにくい。いずれにせよ、米国企業の第3・四半期の利益成長率は21%増と予想されている。

ITバブル(2000─01年)や世界金融危機(2007─08年)も、たった1つの検知可能な出来事で起きたわけではなかった。崩壊に至る状況は何カ月にもわたって形成された。

世界で金融引き締めの影響が出始めた2007年7月、当時の米シティグループのチャールズ・プリンス最高経営責任者(CEO)が口にした次のような言葉が恐らくすべてを物語っている。

「音楽が止まると、流動性にとって事は複雑になる。だが音楽が流れている限り、踊り続けなくてはならない。われわれはまだ踊っている」

パーティーから手を引く確たる理由など存在しないことが多く、それを考え出そうとするのは無駄なことなのかもしれない。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにロイターのコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

 10月11日、世界金融市場の混乱は、数々の調整要因を踏まえれば驚きではない。それよりも驚きなのは、また恐らく懸念すべきは、10日の株価急落において明白なトリガー(引き金)が存在しないことだ。NY証券取引所で撮影(2018年 ロイター/Brendan McDermid)

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below