June 29, 2018 / 11:18 AM / 5 months ago

コラム:高まる貿易戦争リスクと円高の危険性 鍵は米長期金利

[東京 29日 ロイター] - 今年後半の世界経済は、「米中貿易戦争」に代表される政治リスクの圧力を受け、成長率が下方屈折する可能性が高まるだろう。リスクオフ心理が強まり、株から債券へのマネーシフトや米長期金利の低迷などとともに、米利上げペースの緩和が表面化する可能性がある。

 6月29日、今年後半の世界経済は、「米中貿易戦争」に代表される政治リスクの圧力を受け、成長率が下方屈折する可能性が高まるだろう。4月撮影(2018年 ロイター/Ralph Orlowski)

日本から見れば、今年前半に比べ、円高圧力が高まりやすくなるかもしれない。米長期金利がリスクの高低を図る体温計になると予想する。

<IMF専務理事も警鐘>

28日のNY市場で、10年米国債利回りUS10YT=RRは一時、2.822%と今年5月31日以来の水準に低下。2年債利回りUS2YT=RRとの格差は32bpと2007年以来の水準まで縮小した。

背景には、トランプ米大統領が対中、対欧州などに仕掛けた「貿易戦争」のリスクがある。

実際、国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は21日、米国の鉄鋼・アルミニウム関税導入に端を発する世界の貿易摩擦に加え、結論に達していない英国の欧州連合(EU)離脱交渉、イタリアなどの財政支出拡大計画に対する市場の動揺など、ユーロ圏の成長リスクが高まっていると指摘した。

今年4月に公表したIMFの18年の世界経済成長見通しは3.9%だが、ユーロ圏の下ぶれや最近の新興国からの資金流出傾向を勘案すれば、下方修正される可能性がかなりありそうだ。

<中国からの受注減なら、日本経済にも打撃>

米中が相互に制裁関税と報復措置について「発動辞さず」の構えをみせ、今のところ心理的な不透明感が先行して高まっているが、独自動車大手のダイムラー(DAIGn.DE)は20日に2018年の業績見通しの下方修正を発表した。少しずつ、実体経済への影響が出つつある。

日本では、米中が貿易戦争の様相を呈した場合、中国からの受注が減少し、日本経済に悪影響を与えかねないとの懸念が政府内で浮上している。

<縮小する米10年債と2年債のギャップ>

不透明な先行きを反映し、10年米長期債利回りは5月中旬に3%台に乗せていたが、その後はじりじりと水準を切り下げてきた。好調な米経済やコスト転嫁の動きがようやく表面化して、米消費者物価も堅調さを取り戻し、米連邦準備理事会(FRB)は今年9月と12月に利上げするとの市場の観測が高まっていた。

それを反映し、2年米国債利回りは着々と水準を切り上げ、10年債とのギャップが縮小してきた。

米景気が堅調であれば、10年債利回りはやがて3%台に乗せ、さらに上昇していくはずだが、そうした動きを見せないのはなぜか。

米中貿易戦争をはじめとする「政治的リスク」を米国債市場が織り込みを続けているからではないか。

<米長期金利が示すリスク水準>

もし、2年債と10年債の利回りが逆転する逆イールドが年内のどこかで実現すれば、それは市場が発している「政治リスクの増大」という警鐘だろう。

市場の動向次第では、FRBが12月の利上げを見送る展開も十分にありうる。市場がその動きを先取りするようなら、日米金利差を大きな材料としてきた対円でのドルの底堅さも、「危うさ」をはらみ始めるのではないか。

その意味で、当面の間は米長期金利が、グローバルな経済のリスクの程度を測る「体温計」の役割を果たしそうだ。

今のところ、世界経済の「崩落」を示す危険な現象は発生していないが、これまで「安全」とされてきたアジア市場の国々で、少しずつ長期金利が上昇し始め、マネーが流出している兆しが見え出している。

そのマネーは米国に向かい、リスクオフ心理が強くなるようなら、株ではなく米国債に流入しやすくなる。そのルートでの米長期金利の押し下げ圧力も無視できないだろう。

2018年後半は、前半とは違ったマネーフローになるリスクに十分、目を配る必要がありそうだ。

●背景となるニュース

・〔アングル〕貿易摩擦で経済停滞リスク、政府内に消費増税慎重論が浮上 [nL4N1TR3OC]

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