September 16, 2015 / 7:07 AM / 4 years ago

コラム:シリア難民は安全保障への「脅威」か

[15日 ロイター] - トルコやレバノン、ヨルダンの難民キャンプなどで暮らしていたシリア難民の多くが欧州へと押し寄せているが、背景にはそうした国々での暮らしがますます困難になっているという現実がある。

 9月15日、中東での受け入れ国や西側の新天地でシリア難民に対する態度が変わらなければ、まさに避けたかった事態を引き起こす結果になるだろう。写真はマケドニアとの国境に近いギリシャのイドメニ村付近を歩くシリア難民。8日撮影(2015年 ロイター/Yannis Behrakis)

支援が減少しているため食料や生活必需品が入手困難となり、仕事や教育、基本的サービスを得られる機会も減っている。地元住民との緊張も高まっており、危険が増している。

たが、シリア難民は安全保障上の脅威と思われているかもしれないが、実際にはそうではない。

シリアと周辺諸国で治安情勢が悪化する中、難民たちはその責任を転嫁されているにすぎない。シリアと国境を接する難民受け入れ国などはシリア人が脅威をもたらすと考えている。それ故、彼らは移動の制限を余儀なくされている。

例を挙げると、トルコ南部キリスに滞在する難民たちは、近くで衝突が発生した際にはキャンプを離れることは禁止された。(トルコでの移動制限は、アフガニスタン人などシリア人以外の難民の方が実際にはひどい)セントジョセフ大学の調査(2015年)によると、レバノンでもシリア難民の半数近くが何らかの攻撃にさらされている。

難民の武装化や、急進化を恐れる人たちの根拠は過去の歴史にある。特に、ヨルダンとレバノンにおけるパレスチナ人武装勢力のことが頭にある。レバノンの自由愛国運動の政治家たちは、自国の内戦でのパレスチナ人の役割を引き合いに出し、同じことがシリア人でも起こり得ると主張するのが常だ。

その反面、歴史は難民が受け入れ国の安全保障面でマイナスの影響を及ぼさなかった例も示している。イラクやレバノンの難民たちがヨルダンやシリアの安全保障を脅かすことはなかった。難民の存在自体が安全保障の脅威になるわけではない。実際、現在のシリア難民のほとんどは、母国に送還されずに、ただ生き延びたいだけなのだ。

過去に武装化した難民たちの陰には、外部支援者がいた。武装化を防ぐには、難民をどう扱うかという問題だけでなく、地域勢力の政策にかかっている。エジプトとシリアはそれぞれ、対イスラエル対策の一環としてパレスチナ人武装勢力を支援していた時期があった。また、インドと対立していたパキスタンはアフガニスタンの反政府勢力タリバンを組織するため、1990年代にアフガン難民を支援したともいわれている。

シリア難民が武装化するにも、恐らく支援国が必要だろう。シリアの内戦に関与する地域勢力はこれまでのところ、戦略的目標のために難民受け入れ国を戦場とするような選択はしていない。

シリア難民が戦闘員として母国に戻るために採用されているという報道を心配するのはもっともだ。だが、シリアから波及したと思われる周辺国での戦闘はシリア人ではなく、地元民による場合が多い。

例えば、トルコ南東部スルチで7月に起きた、過激派組織「イスラム国」の犯行とされる自爆攻撃の実行犯はトルコ人だったとみられている。また、レバノン北部トリポリで1月に発生した、アルカイダ系武装組織ヌスラ戦線による自爆攻撃の実行犯はレバノン兵士だった。一方、少なくとも63万人のシリア難民を受け入れているヨルダンでは、そのような攻撃は起きていない。

確かに、周辺国の地域社会の住民たちが適切な支援を得ていなければ、難民流入によって社会不安が生じる可能性はある。ヨルダンの最貧困層は、不十分な資金と計画のせいで、難民危機に関連して高騰した生活費や賃金低下に対応するのに必要な支援を受けられていない。このような比較的後進地域の人たちが、国や国際社会から見捨てられたと考え続けるのであれば、地域を不安定化させる手段に訴えるかもしれない。

すべての難民は安全保障上のリスクと捉えて行動するのは逆効果である。難民の尊厳を否定するような措置は、受け入れ国に対する怒りや疎外感を高め、過激思想や暴力を生むだけだ。イエメンにいるソマリア難民の調査では、イエメンの学校で不当な扱いを受けた難民はアルカイダに参加する傾向にあることが分かった。難民を安全保障上のリスクとして扱わないことこそが、彼らを過激思想や武装化から遠ざける方法だと言える。

中東での受け入れ国や西側の新天地でシリア難民に対する態度が変わらなければ、まさに避けたかった事態を引き起こす結果になるだろう。

*筆者は、英王立国際問題研究所(チャタム・ハウス)中東・北アフリカプログラムのリサーチアソシエート。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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