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コラム:資本主義の「病気」がもたらす長期金利低下
2015年1月16日 / 04:47 / 3年後

コラム:資本主義の「病気」がもたらす長期金利低下

[東京 16日 ロイター] - 米欧日の長期金利が低下の一途をたどっている。市場では、ユーロ圏経済の低迷や原油安を発端にしたリスクオフ心理の波及などが原因として指摘されているが、世界経済を俯瞰してみれば、高いリターンが期待できる投資先が少なくなっているということではないだろうか。

 1月16日、米欧日の長期金利が低下の一途をたどっている。2011年1月撮影(2015年 ロイター/Nikola Solic)

ある意味で資本主義の「病気」とも言え、この停滞感を突破するには、低コストのエネルギー源の開発などの抜本的なイノベーションが不可欠だと考える。

<10年日本国債は一時0.225%>

16日の東京市場で、日本国債の10年最長期債利回りJP10YTN=JBTCは一時、0.225%と過去最低水準を更新した。

15日のNY市場で10年米国債利回りUS10YT=RRは一時、1.756%と1年8カ月ぶりの低水準を付け、30年債US30YT=TWEBは2.393%までいったん低下し、過去最低水準を更新した。

15日の欧州市場では、スイス中銀の対ユーロ相場上限の撤廃を受け、同中銀によるユーロ建て国債買入減少の思惑から、フランス、ベルギーの国債価格が下落した。だが、10年独国債利回りDE10YT=TWEBは過去最低の0.402%を付け、10年イタリア国債利回りIT10YT=Tも1.74%と過去最低の1.71%近くで取引された。

<懸念される世界的な需要不足>

米欧日の長期金利低下には、多様な要因が指摘されている。短期的には、15日のスイス中銀による対ユーロ相場上限の撤廃と利下げで、米国債や独国債に資金が流入したことや、スイスフラン高につれた円高の進行で、日本株に売りがかさんだなどのマネーフローの波及が影響したと言えるだろう。

また、年初から進んでいる急ピッチの原油安で、ロシアなどの産油国経済が圧迫を受けるとの観測から、通貨と株価の同時安が進行。合わせて米シェール業者の発行したハイイールド債や関連するプロジェクトファイナンスへの懸念から、リスクオフ心理が広がり出したことも、世界的に株価の下押し要因として意識されている。

さらに欧州中銀(ECB)の量的緩和決断観測の背景にある欧州経済の低迷や、中国経済の不透明感の高まりも、世界的な需要不足に対する不安感を強めている。

ただ、こうした多様な現象を俯瞰して見れば、米欧日の中銀による超金融緩和政策でマネーが過去最大規模に膨れ上がっているにもかかわらず、高いリターンを見込める投資が実物経済に見当たらず、様々なマーケットに流れ込んだマネーも、結局のところ、最近の原油や非鉄金属などの価格急落を見て、安全資産に流れ込んでいるということではないか。

少なくとも、実物経済には高いリターンを見込める事業が少なくなっている可能性が高いと言えるだろう。

<世界的な長期金利低下を予見していた水野氏>

 1月16日、米欧日の長期金利が低下の一途をたどっている。2011年8月撮影(2015年 ロイター/Yuriko Nakao)

このような未曽有の世界的な超低金利現象を「予見」していた経済学者が日本にいる。日本大学・国際関係学部の水野和夫教授だ。昨年3月に刊行され人気書籍の上位にランクインした「資本主義の終焉と歴史の危機」の中で、「金利はすなわち、資本利潤率とほぼ同じだと言える」とし、「利潤率が極端に低いということは、すでに資本主義が資本主義として機能していない証拠だ」と主張している。

そのうえで「資本利潤率の著しく低い状態の長期化は、企業が経済活動をしていくうえで、設備投資を拡大することができなくなったということ」で、「裏を返せば、設備投資をしても十分な利益を生み出さない設備、つまり過剰な設備になってしまうことを意味する」と分析している。

この水野教授の指摘に説得力を持たせるような現象が米国で起きている。米連邦準備理事会(FRB)は、今年4─6月にも利上げに踏み切るとの観測が盛り上がっていたが、米長期金利は2%台から1.7%台まで低下している。

これまでの経験では、利上げ観測が台頭すると、その背後にある景気上向きのトレンドをマーケットがとらえ、長期金利は上昇基調に入る。

だが、足元の米債市場が示しているメッセージは、他の実物投資に向かうよりも、米国債投資にマネーを向けた方が効率的だ、ということだ。つまり、米景気はFRBが予想しているトレンドよりも下振れした推移を示す可能性があるということにほかならない。

<長期停滞の回避に必要なイノベーション>

米欧日の長期金利が、過去の水準よりも低いトレンド線に推移して新たな均衡(ニューノーマル)を形成するようなら、それは低成長が長期化することを意味する。したがって現在進行中の長期金利の低下基調を「一時的現象」として、軽視するのは世界経済の長期的な構造変化の動きを無視することになるだろう。

この「長期停滞」の動きを変えるには、どうしたらよいのか。

水野教授は「より速く、より遠くへ、より合理的に」という資本主義を駆動させてきた理念を逆回転させ、「よりゆっくり、より近くへ、よりあいまいに」という理念に基づき、ゼロ金利、ゼロ成長の下で豊かさを意識できる社会に転換すべきだと述べている。

私は、この部分でやや意見を異にしている。最新の宇宙物理学では、宇宙に存在しているのは、従来から言われていた漆黒の闇(ダークマター)ではなく、多様な波動を持ったプラズマという説が登場している。

この説に従えば、宇宙空間からこのプラズマを取り出してエネルギー化することができれば、ほとんどコストなしでエネルギーを利用できるようになり、現在の経済構造が一変することになるだろう。

このような抜本的なブレークスルーが、どこかの分野で起きれば、長期停滞を回避できると思うのだが、楽天的に過ぎるだろうか。

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