April 13, 2018 / 11:09 AM / 5 days ago

コラム:「天気晴朗」な日本経済にシリア情勢・政治リスクの高波

田巻 一彦

 4月13日、足元の日本経済は、潜在成長率を上回る成長が続き、「天気晴朗」と表現してもよい好調さを示している。ただ、複数の政治的な問題に直面する安倍晋三政権の行方やシリア問題に代表される地政学的リスクなど、リスクの「数値化」が難しい不透明要素が存在し、日本経済の周囲は「波高し」と言える。写真は化学兵器の使用が疑われているシリアの東グータ地区で治療を受ける幼児。提供写真。7日撮影(2018年 ロイター/White Helmets/Handout via REUTERS)

[東京 16日 ロイター] - 足元の日本経済は、潜在成長率を上回る成長が続き、「天気晴朗」と表現してもよい好調さを示している。ただ、複数の政治的な問題に直面する安倍晋三政権の行方やシリア情勢に代表される地政学的リスクなど、リスクの「数値化」が難しい不透明要素が存在し、日本経済の周囲は「波高し」と言える。14日には米英仏がシリアに対し、ミサイル攻撃を実施。地政学的リスクの一部が現実化した。今後の展開次第では、予想以上の価格変動もありそうだ。

「天気晴朗」を典型的に示したのは、日銀が12日に開催した支店長会議での報告と地域経済報告(さくらリポート)の内容だ。

全国を9地域に分けた報告では、6地域の経済が「拡大」、残り3地域が「回復」と表現。全国ベースで景気の改善基調が継続していることを示した。

また、衛藤公洋・大阪支店長(理事)は会見で、企業は1ドル=105円前後の円高ではびくともしないと述べ、企業の体力が景気回復とともに強くなっているとの見解を示した。

人手不足などによる供給制約の例も示されたが、需給の強さは日銀が目標とする物価2%の達成には追い風。短期的に経済の後退リスクを懸念させるような材料は見当たらないと言ってもいい状況だ。

<米英仏がシリア攻撃>

だが、どうやら経済的な要素とは別のところにリスクが潜んでいる可能性がありそうだ。

1つは、シリア情勢。ダマスカス近郊にある反体制派の拠点で今月7日に化学兵器が使用された疑惑に対応し、トランプ米大統領はシリアに「ミサイルが向かう」とツイッターに投稿。シリアのアサド政権を支援するロシアを厳しく非難した。

そして、米英仏は14日、シリアに対して105発のミサイルを発射した。米国防総省によると、シリア国内で米英仏に反撃する動きは出ていないという。

これに対し、シリアのアサド政権を支援するロシアとイランは、米英仏の攻撃に強く反発する声明を出した。

中東情勢に詳しい専門家の間では、シリアだけでなくイランとイスラエルに戦火が拡大する懸念を指摘する声もある。

米国防総省は1回限りの攻撃だとしているが、市場動向は、戦火が拡大するかどうかで大きく左右される。

複数の市場関係者によると、16日の市場では、外為市場でドル買い/新興国通貨売りが活発化。合わせて原油価格が上昇すると予想する声が多いという。

<対日FTAに言及した米大統領>

東京市場の参加者がここにきて注目度を高めているのが、日米首脳会談における安倍首相とトランプ大統領とのやりとり。

通商問題で日本が締結に難色を示している自由貿易協定(FTA)の交渉開始で合意するような事態になれば、これまでの「日米蜜月」のイメージが修正され、安倍内閣の支持率にも悪影響が出かねない。

こうした思惑は、トランプ大統領が12日夜に発信したツイッターへの投稿で急速に高まっている。

その投稿では「われわれはTPP(環太平洋連携協定)11カ国のうち6カ国とすでに二国間協定で合意している」とし、「(TPP参加国の中で)最大の日本との合意に向け作業を進めている。日本は長年にわたって、通商でわれわれに大きな打撃を与えている」とコメントしている。

だが、「日米間の交渉結果をあらかじめ断定し、ポジションを傾けるのはリスクが大きい」(国内銀関係者)との声が多く、様子見ムードとなっている。

<市場が深読みできない政局リスク>

もう1つは、国内政治問題と内閣支持率の動向。学校法人「森友学園」の値引きの積算根拠や「加計学園」を巡る文書と元首相補佐官の発言、自衛隊の日報問題、財務事務次官の女性に対する発言問題など政権に対する批判が高まりかねない問題が、相次いで表面化している。

政界動向をウオッチしている専門家の中には、いわゆる「政治的問題」が多発し、野党が問題視しているため、「働き方改革法案」などの重要法案が軒並み審議未了で廃案になるリスクがあると分析する向きもいる。

この事態から抜け出すには、安倍首相の「重大な決意」が必要との声もあるが、市場でそこまでの深読みをする向きは、今のところ少数派だ。

また、政権への逆風に結びつきやすい問題が多発しているにもかかわらず、内閣支持率が危険水域まで急落するという状況には直面していない。

共同通信が15日に発表した世論調査では、内閣支持率が前回比5.4ポイント低下して37.0%だった。不支持率は52.6%と支持率を上回ったが、支持率30%割れの「危機」は回避している。

安倍政権以前までの政権末期を示す「急落パターン」とは一線を画しており、市場がアベノミクス危しと反応する状況ではない。

このように政治的なリスクや地政学的リスクは、先行きの判断が一般の市場参加者には難しく、リスクを数値化して、情勢に応じてポジションを変化させることは難しい。

織り込みの難易度が高いテーマでは「無理はしない」(別の国内銀関係者)のが常とう手段になっているようだ。

ただ、そのこととリスクが現実化する可能性は、自ずから異なる。しばらくの間は不気味な市場環境が続きそうだ。

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