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コラム:米中間選挙後、リスクオフ的ドル高再燃か=高島修氏

[東京 10日] - 米中間選挙後の為替相場は、リスクオフ的ドル高が再燃する可能性が高いと見ている。大局的には、昨年から続く米ドル高は最終局面に入ったと見ているが、当面は、その大天井を確認する前に米連邦準備理事会(FRB)など各国中銀の金融引き締め強化を改めて意識し、米株などリスク資産がもう一段階、調整しそうだ。その中でリスクオフ的ドル高が再燃する局面を迎えるのではないか、とにらんでいる。

 11月10日、米中間選挙後の為替相場は、リスクオフ的ドル高が再燃する可能性が高いと見ている。大局的には、昨年から続く米ドル高は最終局面に入ったと見ているが、当面は、その大天井を確認する前に米連邦準備理事会(FRB)など各国中銀の金融引き締め強化を改めて意識し、米株などリスク資産がもう一段階、調整しそうだ。写真は米ドル紙幣。7月撮影(2022年 ロイター/Dado Ruvic)

<円買い介入、155-160円で実施か>

例えば、ユーロ/ドルがパリティ水準を安定的に回復して定着するには数カ月を要すると考えており、ドル/円もそうした全般的なリスクオフ的ドル高にもつれ高となり、10月の円買い介入の前につけた152円目前の高値を超えて上昇する可能性があると見る。

日本政府による次の円買い介入は155─160円ゾーンで実施されると見ているが、目先のドル/円上昇を妨げるものとならないだろう。ただし、この間の米金利上昇と米ドル高で原油相場のもう一段の調整が促される場合、数カ月単位ではFRBの引き締めを織り込み終えるに伴って、ドル/円を含めた米ドル高のピークアウト感が次第に明確になってくると考えている。

<意外に接戦の米中間選挙>

今月8日に投開票された米中間選挙は、事前予想よりもは民主党が健闘した。下院は共和党が過半数を超えそうな勢いだが、逆転も予想された上院は民主党、共和党がほぼ拮抗(きっこう)。特にジョージア州は12月上旬の決選投票にもつれ込むことになり、バイデン大統領率いる民主党が上院で優勢を維持するか、共和党が逆転するかは当面の間、判然としない公算が大きい。

この予想外の民主党健闘を受けて、9日の為替市場ではこのところ値崩れ感のあった米ドルが値を戻し、ドル/円も145円を割り込むことなく、下げ渋ることになった。

逆に言うと、8日までは中間選挙での民主党不利を見込んで、為替市場はいったん、リスクオン的ドル反落となっていた。

中間選挙後、民主党のバイデン大統領と共和党議会との政治的なねじれが明確化。財政政策に歯止めがかかり、ひいてはインフレ圧力やFRBによる金融引き締めへの警戒感が後退することを市場は期待していたと解釈できる。米株などリスク資産が反発し、最近は世界随一の逃避通貨と目されるようになった米ドルには、売り戻し圧力が加わったからだ。

実際には、中間選挙での民主党の健闘を受けて、政治的なねじれが生じることに対する市場の期待は後退。米株が頭打ちになると、足元では早速、為替市場で改めてリスクオフ的なドル高が再燃する兆しが見えてきている。

<タカ派色強めるFRB>

中間選挙に関する市場のこの解釈に是非はあるだろうが、筆者は基本的に足元でリスクオン的ドル反落が止まり、リスクオフ的ドル高が再燃する兆しが出てきていることに違和感を覚えない。

やはり重要だったと思うのが先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)におけるパウエル議長のメッセージだ。

パウエル議長が示唆したのは1)slower、2)higher、3)longerの3つである。つまり、1)利上げペースをこれまでより緩めることを検討するが、2)利上げの着地点(いわゆるターミナル金利)は従来想定されていたより高くなり、3)金融引き締め局面も長期化する可能性がある──という点だ。

2つ目と3つ目のポイントは明確にタカ派的なメッセージである一方、注意すべきは1つ目のポイントは一見、ハト派的要素を含んでいるように見えて、実はそうでもないということだ。

なぜなら、利上げの着地点が高くなる中で利上げペースが落ちることは、金融引き締め局面がより「長期化」することを意味するからだ。

米株やリスク資産にとっての最大の敵は不確実性だ。今回のパウエル議長のメッセージは金融政策に関するその不確実性が高い状況をより長期的に続けるというように読むべきだろう。

このように考えると、10月下旬に米経済紙がFRBの金融政策に関してリークめいた記事を載せた際に、2度とも、景気とインフレの抑制には金利上昇だけでなく、株価のような資産価格の調整が必要であると述べていたことの意味が、ことさら重要性を増してくるように思われる。

足元では、中間選挙の結果によって生じる米国の政治環境の変化や、共産党大会後の中国の経済再開への期待感なども加わって、市場環境はリスクオン色を強めた。

そのような状況ではパウエル議長の1)利上げペースを緩める──というメッセージをハト派的に消化する余地があったと思われるが、議長が先週発したメッセージを冷静かつトータルに解釈した場合、今後、市場はタカ派的なその含意に向かい合っていかざるをえなくなるだろう。

特に足元では、年央以降、原油相場が緩やかに下がってきているとは言え、依然として80ドル台さえ割り込んでおらず、一定の底堅さを維持している。こうした中で、米株や新興国市場のようなリスク資産が反発するような値動きを見せると、供給サイドからのインフレの脅威に直面しているFRBをはじめ各国中銀は、金融引き締め強化の余地があると判断してくる可能性が高い。

原油高が抜本的に修正されない間は、引き締め姿勢が緩んでいくことへのハードルはかなり高いように思われる。この意味では、中国の経済再開への期待感にしても、それが結果的に原油・資源相場を押し上げる方向に影響した場合、結局は各国中銀の金融引き締めへの警戒感を高めることでリスクオフ的な効果を持ちかねない。

市場センチメントを改善させる一時的な効果はあっても、それに伴うリスクオン的米ドル反落はあまり深追いすべきものではないように思う。

<米国の通貨政策は変わるのか>

そもそも市場では中間選挙の直接的なマーケット・インパクトは小さいと見られていたが、このように整理していくと、やはりこれまでのようなリスクオフ的環境が継続する中で、米ドルの底堅い商状が続くと考えるのが妥当のように思われる。

ただ、注意すべき点もいくつかある。特に今後、米国の通貨政策に変化が出てくることがないかという点は重要だろう。と言うのは、市場の一部では就任から2年が経過したイエレン財務長官が辞任するとの見方が根強くくすぶっているからだ。

これまでイエレン長官自身に、通貨政策に関して強い方針があったわけではない。むしろ、正統派経済学者で、FRB議長も歴任したイエレン長官は、為替相場は市場メカニズムによって決定されるべきだとの考えの強い信奉者である。

過去にはクリントン政権時にルービン財務長官が強いドル政策を採ったり、トランプ大統領があからさまにドル安歓迎を表明したことがある。通貨政策に関してはそのような明確な主張をしないこと(あえて言うなら、ノンポリ)がイエレン長官の通貨政策だったとも言えるかもしれない。

とは言え、バイデン政権の国際協調路線もあってか、日本政府が始めた円買い介入には黙認姿勢を貫き、不介入主義の持論をある程度、柔軟に適用してきた。

もしも、本当にイエレン長官が辞任することになった場合には、ライモンド商務長官あたりが後継候補となるだろうが、現実的に柔軟に適用されている不介入主義が現在以上に厳格になることはなかろう。その意味では、もしもの場合も、日本政府の円買い介入に大きな障害が生じることはないと思われる。

ただ、過去にあった米ドル相場の大きなトレンド転換は、大統領が変わったタイミングや、通貨政策に関して強い方針を持った財務長官が就任した際に生じた。

例えば、1971年の金ドル交換停止はニクソン政権(共和党)でケネディ財務長官からコナリー長官に変わったタイミングで行われた。

85年のプラザ合意もレーガン政権(共和党)でリーガン氏からベイカー氏へ財務長官が変わった時だった。ルービン長官が95年のワシントンG7(主要7カ国財務相・中銀総裁会議)で、強いドル政策の表明によってそれまでのドル安の修正に動き始めたのは、クリントン政権(民主党)でベンツェン氏から財務長官職を引き継いだ直後だった。

冒頭で書いたように、数カ月単位では、ちょうどFRBの引き締めを織り込み終わる最終局面だとも思われ、為替相場はこれまで米ドル高を放置してきた米国の通貨政策への感応度を高める可能性もある。

基本は無風だと思われる米中間選挙ではるが、筆者はこうした観点からも一定の関心を持って今後の帰すうを眺めている。

編集:田巻一彦

(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

*高島修氏は、シティグループ証券のチーフFXストラテジスト。1992年に三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行し、2004年以降はチーフアナリスト。2010年シティバンク銀行入行、チーフFXストラテジストに。2013年5月より現職。

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