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コラム

コラム:トランプ氏のウルトラ財政出動、ドル高止まらぬリスク内包

[東京 11日 ロイター] - ドナルド・トランプ氏が米大統領選での勝利宣言を行った9日夕(日本時間)以降、ドル高と米長期金利上昇が進み、その後は米株高にもなった。これはほぼ「完全雇用」の米国でウルトラ財政出動をすれば、何が起きるのかということをマーケットが予想した結果だろう。ただ、ドル高が一定水準で止まる保証はない。

 11月11日、ドナルド・トランプ氏が米大統領選での勝利宣言を行った9日夕(日本時間)以降、ドル高と米長期金利上昇が進み、その後は米株高にもなった。10日撮影(2016年 ロイター/Jason Reed)

トランプ次期大統領がどこかでストップをかけるのか見ものだ。

<急上昇する米長期金利>

最も劇的に変化したのは、米国債利回りだろう。10年債US10YT=RRは9日の取引で2%に乗せ、10日には2.13%台まで駆け上がった。30年債US30YT=RRの上昇はさらに急ピッチで10日には2.94%台と3%が視野に入ってきた。

日米金利差に着目した市場は、ドル/円JPY=EBSを押し上げた。10日の欧米市場では106.95円まで上昇し、早くも「トランポノミクス」の威力を見せ付けた格好だ。

何が市場を動かしたのか──。これまでの金融政策に依存してきたマクロ政策をトランプ次期大統領が大胆に転換し、財政で景気を押し上げるインパクトにマーケットが注目した結果だと言える。

4年間で所得税減税、法人税減税、インフラ投資などに4.4兆ドルの財政資金を投入すれば、その分、米国の国内総生産(GDP)を押し上げ、景気を押し上げる。停滞感を払しょくし、インフレ期待を高める働きも期待できる。

元日銀理事の早川英男・富士通総研エグゼクティブ・フェローは10日、ロイターのパネル・ディカッションで、経済が完全雇用状態にある中で大規模な財政拡大に踏み切り、保護貿易主義に走れば「国内需給がタイトになり、インフレになりやすい」とし、「それをFRBが止めようと(利上げすれば)すれば、ドル高になる」との見方を示した。

<想定超すドル高がもたらす現象>

一方で危い面もありそうだ。1つは米議会が上下両院とも共和党が過半数を制し、トランプ次期大統領の人気にあやかろうとして、「小さな政府」志向を棚上げし、積極財政を肯定した場合だ。

けん制勢力が事実上なくなって、強い薬の投入効果で、予想を超えて物価が上がり出し、FRBが想定以上に利上げをせざるを得なくなる状況に直面。そのことがドル高の圧力をさらに強める展開だ。

2017年に3回利上げとの見通しが市場に出てくると、ドルは対円で110円を突破し、125円を目指すこともあり得るのではないか。一部の市場参加者がそのように思い始めると、ドル高が止まらないシナリオも「荒唐無稽」とは、言えなくなる。

ドル/円で125円を超える円安が進めば、例えば、日系メーカーの自動車販売価格は、引き下げ余地が大きくなり、米自動車メーカーに打撃を与える可能性も出てくる。

その時に考えられるのは、今回の大統領選でトランプ氏に投票した中西部の製造業で働く人たちの強い反発だろう。

トランポノミクスの反射的効果によって、トランプ支持者の不満が膨張した場合、強くドル高/円安をけん制する行動に出る展開は、一定程度の可能性があるのではないか。

<懸念される新興国通貨・株の下落>

もう1つの副作用は、すでに10、11日の市場で見え始めている新興国からのマネー流出現象だ。マレーシア、インドネシアでは通貨が急落。インドネシアでは株価も3%安と市場変動が大きくなっている。

米国市場が世界からマネーを吸い上げると、相対的に「引力」の弱い新興市場は、継続的にマネー流出に直面することになる。

そこから言えることが、さらにある。2008年のリーマンショック以降、世界の金融・資本市場は、「リスクオフ」なのか「リスクオン」なのかという判断で、マネーの流れが決まる傾向を強めてきた。

しかし、これからはマネーが流入する中心的な存在の米国と、マネーが流出する周辺とも言うべき新興国という「二極化」が鮮明になる局面にシフトすると予想する。

そうなると、マネーフローの観点からは、ドル高が一方的に継続する展開が予想され、それを止めるのは「政治的な発言」と当局の「実力行使」ということになりそうだ。

いずれにしても、4兆ドル規模の財政支出が現実になるなら、マーケットへの影響は黒田バズーカの威力を大幅に上回って「劇的な」規模になるだろう。

そして、米国にマネーが流入し続けることが、果たして継続可能なことなのか、という見方が台頭し、さらに大きな変化が生じる可能性があると予想する。

*見出しを修正して再送します。

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