December 19, 2019 / 10:40 AM / a month ago

コラム:超長期金利上昇に期待示した黒田総裁、切り札は来年か

[東京 19日 ロイター] - 日銀の黒田東彦総裁は19日の会見で、超長期ゾーンの国債金利はもう少し上がってもよいと思っていると述べた。米中通商協議が第1弾の合意にこぎつけ、世界経済の回復期待が出ており、世界の長期金利が上がりだせば、黒田総裁の思惑通りになる可能性もある。しかし、市場では現物債の流通量が少なく、難しいとの声が少なくない。

12月19日、日銀の黒田東彦総裁(写真)は会見で、超長期ゾーンの国債金利はもう少し上がってもよいと思っていると述べた。日銀本店で撮影(2019年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

イールドカーブのスティープ化に向け、2020年は超長期ゾーンを中心に買い入れ量を減らすという「切り札」を切ってくるのか。以前に比べ、円高リスクが低下している現状では、大きなチャンスが到来しているのかもしれない。

この日の会見で、黒田総裁は超長期ゾーンの金利水準について聞かれ「私も超長期は、もうちょっとスティープになってもよいのではないかと思っている」と述べたうえで、現行のイールドカーブコントロール(YCC)政策の下で、適切なカーブ形成を期待するとの見解を示した。

確かに10年国債利回りJP10YTN=JBTCは今年1月のマイナス0.010%付近まで戻っているが、20年国債利回りJP20YTN=JBTCは足元で0.30%を下回っており、今年1月初めの0.50%台と比べ、20bp程度は低い水準で推移している。

ある市場関係者は、米中貿易摩擦の激化を背景に米欧でも長期金利が軒並み低下し、海外勢の一部も日本国債の超長期ゾーンを物色したため、金利の低下幅が大きくなったと指摘する。

このため米中合意の影響で、リスクオン心理が高まって米欧金利が上がりだせば、日本の超長期ゾーンも上がる余地があると話す。

ただ、この見方には反論も多い。別の市場関係者は、日銀の国債買い入れが継続し、特に超長期ゾーンの「品薄感」が強まったことで、金利低下幅が大きくなったと分析。黒田総裁の発言を受けても、長期金利が目立って上がる展望は開けないと予想する。

黒田総裁は、会見の中で超長期ゾーンの金利低下が大ききくなった場合、年金や生保の運用利回り低下を通じて、消費者のマインドにマイナスの影響が出るというルートのリスクにも言及した。

超長期ゾーンの低下が目立ってくると、現行のYCCの持続性に打撃を受けるとの懸念が働いている可能性もあると考える。

ただ、黒田総裁も説明したように、米中交渉の「霧」が一気に晴れたわけではなく、海外貿易が急速に持ち直すのかは予断を許さない。

とすれば、超長期ゾーンの買い入れを大幅に減額するという「カード」を切ってくる可能性もあると予想する。現在、25年超の買い入れ額は月間で300億円。これを思い切ってゼロにすれば、市場への強いメッセージを発することができる。代わりに短いゾーンを買い増せば、全体の買い入れ量が急減することもない。

日銀にとって大きな懸念材料である外為市場での円高の懸念も、足元におけるマネーフローをチェックすれば、ドル/円JPY=EBSが100円に接近するような事態は回避できると予想される。

とすれば、「切り札」を切ってくる可能性が、2020年中にあると考えても、特に不自然ではないだろう。

とはいえ、根本的な問題として存在するのは、物価が上がらないという点だ。消費者物価指数(除く生鮮、コアCPI)は前年比0.5%前後で推移し、2%の目標はなるか先に霞んでいる。物価が上がりだせば、超長期ゾーンの金利も自ずと上がりだし、微妙な市場調節に心を砕く時間も省ける。

つまり、日銀にとっての2020年は、如何に物価を上げるかという「原点」に戻ることが大切ではないか。もし、不可能に近いほど困難な状況であるなら、どうして日本では物価が上がらないのか、タブーなしに議論と分析を行い、その結果をまとめ、広く世論に問うことも必要だと考える。

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編集:石田仁志

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