March 26, 2019 / 10:59 PM / a month ago

コラム:英中「2大政治リスク」後退へ、ドル円の主戦場はどこか=鈴木健吾氏

[東京 27日] - 世界経済への警戒が一段と強まっている。きっかけとなったのは、ハト派色をさらに強めた3月20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)だった。最も注目されたFOMCメンバーの政策金利見通し、いわゆるドットチャートは2019年の利上げ予想がゼロ回、バランスシートの縮小は9月末に停止する方針が打ち出された。

 3月27日、年末年始の行き過ぎた急落からリバウンドしてきたドル円は上昇局面を終え、今後は米国を中心とした各国の景気動向、英国のEU離脱と米中貿易交渉という政治の2大リスクの行方を見極める状況になると、みずほ証券のチーフFXストラテジスト、鈴木健吾氏は指摘する。写真は米ドルと円の紙幣。都内で2010年9月撮影(2019年 ロイター/Yuriko Nakao)

利上げ停止は本来、株式市場にプラスに働く。だが、「FRBはそこまで弱気なのか」との警戒感がくすぶったところに、米国と欧州の3月製造業PMI(購買担当者景況指数)の弱い数字が発表され、米国市場で株安とともに10年債利回りが急低下。約11年半ぶりに3カ月物金利との金利差逆転(逆イールド)が発生し、ドル円の下落につながった。

本来、逆イールドは利上げによる短期金利の上昇によってもたらされるケースが多い。しかし、今回はFRBのハト派化で長期金利が低下して発生した。その点、過去の逆イールド時ほど金融環境はタイト化していないとみられるが、景気減速のサイン(経験則からは1年半程度後)との警戒感は強い状況だ。

パウエル議長は会見で、足元の米国経済には一定の自信を示しつつも、外部環境などを理由に辛抱強く状況を見守る姿勢を示し、利上げ、利下げ、どちらの方向性も示さなかった。しかし、先物市場はFRBによる年内の利下げ実施を8割近く織り込んでいる。米国を含む世界経済が、市場が懸念するように悪化していくのか確認する必要がある。

筆者は悲観的にはみていない。1─3月の米国経済は、2018年終盤の株価下落や原油安に加え、その後の政府機関閉鎖、天候不順などの一時的要因によって押し下げられている部分が大きい。FRBの利上げ停止も下支えとなり、4─6月期にはリバウンドするとみている。

懸念される中国経済についても、昨年から続く政府のテコ入れ策によって今後は緩やかな持ち直しに向かうと予想している。

<ブレグジット混迷>

ただ、このような楽観論をたたき壊す可能性があるのが政治リスクだ。特に目先は不透明感の強い米中貿易交渉と英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)が引き続きポイントとなろう。

英下院は、3月最終週にもEU離脱協定案の3度目の採決を行うとされている。可決できれば5月23日にもEU離脱が実現し、移行期間に入る。しかし、おそらく否決されて4月12日までの短期延期にとどまり、英国はそれまでに「合意なき離脱」か、長期の離脱期限延期といった新たな計画を選択することになるだろう。

EU側は、長期の離脱延期を申請するならば理由を示せ、としていることから、2回目の国民投票実施をその理由としたうえで、長期の離脱延期申請を英下院が可決できるかが重要となる。これができない場合は合意なき離脱の可能性が高まり、市場の波乱要因となるだろう。

加えて、メイ首相に対する辞任圧力も強まっており、そうなった場合はそのタイミングも不確定要素となる。ただ、最終的には長期の離脱延期しか選択肢がなくなり、結局はここに落ち着くだろうと予想している。4月12日までの今後3週間は緊張感が非常に高まるだろうが、長期延期となれば、市場のリスクオフムードは大きく後退するだろう。

<米中貿易交渉の落としどころ>

米中の貿易交渉も不透明な状況が長引いている。3月中にも開催が見込まれていた米中首脳会談はそのめどすらついていないようだ。ただ、3月末から4月初めにかけて2週連続で閣僚級協議が予定されるなど、粘り強い交渉が続いている。

これはある意味、当然のことと言える。関税引き上げ合戦は両国経済に確実に悪影響を与える。来年の米大統領選挙で再選を視野に入れるトランプ大統領としては、これ以上の株価下落と景気悪化は避けたいところだ。

中国側も同様だろう。中国の国会にあたる3月の全国人民代表大会(全人代)では、トランプ政権が問題視する「中国製造2025」をほぼ封印するなど米国への配慮もみられた。安全保障や技術移転などで一部合意できない部分も残ろうが、こと貿易に関して決裂という選択肢はないとみている。

<米景気はリバウンド局面へ>

年末年始の行き過ぎた急落からリバウンドしてきたドル円は、上昇局面を終えた。今後は、米国を中心とした各国の景気動向、前出した政治の2大リスクの行方を見極める状況になる。

筆者は、4─6月期に2大政治リスクが後退に向かうと予想している。また、同時期に米経済が1─3月の一時的減速のリバウンド局面を迎え、中国経済も緩やかな底打ちを確認していくと想定している。

不安が強いながらもドル円は一方的な下落トレンドとはならず、一定のレンジをもみ合いながらの横ばいトレンドを想定している。過去1年間の平均値である200日移動平均線(3月26日現在、111円台半ば近辺)を意識しつつ、この下2円、上1円程度、109円台半ばから112円台半ばの3円程度のレンジが主戦場になるのではないかと考えている。

鈴木健吾氏(写真は筆者提供)

*鈴木健吾氏は、みずほ証券・投資情報部のチーフFXストラテジスト。証券会社や銀行で為替関連業務を経験後、約10年におよぶプロップディーラー業務を経て、2012年より現職。

*本稿は、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。

編集:伊藤典子

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below