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コラム

コラム:コロナ時短で飲食店に廃業危機、「隠れ失業者」急増も

[東京 30日 ロイター] - 新型コロナウイルスの感染が急拡大し、東京都や大阪府をはじめ複数の都道府県が飲食店に対して営業時間の短縮を要請した。感染拡大が新年まで継続した場合、飲食店の破綻や廃業が相次ぎ、失業者が急増しかねない。ところが、日本の雇用・労働法制の枠組みでは、飲食店を解雇された従業員は「隠れ失業者」となり、カウントされない可能性が高い。政府が実態の把握に手間どれば、雇用環境悪化に歯止めがかからなくなる事態も予想される。

11月30日、新型コロナウイルスの感染が急拡大し、東京都や大阪府をはじめ複数の都道府県が飲食店に対して営業時間の短縮を要請した。都内の繁華街で7月撮影(2020年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

<2万円の協力金、5万円に増額必要>

11月下旬になって全国のコロナ感染者数は、2000人を超える日が目立つ。東京都や大阪府、北海道、愛知県でエリアを限定した飲食店などへの短縮要請が行われ、埼玉県でも検討が行われている。

東京都を例にとると、今月28日から12月17日までの20日間、島しょ部を除く酒を提供する飲食店などで午後10時までに営業時間を短縮するよう要請。応じた店舗には合計40万円の協力金が支給される。

しかし、1日当たり2万円の協力金では、時短で発生する減収分を賄えない店舗が多く存在するとみられる。「書き入れ時」の忘年会シーズンと真正面からかぶってしまったことも打撃を深刻化させている。

さらにコロナ感染の重症者が増加し続けるなら、医療体制の崩壊を防ぐ観点から、年をまたいで時短要請が長期間継続する可能性もあり、零細な飲食店は年明け以降、資金繰り難から経営を維持できないところが続出しそうな気配となっている。

そこで、政府と自治体が協議して決めている1日当たり2万円の協力金の大幅な引き上げを政府に求めたい。1日当たり5万円、20日間で100万円の給付を決め、策定中の2020年度第3次補正予算に差額分の経費に相当する予算を計上するべきだ。

<雇用保険と距離のある零細な店舗>

今のままでは、零細な飲食店の経営破綻が相次ぎ、そこで働いていた従業員の雇用が失われ、失業者が急速に拡大するリスクがある。ところが、零細な飲食店で働いていた人たちが職を失っても、失業率を計算する際に使用される「完全失業者」のカテゴリーにはカウントされない可能性がかなりあると指摘したい。

なぜなのか──。厚生労働省の説明によると、公共職業安定所(ハローワーク)に登録して求職している人や、求人誌などの情報で求人に応じた人、企業の求人に直接応募した人などが完全失業者にカウントされる。このうちハローワークで登録した人の割合が最も多いとみられる。

ハローワークとの接点は通常、直前に雇用されていた企業が雇用保険に入っており、被保険者として給付金を受け取ることなどで生まれる。つまり、働いていた飲食店が零細で雇用保険に入っていない場合、失業時に給付金を得られないため、ハローワークとは「縁がない」状況になりやすい。このケースでは、完全失業者ではなく「隠れ失業者」になる公算が大きい。

潜在的に隠れ失業者になりやすい労働者がどの程度の規模になるのか、公的な統計は存在しない。ただ、就業者数から雇用保険の被保険者数を差し引いた人数が、隠れ失業者になりやすい人数に近い規模と言えるだろう。就業者は足元で約6600万人、雇用保険の被保険者数は2019年度末で約4400万人なので、雇用情勢が悪化した場合、2000万人規模で雇用状態が把握できないケースもあり得る。

一方、政府の産業センサス(2016年)によると、宿泊業・飲食サービス業の従業員は536万人。飲食店などの倒産が続出して5%が失業したと仮定した場合、20万人超の失業者が新たに発生することになる。

今年9月の完全失業者が210万人であり、飲食店の倒産激増は、短期間に失業者を10%前後増加させ、そのうちの多くが「隠れ失業者」になるリスクを秘めていると言える。

なぜ、危機が迫っているかと言えば、今年4月7日から5月6日までの緊急事態宣言を受けた休業要請などで、飲食店の「貯え」は大幅に目減りしており、そこに年末・年始の時短要請が加われば、持ちこたえるための資金が底をつき、閉店を決意する経営者が急増しかねないからだ。

もし、コロナ感染者の数が加速して「オーバーシュート」現象を生み出せば、年末・年始に政府が「緊急事態宣言」を発出していることも「絵空事」ではないだろう。実際、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会のメンバーがテレビ番組で、年末の緊急事態宣言の可能性は否定できないとの趣旨の発言を行っている。

そのケースでは、政府が飲食店だけでなく、休業を要請する全ての範囲の企業・個人に対し、手厚い資金給付を講じないと、隠れ失業者はさらに増加しかねない。

政府・与党の要人からは「これから3週間は正念場」との声が出ているが、最悪の事態回避へ思い切った政策決断ができるのか、正念場に直面しているのは菅義偉首相と政府・与党の幹部の面々だと指摘したい。

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編集:内田慎一

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