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コラム:経常黒字・対外純資産と債務残高のバランスが示す未来
2017年5月12日 / 07:33 / 6ヶ月後

コラム:経常黒字・対外純資産と債務残高のバランスが示す未来

[東京 12日 ロイター] - 2016年度の経常黒字額が9年ぶりに20兆円台に乗せた。対外純資産も増加基調をたどっている可能性が高く、世界最大規模を維持しているとみられる。一方、国と地方を合わせた債務残高は1000兆円を超えている。このバランスの中で長期金利は0.1%以下に抑制できている。

 5月12日、2016年度の経常黒字額が9年ぶりに20兆円台に乗せた。1月撮影(2017年 ロイター/Toru Hanai)

アンカーは対外純資産であり、急減時に金利上昇圧力が高まる。それまでの「猶予期間」に何をするべきか、政府は今こそ長期計画を示すべきだ。

<債務残高1000兆円と長期金利0.1%>

世上、よく聞かれる疑問に「1000兆円の債務残高があって、どうして日本国債と円の信認が大きいのか」という内容がある。

複雑な要素が絡み合っているが、巨額の対外純資産が積み上がっているため、海外投資家に信用されていることが大きいのではないか。

その結果、ヘッジファンドなどの短期筋が日本国債を売り仕掛けしても、失敗を繰り返してきた「歴史」がある。

つまり巨額の対外純資産残高が、日本の信用を担保しているように見せている。財務省によると、15年末の対外純資産残高は339兆円で、25年連続で世界一を維持している。

対外純資産を積み上げるエンジンは、概略的には経常黒字だといえる。この経常黒字額は08年のリーマンショックと11年の東日本大震災などを経て、いったん減少傾向をたどり、13年度は2兆3929億円の黒字額まで落ち込む。

しかし、貿易収支の黒字化が定着し、所得収支の黒字拡大基調が一段と強まるなか、16年度の黒字額は20兆1990億円と大幅に増えた。

13年度までの経常黒字減少傾向が継続し、どこかで赤字に転落してその規模が増大していけば、対外純資産残高のピークアウトとその先の減少傾向が、グローバルなマーケットで意識され、日本の長期金利や円の推移も、今とは違った展開になっていた可能性がある。

仮に経常赤字の増大基調が続くと市場で認識されれば、日銀のイールドカーブコントロール(YCC)政策も、今よりは格段に強い金利上昇圧力と向き合うことになっていた可能性がある。

<ネット余剰と企業が積み上げた375兆円>

経常黒字の増大は、日本国内においてネットで資金が余剰であることを示している。この要因も複雑に絡み合って単純化するのは難しいが、1つは企業の投資不足がある。

財務省の法人企業統計によると、16年12月末の企業の利益剰余金残高は375兆円にのぼる。

マクロ的には、この利益を積み上げたままの企業が、長期停滞のシンボルとなっている。設備投資には消極的で、小幅な賃上げや非正規社員の割合増加で個人セクターの購買力が高まらず、物価上昇率も伸びない。

企業サイドにも言い分はある。少子高齢化で収縮が見込まれる日本市場で、設備投資しても将来の利益を確保できないというのが、平均的な「理由」とみられる。

また、高齢化の加速によって、個人が貯蓄をもっと取り崩すとみられていたが、「80歳を超えても貯金が趣味という人が多い日本は、世界的にもかなりユニーク」(政府関係者)という状況で、ネットで資金余剰の状況が短期間に修正される見通しはない。

ただ、この経常黒字の増加基調が「永遠不滅」というわけにはいかないだろう。人口減少のカーブがこれからさらにきつくなり、「節約志向」の高齢者が多いとは言いながら、個人の貯蓄が目に見えて減少し始めると、長期金利の低位安定という構図に、大きな亀裂が走るだろう。

それがいつくるのか、今のところはっきりしないが、欧米の有力なエコノミストの中には20年後には変化が来ると予想する声もある。

<日本の将来像を語ろう>

その「不連続な変化点」が来るまでの間、政府、日銀、民間セクターがどのような対応すれば「ミゼラブルな現象」を回避できるのか──。真剣にプランを出し合って、オープンに議論する時にいたっていると考える。

大まかに分ければ、財政・金融のプロの間では、積極財政で景気を浮揚し、債務は日銀が永久債の形で保有して対応するという「A案」と、財政赤字が発散しないように歳出の効率化を図りつつ、日銀も超金融緩和からの出口を目指すという「B案」に収れんするような議論の流れがある。

いずれにしても「今だけしのげば、それでOK」というムードが、最も無責任であると考える。

日本の英知を集めて、これからの日本を議論する場を早く設定するよう政府には求めたい。

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